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番外編 ヒミツの情事 ★
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カーテンの隙間から差し込む朝日に、智也は目を覚ました。
心地よい温もりを感じながら瞼を擦る。視線を上げれば、目の前に陽翔の寝顔があった。
一瞬ぎょっとしたものの、陽翔の腕に抱きついたのは他でもない自分だ。あのとき、何故だか名残惜しさを感じ、自然と体が動いてしまったのだ。
が、そんなことをしたせいでいまいち寝付けず、すっかり寝不足である。相手はこちらの寝たふりなど気づいた様子もなかったけれど、智也だってそこまで無神経なわけではない。
(こんなふうに、一つの布団で寝るのっていつぶりだろうな)
幼少の頃ならそんなのいつものことだった。ただ、今は以前と事情が違うし、こうして一緒に寝ていると何とも言えない気分になる。
「性欲なんてありませんっつー顔してるくせに……」
当人が起きないのをいいことに、嫌味ったらしくぼそりと呟いた。
改めて見ても、陽翔は端正な顔立ちをしていると思う。影が落ちるほどの長いまつ毛、すっと通った鼻筋に、形のいい唇――女子生徒から絶大な人気を誇る王子様というのにも頷ける。
けれども、そんな王子様にだって性欲はあったらしい。
普段の自慰行為に自分が関わっていると聞いたときなんか、今思い出しても恥ずかしいくらいだ。猥談だけで興奮するだなんて中学生じゃあるまいし、と呆れてしまうが、陽翔がそういった話を口にすれば、妙にどきりとしてしまうものがあった。
(ズリネタにするとか……ハルのヤツ、マジで俺のこと好きなんだな)
陽翔の大きな手に扱かれる感覚を思い出す。
そして智也は自分の股間に目をやって、小さく舌打ちをした。《朝の生理現象》という概念では誤魔化せないほどに、そこが存在を主張していたのだ。
「クソッ」
他のことを考えていれば治まるかとも思ったけれど、今の状況でそれは難しい。かといってトイレで処理をするのも、早起きな家族がいる手前どうかと思う。
考えた末、智也は仕方なく下腹部に手を伸ばした。
下着の中へ手を差し入れ、自身を取り出すと包み込むように握りしめる。
「……ん」
隣には寝ている幼なじみがいて、至近距離に寝顔があるというのに――智也は自身を慰める手を止めることができなかった。むしろ、背徳感も相まって余計に快感が増しているような気がしてならない。
(やばい……俺、ハルで抜こうとしてる)
荒くなる鼻息やこぼれそうになる吐息を必死に押し殺しながら、陽翔の寝顔を見やる。
『あのさ、智也は俺のこと……』
どう思っているの――昨夜の陽翔の言葉が脳裏をよぎっては、智也のことを悩ませていた。
付き合いが長いからこそ、そう簡単に言い表せるはずもない。
だが、こうして陽翔の顔を見ていると、胸が切なくなって自然と手が動いてしまう。彼の想いを知った日からどうにもおかしいのだ。もしやとは思うが、こんなふうに欲情する時点で――、
「っ、く……」
びゅるっ、と溢れ出た白濁が手のひらを汚す。
結局、陽翔のことを考えたまま絶頂を迎えてしまった。智也は深く息をつくと、ティッシュを数枚引き抜いて飛び散ったものを拭き取る。
陽翔は相変わらず寝入っているようだ。と、思ったのだが、
「……お前、もしかして起きてね?」
「!」
ほんのりと顔が赤くなっていることに気がついて声をかける。すると案の定、陽翔は肩をびくつかせた。
「ハル~……」
「ごごごめんっ! だ、だけどそっちだって、朝からオナニーなんてしだすからっ!」
確かにその通りではあるものの、こちらは相手の顔を見ながら行為に及んでいたわけで、なんとも居たたまれない気分になる。顔がじわじわと熱くなって、火でも出そうな勢いだ。
「もしかして、少しは意識して――」
陽翔は何か言いたげにしていたが、そんなもの知ったことではない。耐えきれぬ恥辱に、智也は陽翔の頬を思いきりつねってやった。
「~~っ!」
「い、いひゃいよ!?」
「このむっつり野郎! 人がオナってるとこ、こっそり見やがって!」
「ごめんっ、ごめんって!」
こちらの理不尽な怒りにも、陽翔は反省するさまを見せる。
しかし、それで羞恥が治まるはずもなく、すっかり騒がしい朝となってしまったのだった。
心地よい温もりを感じながら瞼を擦る。視線を上げれば、目の前に陽翔の寝顔があった。
一瞬ぎょっとしたものの、陽翔の腕に抱きついたのは他でもない自分だ。あのとき、何故だか名残惜しさを感じ、自然と体が動いてしまったのだ。
が、そんなことをしたせいでいまいち寝付けず、すっかり寝不足である。相手はこちらの寝たふりなど気づいた様子もなかったけれど、智也だってそこまで無神経なわけではない。
(こんなふうに、一つの布団で寝るのっていつぶりだろうな)
幼少の頃ならそんなのいつものことだった。ただ、今は以前と事情が違うし、こうして一緒に寝ていると何とも言えない気分になる。
「性欲なんてありませんっつー顔してるくせに……」
当人が起きないのをいいことに、嫌味ったらしくぼそりと呟いた。
改めて見ても、陽翔は端正な顔立ちをしていると思う。影が落ちるほどの長いまつ毛、すっと通った鼻筋に、形のいい唇――女子生徒から絶大な人気を誇る王子様というのにも頷ける。
けれども、そんな王子様にだって性欲はあったらしい。
普段の自慰行為に自分が関わっていると聞いたときなんか、今思い出しても恥ずかしいくらいだ。猥談だけで興奮するだなんて中学生じゃあるまいし、と呆れてしまうが、陽翔がそういった話を口にすれば、妙にどきりとしてしまうものがあった。
(ズリネタにするとか……ハルのヤツ、マジで俺のこと好きなんだな)
陽翔の大きな手に扱かれる感覚を思い出す。
そして智也は自分の股間に目をやって、小さく舌打ちをした。《朝の生理現象》という概念では誤魔化せないほどに、そこが存在を主張していたのだ。
「クソッ」
他のことを考えていれば治まるかとも思ったけれど、今の状況でそれは難しい。かといってトイレで処理をするのも、早起きな家族がいる手前どうかと思う。
考えた末、智也は仕方なく下腹部に手を伸ばした。
下着の中へ手を差し入れ、自身を取り出すと包み込むように握りしめる。
「……ん」
隣には寝ている幼なじみがいて、至近距離に寝顔があるというのに――智也は自身を慰める手を止めることができなかった。むしろ、背徳感も相まって余計に快感が増しているような気がしてならない。
(やばい……俺、ハルで抜こうとしてる)
荒くなる鼻息やこぼれそうになる吐息を必死に押し殺しながら、陽翔の寝顔を見やる。
『あのさ、智也は俺のこと……』
どう思っているの――昨夜の陽翔の言葉が脳裏をよぎっては、智也のことを悩ませていた。
付き合いが長いからこそ、そう簡単に言い表せるはずもない。
だが、こうして陽翔の顔を見ていると、胸が切なくなって自然と手が動いてしまう。彼の想いを知った日からどうにもおかしいのだ。もしやとは思うが、こんなふうに欲情する時点で――、
「っ、く……」
びゅるっ、と溢れ出た白濁が手のひらを汚す。
結局、陽翔のことを考えたまま絶頂を迎えてしまった。智也は深く息をつくと、ティッシュを数枚引き抜いて飛び散ったものを拭き取る。
陽翔は相変わらず寝入っているようだ。と、思ったのだが、
「……お前、もしかして起きてね?」
「!」
ほんのりと顔が赤くなっていることに気がついて声をかける。すると案の定、陽翔は肩をびくつかせた。
「ハル~……」
「ごごごめんっ! だ、だけどそっちだって、朝からオナニーなんてしだすからっ!」
確かにその通りではあるものの、こちらは相手の顔を見ながら行為に及んでいたわけで、なんとも居たたまれない気分になる。顔がじわじわと熱くなって、火でも出そうな勢いだ。
「もしかして、少しは意識して――」
陽翔は何か言いたげにしていたが、そんなもの知ったことではない。耐えきれぬ恥辱に、智也は陽翔の頬を思いきりつねってやった。
「~~っ!」
「い、いひゃいよ!?」
「このむっつり野郎! 人がオナってるとこ、こっそり見やがって!」
「ごめんっ、ごめんって!」
こちらの理不尽な怒りにも、陽翔は反省するさまを見せる。
しかし、それで羞恥が治まるはずもなく、すっかり騒がしい朝となってしまったのだった。
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