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おまけSS 癒しの甘やかしタイム
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「はあ、疲れた――」
侑人は帰宅早々、そんな呟きとともにリビングのソファーへ身を投げ出した。
すると、すぐに高山が隣に座り込み、労わるように声をかけてくる。
「お疲れさん。何かあったのか?」
「あー……うん。しょうもないミスしてトラブルに発展しちゃってさ。いろいろと散々だったし、周りにも迷惑かけたぶん落ち込むっつーか」
力なく答えながら、またもやため息が出てしまう。
高山の方へ頭を傾ければ、相手は優しげな笑みでこちらを見ていた。
「侑人、ほら」
おいで、と膝の上を叩かれてドキリとする。素直にそこへ座ってみせれば、向き合った状態のまま抱きしめられた。
「高山さんって、こういうの好きだよね」
「まあ否定はしないが。今はそれよりも、侑人のこと癒してやりたいと思ってさ」
言って、額に口づけてくる高山。
伝わってくる温もりや匂いに、ひどく安堵する。頭を撫でられれば、体の力が抜けていき、侑人は甘えるように肩口へと顔を埋めた。
(ああ、なんかもう……)
どうやら思っているよりも参っていたらしい。自分のなかにあった疲労感や憂鬱が、徐々に薄れていくのを感じる。
「よしよし、いい子だ。さっさと風呂入って、一緒にビールでも飲んでから寝ようぜ」
なおも続く甘やかしに、侑人は小さく笑みを浮かべた。高山の肌に頬をすり寄せながら、ぽつりと呟く。
「俺がこんなふうでいられるの、きっと相手が高山さんだからだろうな」
「そうか?」
「うん。他人と生活をともにするなんて、いまいち考えられなかったけどさ――今は結婚してよかったなあ、って思う」
そう口にしてみせれば、高山は面食らったような表情を見せた。が、すぐに優しい笑みを浮かべて、言葉を返してくる。
「俺も。何度だってそう思うよ」
心地よい声のトーン。その眼差しには確かな愛が感じられ、侑人は胸がいっぱいになりながらも、なんだかくすぐったい気持ちになってしまった。
「高山さんが恥ずかしいことばっか言うから、うつった気がする。どうしてくれるんだよ」
「そうだなあ。ひとまず今日のところは、うんと甘やかすことで許してくれ」
「……うんと?」
「ああ。うんと甘やかしてやる」
言うが早いか、高山はこつんと額同士をくっつけて、間近で視線を交わらせる。
どこまでも甘さを孕んだやり取りに、侑人も応えるように目をつぶった。
「ん――」
二人の唇が重なり、繰り返し口づけを交わし合う。その間も、高山の手は絶えず侑人の頭を撫でてくれていた。
(今日一日、最悪だったはずなのに……)
こんなにも心の持ちようが変わるだなんて、と。
高山はいつも、当たり前のように心を満たしてくれて、幸せな気分にさせてくれる。今となってはもう、なくてはならない存在であり、この上なく愛しい相手なのだ。
どれだけ言葉を尽くしても足りないと思う。いや、だからこそ、事あるごとに伝えていくべきではないだろうか――そうあらためて実感しながら、侑人は静かに告げる。
「ありがとう、健二さん。大好き」
そうして寝付くまで、存分に甘やかしを受けるのだった。
侑人は帰宅早々、そんな呟きとともにリビングのソファーへ身を投げ出した。
すると、すぐに高山が隣に座り込み、労わるように声をかけてくる。
「お疲れさん。何かあったのか?」
「あー……うん。しょうもないミスしてトラブルに発展しちゃってさ。いろいろと散々だったし、周りにも迷惑かけたぶん落ち込むっつーか」
力なく答えながら、またもやため息が出てしまう。
高山の方へ頭を傾ければ、相手は優しげな笑みでこちらを見ていた。
「侑人、ほら」
おいで、と膝の上を叩かれてドキリとする。素直にそこへ座ってみせれば、向き合った状態のまま抱きしめられた。
「高山さんって、こういうの好きだよね」
「まあ否定はしないが。今はそれよりも、侑人のこと癒してやりたいと思ってさ」
言って、額に口づけてくる高山。
伝わってくる温もりや匂いに、ひどく安堵する。頭を撫でられれば、体の力が抜けていき、侑人は甘えるように肩口へと顔を埋めた。
(ああ、なんかもう……)
どうやら思っているよりも参っていたらしい。自分のなかにあった疲労感や憂鬱が、徐々に薄れていくのを感じる。
「よしよし、いい子だ。さっさと風呂入って、一緒にビールでも飲んでから寝ようぜ」
なおも続く甘やかしに、侑人は小さく笑みを浮かべた。高山の肌に頬をすり寄せながら、ぽつりと呟く。
「俺がこんなふうでいられるの、きっと相手が高山さんだからだろうな」
「そうか?」
「うん。他人と生活をともにするなんて、いまいち考えられなかったけどさ――今は結婚してよかったなあ、って思う」
そう口にしてみせれば、高山は面食らったような表情を見せた。が、すぐに優しい笑みを浮かべて、言葉を返してくる。
「俺も。何度だってそう思うよ」
心地よい声のトーン。その眼差しには確かな愛が感じられ、侑人は胸がいっぱいになりながらも、なんだかくすぐったい気持ちになってしまった。
「高山さんが恥ずかしいことばっか言うから、うつった気がする。どうしてくれるんだよ」
「そうだなあ。ひとまず今日のところは、うんと甘やかすことで許してくれ」
「……うんと?」
「ああ。うんと甘やかしてやる」
言うが早いか、高山はこつんと額同士をくっつけて、間近で視線を交わらせる。
どこまでも甘さを孕んだやり取りに、侑人も応えるように目をつぶった。
「ん――」
二人の唇が重なり、繰り返し口づけを交わし合う。その間も、高山の手は絶えず侑人の頭を撫でてくれていた。
(今日一日、最悪だったはずなのに……)
こんなにも心の持ちようが変わるだなんて、と。
高山はいつも、当たり前のように心を満たしてくれて、幸せな気分にさせてくれる。今となってはもう、なくてはならない存在であり、この上なく愛しい相手なのだ。
どれだけ言葉を尽くしても足りないと思う。いや、だからこそ、事あるごとに伝えていくべきではないだろうか――そうあらためて実感しながら、侑人は静かに告げる。
「ありがとう、健二さん。大好き」
そうして寝付くまで、存分に甘やかしを受けるのだった。
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