上 下
73 / 113
おまけコンテンツ

おまけSS 告白の返事(第1.5話)★

しおりを挟む
『風呂! シャワー浴びて帰る!』

 そう言って浴室まで逃げ込んだはいいものの、侑人の頭は高山のことでいっぱいだった。
 単なるセフレだと思っていた相手からの告白、プロポーズまがいの言葉。目まぐるしい展開に、どうやったって思考が追い付かない。

(……とりあえず、早く帰って寝よ)

 考えたところで状況は変わらないのだから、と。そう自分に言い聞かせ、侑人はシャワーのコックをひねった。
 頭から熱い湯を浴びながら、深く息をつく――が、そのとき。唐突に浴室のドアが開き、高山が顔を覗かせる。

「なっ!?」

 わざわざ逃げてきたというのに、なんということだろう。侑人はあっという間に距離を詰められ、背後から抱きすくめられる格好になっていた。

「なに入って来てんだよ!」
「べつにいいだろ、一緒にシャワー浴びるくらい」

 しれっと高山が言い放つ。
 状況が状況なだけに、侑人は戸惑いを隠せなかった。しかし、こちらの心情などお構いなしに相手は続ける。

「で、さっきの返事は?」
「!」

 思わず、侑人の肩がびくついた。
 こんなときに追い打ちをかけてくるだなんて。しかも、体のあちこちをまさぐってくるものだから、余計に混乱せざるを得ない。

「あ、ちょ……っ、しつこいっての」
「そりゃ、しつこくもなるだろうが。俺はまだそこまで枯れちゃいねえよ」
「……っ、は」

 うなじに熱い吐息を感じ、ぞくりとした感覚が背筋を走る。
 濡れた体をよじらせて抵抗するも、高山はびくともしなかった。それどころか、ますます強く抱きしめてきて始末に負えない。

「お前だって、俺のこと嫌いじゃないんだろ。むしろ『気に入ってる』とか言ってたか?」
「だ、から……勘違いすんなって。セフレとしては、って話だろ……」

 声が上擦りそうになるのを必死に抑えながら、どうにか言葉を紡ぐ。
 その間も高山の手はいやらしく動いており、胸元へと伸びては、突起をきつく摘まみ上げてきた。

「っ、あぁ……」

 口から甘い吐息が漏れる。
 そのまま限界まで引っ張ったり、爪を立ててきたりするものだから、どうしようもなくたまらない気分になってしまう。

「まずは試しに付き合う、話はそれから――ゆっくりでいい。お前にとっても悪い話じゃないだろ」

 静かにそう告げる高山は、狙った獲物は逃さないと言わんばかりだ。
 こんな一面は知らない。なんせ、今まで後腐れのない関係を続けてきたのだ。それがまさか――、

(この人、本気で……俺とどうにかなろうと……?)

 侑人は壁に手をつき、崩れ落ちそうになるのをどうにか堪える。
 が、その隙に高山の手が下腹部へと伸びていった。太ももの内側をゆっくりと撫で回わされて、腰のあたりがずくんと重くなる感覚に襲われる。

「ぅ、ん……っ」

 まるで焦らすような手つきだった。それでも体はますます反応してしまい、恥ずかしさで死にたくなる。

「ほら、言えよ。『付き合う』って」
「あ……っ、は」

 あれだけ抱かれたというのに、またもや情欲が沸き上がってきてしまう。
 唇を噛み締めて耐えようとしたが、高山の愛撫は止まらない。ついには後孔へと触れられ、期待に胸が疼くのを感じた。

「……ここ、まだ柔らかいままだな」

 艶っぽく口にするも、高山はそれ以上先に進もうとしない。
 侑人はたまらず振り返り、懇願にも似た眼差しを向けた。しかし、相手はただ薄く笑みを浮かべるだけだ。

「どうした? 告白の返事、する気になったか?」
「っこの、エロオヤジ……こんな手使うなんて、ずるいだろ……」

 忌々しげに呟くと、高山の笑みが深まった。それから、耳元に唇を寄せて囁いてくる。

「ただ、お前が好きなだけだよ」

 低く甘い声に、侑人はぞくりとした。
 高山が喉の奥で笑う気配がする。耳朶を食まれたかと思えば、とどめとばかりに吐息を吹きかけられ、侑人の中でじれったさが募っていく。

「あっ、や……っ」
「返事、早く言わないとこのままだぞ?」

 ――本当にこの男ときたら。言ってやりたいことは山ほどあったけれど、どれもこれも言葉にならない。
 そして悔しいことに、もとより断る理由もなかった。困惑していたとはいえ、答えなど最初から決まっていたようなものだし、きっと互いにどこかそう思っていた節はある。

「つ、きあう……から」

 侑人は消え入りそうな声で告げた。
 その瞬間、なし崩し的に二人の新たな関係が始まったのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

花婿候補は冴えないαでした

BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

処理中です...