角の生えたサルたち

西洋司

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ようこそ、私達の世界へ_02

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 オレは古今東西の名品をたっぷり堪能できて、とても勉強になった。
 できればあと2週間位ここに滞在して、デッサンとか模写とかに明け暮れたかったんだけどさ。
 まぁ、……それも叶わぬ夢だろうなぁ。

 後ろ髪引かれる思いで退館し、今度は隣県の軍事基地に向かっていた。
 道中、シノはオレの疑問にいろいろと答えてくれた。

 彼女によると、過去改変後の世界の人々は、改変前の世界のアイコンに興味を示さなくなっているそうだ。
 芸術、美術、工芸に興味を示さず、効率的な知識、生活に役立つ知識や情報にのみ、強い関心を示すのだとか。

「でもさ、アイコンを持ち帰ると数万の群衆で溢れ返るって話だろ? それって、民衆が優れた美術に飢えてるってことじゃないの?」

「いいえ、人々は単に戦争が終わることを待ち望んでいるだけです。バルボラ機関が、大々的にアイコンの力で世界は平和になると訴えていますから、……人々は、それを真に受けて信じ込んでいるんですよ!」

 なるほど。だから、シノの戦利品が次元断面の贋作と評価された途端、彼女に怒りの鉄槌が下されたというワケか!

「この時代の人々は、メイクラブ・プログラムで情緒を巧妙に操作されており、感性が鈍化するよう管理されています。結果、即物的、功利主義的、打算的、……とにかくっ、根本的に自分本位で卑しいんですっ!!」

 シノの剣幕に驚きつつも、オレは冷静な意見を言いそうなショウタに目をやった。

「まぁ、メイクラブ・プログラムの真の目的は、扱い易い人材を確保するためにあるんだからね。品行方正な正規品であれば、複雑な妙味の規格外品なんて無駄に過ぎないからね」

 なるほど。ショウタはそのように考えているのか。

 基地に着くと、ちょうど隔月で開かれる基地祭をやっており、多数の一般客で溢れていた。
 こんな場所に皇帝アポロが突然現れたら、パニックになってしまうんじゃないかと思ったんだけど。

 でも、……裏口のスタッフ専用ゲートから直ぐに官舎に入ったので、何とか騒がれずに済んだ。

 そこで、オレは一般客の注目を集めている兵員達の様子をつぶさに目撃する。
 その正規兵達は、身長181センチ、81キロで全て統一し、眼鏡は使用せず。

 栄養価の高い食事と適度な睡眠、無駄のない訓練と課題が用意されていて、……最先端の兵器を扱うことにも抵抗なく、全くの無駄なく任務を遂行できる人材が配置されているのだ。

 基地の上空を、国産のジェット戦闘機が音速の数倍の速さで飛空し、演習場を、最先端の戦車が複雑に動く標的を誘導弾で一撃必中で粉砕する。

 説明によれば、最終的には全て無人コンピュータ制御で統一させて行く予定なのだという。
 それでも、人員を適材適所に配置する余地があるのだとか。

 話を聞いていると、まるで絵に描いたような富国強兵の出来上がり、そんな具合だ。

「ねぇホノオさん、……キミはどう思いますか?」

 シノがオレに訊ねて来た。その顔つきは自信に溢れたものではなく、むしろ不満を抱えた雰囲気に溢れていて。
 以前聞いた話によると、銃後では貴族達が享楽的に生き、庶民は世界の傭兵として戦争に駆り出される駒となる。

 その状況を可能にしているのが、メイクラブ・プログラム。
 ひたすら人間の感性を鈍化させ、効率のみで動く生物兵器に仕上げるのだという。

「ダメだろ、これ!」

 オレは皇帝アポロを前にしても、過去世界の住民として、嘘偽りなく答えざるを得なかった。
 すると、アポロは我が意を得たりとばかりに、嬉しそうに何度も頷くのだ。
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