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第2章

誕生

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帰宅が遅くなったので、夕食は久しぶりのコッコ卵で卵サンドと卵スープを食べた。
「さて、トラヴァーの子達の寝床をどこに置こうか。
卵はベットサイドテーブルの上に置くとしてと」
寝室に籠と鉢植えを持ち込んでドアを閉め、籠の蓋を開ける。
《とりあえず騒がしくしないと約束出来るなら、君達の寝床をこの部屋にしようと思うけどどう?》
《シズカニスル!》
《サビシイノハイヤ!》
《本棚の空いた所か、窓辺のソファの上とどっちが良い?》
《ホンダナ♪》
ベットの反対側はソファを挟んで本棚があり、ソファはドアを背に窓際に向いている。
なんとなくだが、2体から高くて部屋全体を見渡せる位置なのが気に行ったように感じた。
《君達のベット代わりになる物を持って来るから、この部屋を探索しておいで。但し壊したり、落としたりしないようにね》
《ハーイ!》
どれが良いだろうかと考えながら部屋を出る。
結局薬草を選別するための籠にした。
ヘンルーダで購入した綿とハギレで臨時の寝床を作って部屋に戻った。
《後日きちんと作り直すから、今日のところはこれが寝床だよ》
《ワ~イ!》
相当嬉しいのか、レナードが自分のベットに入っても2体は飛び回っていた。
卵は袋から出した状態で冷めないように布団の中に入れて寝た。

翌朝はコッコ小屋と牛舎を重点的にチェックしながらお世話をした。
アーウィンは餌やりだけではなく、簡単に寝床を整えてくれたようだった。
「アーウィンが留守の時は、幻獣達にお土産を用意しないとな」
ひとりごとを呟きながら牛舎を掃除をした。
コッコ小屋を掃除をしていたら、珍しくルゼが近寄って来た。
《主人よ、また色々連れて来たな》
《もしかして妖精達が悪戯したのか?》
《雛を追いかけておったが、悪戯はまだしておらん》
《良かった。あの2体は次に森へ行く時までの一時預かりだからよろしく頼む》
《あい分かった》
作業が終わってもまだルゼがいた。
《ルゼ、まだ何かあるのか?》
《主人に幻獣の気配がするのだが》
《あぁ、この子は火蜥蜴の卵だよ》
籠から取り出し袋を開けて、ルゼに卵を見せた。
《もうじき産まれるな。卵なら我が温めようか?》
《ルゼなら安心できるから頼むよ。冷めたり、落とすのを気にしながらは大変で助かる》
《雛達に話しをするから待っておれ》
しばらくして戻って来たルゼに卵を預け、旅で採取した薬草や果実の整理をする。
薬に出来ない物はハーブとして料理やお茶に使うため別にしておく。
子供達は午前中はのんびりと過ごし、午後からは森に遊びにいった。

翌朝、日課の世話を終えポーション作りをしていた。
違う種類のポーションを作ろうと準備をしていた時にルゼから念話が入った。
《主人、卵が動き始めた》
《丁度キリの良いところだから、簡単に片付けたら直ぐに行くよ》
長くなりそうなのでしっかり手を洗い、危なくないようにザッと片付けてから部屋を出て鍵をかける。
清潔な柔らかい布と桶を持ってコッコ小屋に行くと、牛達以外が集まっていた。
ずっと気になっていたようで、時々様子を見ていたらしい。
巣の中には卵からピシッという音が聞こえ小さく揺れていた。
巣の前に胡座を組んで座る。
遠巻きに見守る他の変異種とコッコ達。
ひときわ大きく揺れたと思ったら卵が割れて何かが見えた。
そこからは割れたところから抜け出そうとするように、殻を破り広げながら頭が出て来た。
前足が出て来て、イヤイヤするように体を捻ると卵が倒れると同時に半分程体が出た。
破りながら這い出るとブルンと体を震わせる。
「ピィ!」
元気良くレナードに向かってひと泣きした。
「初めましてレナードだよ。
今日から君の親代わりだからよろしくね」
周りの藁ごと掬い上げて、目を合わせるように話しかける。
レナードは知らなかったが、竜種は産まれた直後初めて目にし、声を上げた者を親と認識する。
密猟者の場合には輸送中に孵化することが多いため人間には知られていない。
産まれてから一定の時間が経つと親無し子として成長し弱い個体になる。

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