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第1章

引越し

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 結局コッコ達との話し合いの末に、牛舎の南側に隣接することになった。
要望の変更を大工に伝えに訪れたところ、以前保護した伝書屋がちょうどレナードが鳥小屋を作る話しをどこかで聞いて尋ねて来ていた。
詳しく話しを聞いたところ、変異種の雛が一度に10匹以上産まれて、手が足りないらしい。
変異種の雛は賢いため重宝するがその反面、雛の時は弱くて手がかかる。
普通種なら雛の仮親がたくさんいて預かってくれるが、変異種を引き受けてくれる仮親は少ないため手放す必要があり、どうせ手放すならばレナードなら育てられるのではと来たとのこと。
こちらが押し付ける形だし、無償で譲りたい、なんならリベルタへの連絡用に使って欲しいと言われ、押し切られる形で引き受けることになった。
せっかくなので隣接部分に鳥類など小動物用のスペースを作り、そこには母屋からも出入り出来る扉も付けることになった。

うちには魔獣ではあるが、鶏であるコッコもいるし、幻獣使いで保護の経験があるから大丈夫だというので、鶏小屋が完成後に準備でき次第連れて来てくれることになった。
ある程度成長したら、訓練もしてくれるらしい。
幼体の保護を機に一気に家族が増えた。
人族以外でだが。

 変異種の雛の兼ね合いで伝書屋の援助もあり、優先的に5日後の昼過ぎには完成した。
薬師ギルドには、幼獣だけでなく雛の面倒もみることになったからとしばらく休業する届けを出した。
もちろん定期的な納品や依頼を受けないだけで、世話のついでに採取や調合をするから、町に行った時か、ギルドの配達員に渡すことはするが。
 コッコ達の引っ越しは順調に済んだ。牛達は少し寂しそうだったが、すぐに慣れるだろう。
コッコ達も専用小屋に移ってストレスが減ったおかげか翌朝から約束通りの数の卵を産んでくれた。
 幼体の怪我はあとは自然治癒に任せる程度に治ったので、もう治療はしてはいない。
というか魔法で完治させるなら一気にやらないと意味がない。
少しずつ治す時には動くのに支障がない程度でやめておくのが通例なのだ。
応急処置的な治療なら、最後に治療力のある術士に一気に治してもらうの一般的で、レナードのように魔力が低い治療を何度も繰り返すのは、元々の治癒力を低下させてしまったり、怪我の状態によっては障害が残る恐れがあるからだ。
 新しい習慣はコッコ小屋の餌やりと解放から始まる。次に牛舎の扉を開けて、最後に幻獣舎を開ける。
牛舎、コッコ小屋、幻獣舎の順に掃除して、朝食を食べた後に畑の手入れをし、搾乳して大体午前中が終わる。
日によって重点的に作業する場所は変わるが、だいたいそんな感じ。
午後からは季節の作業や調剤作業だったり、母屋の掃除や洗濯などをするが、幼獣が来てからは森に入っても半日がかりで出かけるほど森の奥まで行くことはなくなった。
幼体がレナードに慣れてくれるまでは、何かあってもすぐに対応しなければならないからだ。
 牛やコッコは基本的に外で自由に餌を食べる。足りない時や天候不良の時のために保存の効く穀物を中心に、1日1回だけやることにしている。
なので普段は少なめに入れておき、様子を見て追加している。
幻獣達には蜂蜜入りミルクを皿に入れておく。
銀狼は少し舐めただけだったが、幼体は銀狼の分も飲んだらしい。
食欲があるのは回復している証拠なのでホッとする。
 銀狼から食事と運動を兼ねて森の入り口付近に行きたいと念話があった。
急いで首輪を2つ持っていく。
誤討伐防止のための仮契約を示す魔道具だ。
《念のために付けていって欲しい》
《私は良いがあの子は分からぬぞ》
《嫌がったらしなくていい》
《分かった。もらっていこう》

銀狼が首を下げたので付けてやる。
幼体用は銀狼が咥えて行った。
しばらくして首輪をした2匹が森の奥の方へ歩いていった。
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