角の生えたサルたち

オレも今大声で叫んでいるじゃないかっ！_01

　阿瑠琉の街の夜祭は、今から９０年前、五砲敏千の発案で始められた。

　前夜祭の男神祭りと本祭の天女祭り。二晩に渡って祭りが進行し、特に前夜祭は勇壮で、日本の７大奇祭に数えられている。

　祭りのストーリー等、詳細は以下のとおり。
　四方を山で囲われた阿瑠琉の街に、山の彼方から天女が訪れる。街を守護する男神が悪鬼の追っ手を振り切って、束の間の逢瀬を楽しむというもの。
　
　祭りに参加できる若者は、ティーンエイジャーのカップル限定。それで、男女半々に分かれる。

　天女役の女性陣は五甲山の中腹の広場に集まり、男神役の男性陣は恋人が扮する天女に一目会おうと、誰よりも早く麓からの３００メートルを勢いよく駆け上る。

　途中の競走もさることながら、無数のロケット花火に嗾けられるという、何とも男性陣にとっては踏んだり蹴ったりな内容なのだ。

「ホノオ、じゃぁ頑張ってねっ！　ん～っ、ちゅっ」

　マホは笑顔で投げキッスをすると、そのまま他の同年代の少女達と共に、中腹のゴール地点まで登って行ってしまった。

　やれやれ。この世界の彼女は、随分とオレに懐いているんだなぁと、思わず苦笑いをしてしまう。
　
　すると、彼女の隣にはリンゴもいて、それから後に控えるようにマァコとケェコも付いて来ていた。
　リンゴ達は振り返ると、何か言いたげな顔つきで、オレのことをじぃーっと見つめている。
　
　あれ？　その態度、どういう意味？　オマエら、ちゃんと相手いるんだろ？　
　リンゴは、まぁ、……順当に考えてゴリオのヤツだと思うんだけど。

　それにしても、３人とも複雑な顔つきで、何だか声をかけ辛い。
　結局、彼女達はしばらくの間オレの顔を黙って見つめていて。はぁ～っと深いため息を吐いて、山の中腹に登って行ってしまった。
　
　オレは、何かマズいことでもやらかしてしまったんだろうか？