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第1章

お迎え

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 銀狼のおかげで幼獣も落ち着き、せっかく用意したからと魔獣の肉を2匹にと持って幻獣舎に行ったが、以前のように警戒されなくなった。
《あなたのおかげで警戒心が減った。お礼にならないかもしれないが、良ければ食べて欲しい》
《私はあなたが森の生き物に必要最低限以上の採取や殺生をしない者だと聞いたから協力したまで。
これからも同じように暮らしている限り、森の者達は耳を傾ける》
《期待を裏切らないようにするよ》
2匹が食べる様子を作業用の椅子に座って眺めた。
幼獣は食べる勢いがよくなって来た。
動きがスムーズになる頃には食べる量も減るだろうが、今は1日も早く元のように自由に動けるようになって欲しいので、しっかり食べて欲しいと思っていた。
 午後には伝書屋が雛を連れて来るから、食べ終わったら2頭には森の奥の方に行ってもらう予定だ。
幼獣が他の人間を恐れてまた警戒されてしまっても困るから。

 雛を連れた伝書屋の馬車がやってきた。
てっきり従業員が来ると思っていたので降りて来た人物に驚いた。
「お邪魔しますよ」
「ヘルマンさん!わざわざあなたが連れて来るとは思いませんでしたよ」
「一度レナードさんのところを見てみたくてね。ここは動物達には良い場所ですな」
「はい、薬草も豊富ですし、傷付いた生き物には落ち着ける場所でもあります。ただ種類が増えて少し賑やかになってしまいましたが」
「この子達も雛の間は姦しいですからね」
御者兼人の従業員に馬は牛舎か、その奥の動物用の庭で休ませるように伝えた。
雛が入った籠を持っているヘルマンを居間へと案内する。
ソファセットに案内するとテーブルに籠を置いて3人掛けのソファへ座るように勧めた。
あらかじめ用意して置いたティーセットをキッチンから運ぶ。
黒い布の掛けられた籠は、雛が外の景色で興奮しないように配慮したものだ。
ゆっくり布を取り払うと、片手に乗るくらい雛が3羽いた。
大人になっても肩に乗れるくらいの大きさにしかならない小型の鷹の一種らしい。
急に明るくなって戸惑っているのか、しきりに鳴いている。
「もう小さなミミズなどの虫なら、そのまま与えれば食べられるくらいにはなっていますが、まだ苦手だから粗みじん切りにした肉片を与える方がいいでしょう。
嘴より大きい肉を問題なく食べられるようになったら、一度訓練のため引き取りに伺うよ。
餌を自力で食べる訓練と飛翔の訓練は半年以内に行う予定だが、この近くを通る時に誰かに様子を見に来させるよ。
手紙を運ぶ訓練までに関係を築いて置いて欲しい」
その後飼育のための注意点や世話の仕方などをヘルマンさんや一緒に来た従業員の方に教えてもらった。
 3羽の中でレナードと相性が合う子を1羽もらい受ける予定なので、雛達に話しかけてみた。
《はじめまして、私の言葉は分かるかな?》
《…カエリタイ》
《ママハドコ》
《ダァレ?》
《私はレナードだよ》
《フーン》
《仲良くなりたいな》
《イイョ》
《ありがとう》
右と真ん中の2羽は会話が成立しなかったが、左の子とは会話が出来た。
そのことをヘルマンに告げて、籠の扉を開けて左の子の脚の前に手のひらを差し出した。
しばらくしてちょこちょこと乗り移ってくれたので、そっと籠から取り出す。
視線を合わせるように目の高さに持って来ると、小首を傾げてひと鳴きした。
《これからここで仲良く暮らそう》
《ココデ?》
《私がこれから君のお世話をするよ》
《ワカッタ》
「この子に決めます。他の子はまだ親離れ出来ていないようですし、この子はここにいることを承諾してくれました」
「そうですか、合う子が居て良かったよ。
餌が素人でも与えられる子を選んで持って来たが、合わなければ後日我が商会の鳥舎に来て選んでもらうつもりでいたんだよ」
「ちなみにこの子は雌で、他の子は雄でしたよ」
「なんと!全部雄だと聞いて連れて来たつもりでしたが、うちに今いる従魔士では雛の判別が未熟でしたか」
「従魔士は仮契約しないとだいたいの気持ちしか分かりませんが、幻獣使いはもっとはっきり分かりますからね、仕方がないですよ」
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