108 / 113
おまけコンテンツ
おまけSS 体型が気になる年頃なので…
しおりを挟む
「侑人。メシ、そんなもんでいいのか?」
夕食中、ダイニングテーブルの向かいに座っていた高山が声をかけてきた。侑人は咀嚼し終えたのちに、こくりと頷く。
「最近ちょっと太ったから、食事の量減らそうかと」
気まずいながらに答えれば、高山は不思議そうな表情を浮かべる。「ふうん?」と相槌を打ちつつ、何故かこちらの皿へおかずを追加してくるではないか。
「おいっ、人の話聞いてないだろ! なんで食わせようとすんだよ!?」
「いや、見た目的に変わんねえし。せっかく作ったんだから、腹いっぱい食ってほしいと思って」
「あんたは俺のばあちゃんかっ!」
勝手に盛られた皿を押しやるも、高山は気にした様子もなく。それどころか、おかずを箸でつまんで口元まで運んでみせる。
「ほら」
戸惑いを隠せないこちらをよそに、口を開くよう催促するものだから参ってしまう。
差し出されたものを渋々と口に含むと、侑人好みの味つけが口いっぱいに広がった。咀嚼するさまを高山は満足そうに眺めながら、ご丁寧に次のおかずを口元まで運んでくる。
「っ、バカ」
思わず流されそうになったが、ワンテンポ遅れてハッとした。これ以上調子に乗られては困ると、ぶっきらぼうに顔を背ける。
それでも高山は穏やかに目を細めていて、クスクスと笑うのだった。
「べつに体型が変わったとしても、侑人は侑人なんだし。俺は気にしないけどな」
「そうは言ってもさ」
「じゃあ、仮に俺の腹が出たとして。お前は嫌になるのか?」
「それは無い……けど」
「な、同じだ」
爽やかな笑顔で断言する高山に、不覚にもドキリとしてしまう。
こうして甘やかされるのは満更でもないし、愛されている実感がわいて仕方ないのだが――侑人はややあって首を横に振った。
「やっぱ、やだ。俺はいつまでも、その……ちゃんと抱かれる側でいたいし。そういったことには気をつかいたいんだよ」
気恥ずかしさを感じながら訴えると、高山はきょとんとした顔になる。それから、「そうか」と静かに呟くと、
「わかった。なら、ヘルシーなメニューでも勉強しとくか」
「は? なにも高山さんがそんなことしなくてもっ」
「何言ってるんだ。好きなヤツに何かしてやりたい、って思うのは当然だろ?」
と、相変わらずといってはなんだが、歯が浮くような台詞が飛んできた。しかも、ごく自然に。
(高山さんって、ほんっと甘すぎる!)
返す言葉が見つからず、侑人は唇を尖らせて黙り込んでしまう。
ただ、高山が自分のためを思ってくれるのも、意思を尊重してくれるのも嬉しくて、遅れて「ありがとう」と一言だけ伝えたのだった。
夕食中、ダイニングテーブルの向かいに座っていた高山が声をかけてきた。侑人は咀嚼し終えたのちに、こくりと頷く。
「最近ちょっと太ったから、食事の量減らそうかと」
気まずいながらに答えれば、高山は不思議そうな表情を浮かべる。「ふうん?」と相槌を打ちつつ、何故かこちらの皿へおかずを追加してくるではないか。
「おいっ、人の話聞いてないだろ! なんで食わせようとすんだよ!?」
「いや、見た目的に変わんねえし。せっかく作ったんだから、腹いっぱい食ってほしいと思って」
「あんたは俺のばあちゃんかっ!」
勝手に盛られた皿を押しやるも、高山は気にした様子もなく。それどころか、おかずを箸でつまんで口元まで運んでみせる。
「ほら」
戸惑いを隠せないこちらをよそに、口を開くよう催促するものだから参ってしまう。
差し出されたものを渋々と口に含むと、侑人好みの味つけが口いっぱいに広がった。咀嚼するさまを高山は満足そうに眺めながら、ご丁寧に次のおかずを口元まで運んでくる。
「っ、バカ」
思わず流されそうになったが、ワンテンポ遅れてハッとした。これ以上調子に乗られては困ると、ぶっきらぼうに顔を背ける。
それでも高山は穏やかに目を細めていて、クスクスと笑うのだった。
「べつに体型が変わったとしても、侑人は侑人なんだし。俺は気にしないけどな」
「そうは言ってもさ」
「じゃあ、仮に俺の腹が出たとして。お前は嫌になるのか?」
「それは無い……けど」
「な、同じだ」
爽やかな笑顔で断言する高山に、不覚にもドキリとしてしまう。
こうして甘やかされるのは満更でもないし、愛されている実感がわいて仕方ないのだが――侑人はややあって首を横に振った。
「やっぱ、やだ。俺はいつまでも、その……ちゃんと抱かれる側でいたいし。そういったことには気をつかいたいんだよ」
気恥ずかしさを感じながら訴えると、高山はきょとんとした顔になる。それから、「そうか」と静かに呟くと、
「わかった。なら、ヘルシーなメニューでも勉強しとくか」
「は? なにも高山さんがそんなことしなくてもっ」
「何言ってるんだ。好きなヤツに何かしてやりたい、って思うのは当然だろ?」
と、相変わらずといってはなんだが、歯が浮くような台詞が飛んできた。しかも、ごく自然に。
(高山さんって、ほんっと甘すぎる!)
返す言葉が見つからず、侑人は唇を尖らせて黙り込んでしまう。
ただ、高山が自分のためを思ってくれるのも、意思を尊重してくれるのも嬉しくて、遅れて「ありがとう」と一言だけ伝えたのだった。
121
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる