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第3章

恐縮

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「そういえばまだ名乗っていなかったな、わしは素材専門の行商人のトーレ・ヘッドストレームだ。
薬草や香辛料、鉱物など加工前の物なら何でも扱っている」
「ギルドから聞いているかも知れないですが改めて、薬師で幻獣使いのレナードと言います。
素材を自分で採取してるため、冒険者のようにある程度の自衛は出来ます」
「ほぅ、薬師で採取までするなんて珍しいなぁ。
まぁ遠くの物までは手に入れられないだろうから、もし入用な物が有れば相談に乗るよ」
「何かあればよろしくお願いします」
「ところで、お前さんのところには馬や牛はいるのかい?」
「牛は魔獣の血が入ったのが数頭、馬はまだ成獣前の変異種が1頭います」
「結構大所帯だねぇ。
この子達以外でだろう?」
「はい、他にもコッコが10羽ほどいます」
「若いのに凄いじゃないか。
うちにも卵用のコッコに、荷運び用の牛や馬がいるが、薬師の収入じゃ大変だろう」
心底心配そうに言ってくれる。
「私は人専門じゃなく、動物や魔物、幻獣達の薬師でもあるので、人の居ない森の入り口近くの広くて安い土地なので、それほど負担ではないんです。
牛やコッコはほぼ放し飼いですし、変異種や幻獣は幼い時以外はほとんど餌が要らないですし、幼い時も普通種より少なくても育ちます」
「でも変異種はすぐ調子を崩すし、食が細くて小さい。
うちではまともに育ったことがなくて、処分のために商業ギルドへ来たら、変異種の生存率を上げる飼育方法があるっていうんだ。
今職員がリベルタで研修に行っているから、リベルタで話しを聞いてからでも遅くないですと説得されたんだ」
「そういうことだったんですね。
それは本当ですよ、だってここにいるクレドも変異種ですから」
自分の名を聞いて呼ばれたと思って飛んで来た。
「伝書鷹ですが、最初は小さくて病気がちでしたが、今では兄弟の中でも大きい方なんですよ。
成鳥直前の頃は良く食べてましたよ」
喉元を掻いてあげると嬉しそうに喉を鳴らす。
「この前ヘンルーダから帰る時は、研修に行く冒険ギルドと商業ギルドの方達の馬車に乗せてもらったんです」
「なんだって!
変異種を育てたことがあるとは聞いたが、生存率を上げる飼育方法の検証を実践している人だったなんて聞いてないゾ」
「ヘンルーダはまだ検証してくれる業者を選定中だったはずだし、まだリベルタ以外では検証をしてないんですから知らなくて当然ですよ」
「そうなのか。
色々教えて欲しい、今まで変異種が生まれたら死なせてしまうか、食肉として売ってしまうかしかなかった。
出来ることなら育てあげてみたいんだ」
「もちろんです。
私以外にも検証して成果を出し始めている人もいます。
まだ始めて間もないので、生存率が上がったという程度ですが、リベルタの商業ギルドへ行けば、情報を得ることが出来ます。
トーレさんはヘンルーダの商業ギルドからの紹介なので、大丈夫だと思いますよ」
「生存率が上がる方法を教えてもらえるんだな。
大変なことなのか?」
「普通種に比べたら大変ですが、今までよりは大変ではないと思います。
商業ギルドと冒険ギルドが協力してくれるので、個人や小さなお店でも可能です」
「具体的なことを聞いても良いか?」
「すみません、まだギルドの極秘扱い案件で、誓約書にサインした人以外には教えないことに最近決まったんです。
危険性がまだ不明なことと、悪用の可能性が出て来たので」
「そうだな、安易に聞いて済まない。
検証が始まって日が浅いなら、不用意に話せる訳じゃないのは当然だな。
さっきの言葉は忘れてくれ」
しばらく話題がなくなってしまったため、2人共無言だった。
行商人の馬は魔馬のため足が速い。
ただ出発が遅くれたため我が家に着くのは夜になる。
私達の家に寄らなければ、テュラー村の知り合いのところに泊まる予定だったらしいが、レナードのところに泊まることになった。
馬の休憩を兼ねての夕食を取る事になったので、クレドにこの先の休憩地周辺の偵察を頼んだ。
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