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オレも今大声で叫んでいるじゃないかっ!_04
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耳障りな笛の音が、ピュッヒュゥーイッと風切り音と共に耳の直ぐ傍を通過する。
怖気で思わず叫び声を上げて駆け上り続けていると、前方数メートル先のゴリオの背中に、そのロケットが直撃した。
「ぐぅはぁーっ!?」
暗闇の中、突然の発光に目の前が真っ白に眩む。叫び声と共に音を立てて沈む、ゴリオの巨体。
ヤバいか? いや、大丈夫か?
耳すれすれを、続けざまに何発もロケットが無情に通過して行く。
立ち止まる怖さ。目をギュッと瞑って、視界の回復を待たねばならないもどかしさ。
マホ達の待つゴール地点まで、まだたっぷり100メートルは残っているというのにっ!
その間も、ロケット花火の奇怪な笛の音と男子達の悲鳴が、これでもかと沸き起こり続ける。
漸く眼が回復して来た。すると、一連の直撃を受けた男子達が、何人も倒れ込んでいた。
それは、今から100年前に起こった阿瑠琉事件を彷彿とさせるような光景であり、……オレの頭の中のネジが、ひとつぶっ飛んで、半ば恐慌状態に突入していた。
「うっわぁぁぁぁぁーーーっっ!!」
オレは叫び声を上げながら、ゴールのある中腹に向かっていた。
こんなにも全身の血液が沸騰する程、声という声を絞り出すことなんて、これまで一度もなかった。
とにかくゴール、ゴール、ゴールだっ!!
オレの意識は、……もうその一点にのみ尽きていた。
山の中腹まで残り30メートルを切ったところで、急に視界が開けて来た。
マホがいる。それにリンゴもいて、マァコとケェコもいた。
皆、両手を口元に添えて大声で応援していた。もう絶叫と言ってもいい。
ははっ。必死だな! あぁオレもか。オレも今大声で叫んでいるじゃないかっ!?
いまだに残っている男子は、オレも含めてたったの数人だけ。
あんだけいたのに、……ゴリオですらギブアップしているので、もうホンのごく少数のみなんだな。
オレは前のめりになりながら、たたらを踏むようにゴールまで駆け上がる。
あと少し、ほんの少しでゴールだっ! なのに、……凄く遠くに感じる。焦る。気が焦るっ!!
それでも視界だけは、何だかハッキリとしていて、……マホにリンゴがちょっかいを出すのすら見えていた。それでその直ぐ後に、返す刀でマホがリンゴの関節を決めている。
そんな2人を止めに入ったマァコとケェコも、巻き込まれる具合にヘッドロックをかけられてしまっている。
まるでバトルロワイアル! アイツら、……キャットファイトを始めやがったっ!?
オレは一体何を見せられているのだろう!?
すると、ひとつの疑問が頭をもたげて来た。
リンゴとマァコとケェコ。アイツらのパートナーって、……結局誰だったんだろう? と。
ついにゴールを告げる号砲が鳴り響いた。
どうやら、無事ゴールできたらしい。
それで、4人の女子達が息せき切って、真っ赤な顔してオレの許まで駆け寄って来るんだけど。
ホンとこの場合、一体誰に最初に声をかけたらいいんだろう? マホでいいんだよね?
そんな具合に後方確認を怠り、正直油断していたところ、……ラストに放たれたロケット花火が、オレの耳元で激しく炸裂する。
その衝撃で三半規管が強く揺さぶられ、オレは唐突に意識をロストした。
耳障りな笛の音が、ピュッヒュゥーイッと風切り音と共に耳の直ぐ傍を通過する。
怖気で思わず叫び声を上げて駆け上り続けていると、前方数メートル先のゴリオの背中に、そのロケットが直撃した。
「ぐぅはぁーっ!?」
暗闇の中、突然の発光に目の前が真っ白に眩む。叫び声と共に音を立てて沈む、ゴリオの巨体。
ヤバいか? いや、大丈夫か?
耳すれすれを、続けざまに何発もロケットが無情に通過して行く。
立ち止まる怖さ。目をギュッと瞑って、視界の回復を待たねばならないもどかしさ。
マホ達の待つゴール地点まで、まだたっぷり100メートルは残っているというのにっ!
その間も、ロケット花火の奇怪な笛の音と男子達の悲鳴が、これでもかと沸き起こり続ける。
漸く眼が回復して来た。すると、一連の直撃を受けた男子達が、何人も倒れ込んでいた。
それは、今から100年前に起こった阿瑠琉事件を彷彿とさせるような光景であり、……オレの頭の中のネジが、ひとつぶっ飛んで、半ば恐慌状態に突入していた。
「うっわぁぁぁぁぁーーーっっ!!」
オレは叫び声を上げながら、ゴールのある中腹に向かっていた。
こんなにも全身の血液が沸騰する程、声という声を絞り出すことなんて、これまで一度もなかった。
とにかくゴール、ゴール、ゴールだっ!!
オレの意識は、……もうその一点にのみ尽きていた。
山の中腹まで残り30メートルを切ったところで、急に視界が開けて来た。
マホがいる。それにリンゴもいて、マァコとケェコもいた。
皆、両手を口元に添えて大声で応援していた。もう絶叫と言ってもいい。
ははっ。必死だな! あぁオレもか。オレも今大声で叫んでいるじゃないかっ!?
いまだに残っている男子は、オレも含めてたったの数人だけ。
あんだけいたのに、……ゴリオですらギブアップしているので、もうホンのごく少数のみなんだな。
オレは前のめりになりながら、たたらを踏むようにゴールまで駆け上がる。
あと少し、ほんの少しでゴールだっ! なのに、……凄く遠くに感じる。焦る。気が焦るっ!!
それでも視界だけは、何だかハッキリとしていて、……マホにリンゴがちょっかいを出すのすら見えていた。それでその直ぐ後に、返す刀でマホがリンゴの関節を決めている。
そんな2人を止めに入ったマァコとケェコも、巻き込まれる具合にヘッドロックをかけられてしまっている。
まるでバトルロワイアル! アイツら、……キャットファイトを始めやがったっ!?
オレは一体何を見せられているのだろう!?
すると、ひとつの疑問が頭をもたげて来た。
リンゴとマァコとケェコ。アイツらのパートナーって、……結局誰だったんだろう? と。
ついにゴールを告げる号砲が鳴り響いた。
どうやら、無事ゴールできたらしい。
それで、4人の女子達が息せき切って、真っ赤な顔してオレの許まで駆け寄って来るんだけど。
ホンとこの場合、一体誰に最初に声をかけたらいいんだろう? マホでいいんだよね?
そんな具合に後方確認を怠り、正直油断していたところ、……ラストに放たれたロケット花火が、オレの耳元で激しく炸裂する。
その衝撃で三半規管が強く揺さぶられ、オレは唐突に意識をロストした。
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