上 下
65 / 142
season2

scene13-03 ★

しおりを挟む


 その後、二人の姿はカラオケ店からそう遠くないラブホテル――同性利用可のホテルをインターネットで検索したのだった――にあった。
 フロントに備え付けてある写真パネルで部屋を選ぶと、そのまま鍵を受け取って、狭いエレベーターに乗り込む。
 目的の階層に着くなり、素早く部屋の中に入った。
 部屋の内装はアジアンモダンテイストの落ち着いたものだったが、中央に大きなベッドが設置してあって、どう考えても“そういった場所”なのだと意識してしまう。
「大樹……あの、さ」
 小さく呟き、体の疼きをどうにかしたくて身を寄せる。
 すると、コートを脱がされてベッドに誘導された。もじもじしながらベッドの上に座れば、後ろから抱きすくめられて、誠の小さな体は大樹の膝の間にすっぽりと収まった。
「飼い犬の躾は、ちゃんとしてるつもりだったんだけど」
 言いつつ上着に手をかけられて、うなじにゆっくりと唇を這わせられる。
「んぅ、ん……っ」
 それだけで、腰の奥にズキズキという重い疼きを覚えた。
 早く欲しい、と顔を横に向けて、せがむように大樹を見つめる。すぐに彼の目つきが鋭いものになった。
「そんな物欲しそうな顔、あの人にも見せてたのか?」
「ち、ちがっ」
 返ってくるのは冷ややかな目、言葉……だというのに、今や、快感を煽る材料にしかならなかった。息が苦しくなるほどに心臓が早鐘となって脈打つ。
「……いいよ。欲しいんだろ」
 大樹がベルトを外してくる。強引にジーンズを下ろされ、湿り気を帯びた下着が露わになった。
 誠のものは痛いくらいに膨張しており、軽く揉まれるだけで自然と腰が浮いた。
「あ……っ、ん……」 
「とりあえず、さっさと抜いておくか」
「え? あっ――」
 下着も早々に剥がれて、屹立を力強く握り込まれる。先端からは先走りがとろとろと伝い、いつ爆発してもおかしくないくらいに脈打っていた。
「このままじゃ辛いだろ」
「あ、あぁっ」
 先走りを塗りつけるようにして上下に擦られる。指の腹で柔らかく締めつけられる感覚に息が弾み、ただ翻弄されるばかりだった。
「やっ、そんな、つよくしちゃ……っ」
「どうして? 早く楽になりたいんだろ?」
 大樹は手の動きをますます速めて、こちらを急き立ててくる。
 本当に一切の容赦がない。さらに耳朶を舌先でいたぶられ、甘く噛まれれば、火照った体はすぐに蕩けていく。
「や、あぁ、でるっ、あ……あぁあッ!」
 激しい責め立てに呆気なく達してしまい、誠は体を震わせながら白濁をびしゃびしゃとまき散らした。
「これはひどいな」
 ベッドに染みがじんわりと広がっていくさまを見て、大樹が小さく呟く。
 いつもの誠なら、真っ赤になって狼狽するところだが、今はそのような気も起きなかった。体の熱は一向に治まる気配がなく、まだまだ物足りないと訴え続けていた。
「……脱ぎたい」
 汗ばんだ肌に張り付く布の感触が煩わしくて、ポツリと口にする。
 大樹に手伝ってもらって服をすべて脱ぐと、そっと彼の体に寄り添って顔を近づけた。キスして、とねだるように視線を交わせば、唇がねっとりと押し当てられたのだった。
「ん、んんっ……」
 大樹の首に腕を回しつつ、口を開けて舌を迎え入れるなり、吸いあげて舌同士を絡ませ合う。触れるか触れないかの加減で上顎をくすぐられれば、同じように相手の上顎をくすぐった。
 徐々に濃厚なものへ変わっていくキスに、うっとりとする。
 ただ、もっと強い刺激が欲しいのも事実で、
「大樹」
 唇を離して、先を催促するように名を呼ぶ。
 大樹は切れ長の目を細めて、口角を上げた。
「何を期待しているんだ?」
 低い囁きが思考力を奪っていく。理性など少しも残っておらず、まるで操られているかのように自然と口が動いた。
「い、挿れて――大樹のが、欲しいっ……」
「……まるで発情期の犬だな」
 恥ずかしげもない懇願に大樹は苦笑し、備え付けのアメニティのなかからローションパックを取ると、パッケージを破りつつ、再び背後に腰を下ろしてくる。
 いつものように、指で慣らしてもらえると思ったのだが、
「手、貸して」
 大樹が手を取ってくる。何かと思えばローションを垂らされて、そっと秘所に宛がわれたのだった。
「えっ」
「欲しいなら自分でやって」
 大樹の言葉に愕然とする。そのようなことは一度もやったことがない。
 どうすればいいか困っていると、中指を掴まれて入口に当てられる。
「いつも俺がやってるみたいに。できなかったら手伝ってやるから」
「………………」
 躊躇は、ほんの一瞬だけだった。
 熱に浮かされたように頷くと、指をゆっくり沈めていく。思いの外すんなり入ったところでおずおずと動かせば、クチュクチュという控えめな水音が立った。
「んぅ……」
「感じやすいところ、わかる?」
「よ、よくわかんない」
 首を振ると、窄まりを解す手に大樹の手が重ねられる。
「この辺りか?」
 手を動かされて、指先がある一点に触れた瞬間、全身が総毛立ったのを感じた。
「っ、あ!」
「そこ、叩いたり押し上げたりして」
「んっ……ん、はぁっ」
 トンと軽く叩いただけで快感の波が押し寄せてきて、内壁が指を締めつける。背筋を駆け巡る震えに、濡れた吐息を漏らした。
「ん、あっ、んんっ……」
「誠が一人でそんなところ弄るなんて、いやらしいな」
「だって、大樹が、あ……っ」
 大樹に見られていると意識すれば、やり場のない羞恥心が沸き立つ。
 それでも、今さらやめることなんてできなかった。逸る気持ちを抑えきれずに、指の動きは次第に大胆なものへとなっていく。
「そろそろ指増やせる?」
 大樹に頭を撫でられながら訊かれる。一旦指を引き抜くと、もう一本添えて、再び中に押し入れた。
「っ……ん、んんッ」
 誠のそこは、容易く二本の指を呑み込んでいく。
 たどたどしい動作で慣らしていくのだが、十分に快感を得られないことに、だんだんと焦れてきてしまう。堪らず背後を振り返った。
「や、あぁ……うまくできないっ」
「手伝うよ」
 大樹が手を添えてくる。そして、彼の長い中指が、するりと体内に潜り込んできたのだった。
「ん、あぁっ」
 意図せぬ指の動きに内壁が戦慄き、押し広げられていく。
 感じやすい箇所を擦られるたび、快感が頭を駆け巡るも、胸の疼きがひどくなって辛抱ならない。訴えるように大樹の瞳を見つめた。
「も、いいからぁ。大樹の……ほしいってばあっ」
 思い切って、甘えるような声色で精一杯――平常時の自分が聞いたら、卒倒してしまうくらい――の懇願をする。
「ちゃんと解さないでどうするんだ」
「やぁっ、もうやだ……はやくちょうだい」
 子供が駄々をこねるように頭をブンブンと振ると、大樹はため息をついて秘所から指を引き抜いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

王子系幼なじみとの恋はgdgdです

有村千代
BL
ピュアでHな王子様×男前な天然系ヤンキー! 幼なじみDKが織りなす、甘酸っぱくてキュートなアオハルラブ!! <あらすじ> 「『好き』に、ごめんもクソもねェだろ!?」 喧嘩っ早くてヤンキー気質の智也には、幼少の頃から守ってきた幼なじみ・陽翔がいる。 泣き虫でよくいじめられていた陽翔だったけれど、高校生になった今ではすっかり学園の王子様的存在に。 しかし、陽翔はいつだって智也を優先してくれるし、誰かの告白を受けたこともない。 まさか自分にかまけているせいで――陽翔と少し距離を置くことにした智也に対し、複雑な心情を露わにする陽翔。 「智也は――俺に彼女でも作ってほしいわけ?」 その言葉に頷くと、怒ったように陽翔からキスされて!? 予期せぬ告白を受けて困惑する智也と、何もなかったかのように振る舞う陽翔。無自覚ラブVS執着溺愛(?)――gdgdでイチャラブな恋のはじまり!? 【ピュアでHな王子様×男前な天然系ヤンキー(幼馴染/高校生)】 ※『★』マークがついている章は性的な描写が含まれています ※ストーリーを味わうというより、気軽に萌えを感じたい方向けの構成です ※全9話+番外編5話。ほぼ毎日更新。 ※作者X(Twitter)【https://twitter.com/tiyo_arimura_】 ※マシュマロ【https://bit.ly/3QSv9o7】 ※掲載箇所【エブリスタ/アルファポリス/ムーンライトノベルズ/BLove/fujossy/pixiv/pictBLand】

女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました

都茉莉
BL
仁科幸成15歳、趣味−−女装。 うっかり女装バレし、クラスメイト・宮下秀次に脅されて、オモチャと称され振り回される日々が始まった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...