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episode.57

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(そういえばこの世界の人は馬って乗らないのかな)
私はふとそんな事を考えていた。
このような貴族社会のある世界では割と皆んな馬に乗っている気がする。
ヒロインと二人で馬に乗ってピクニックに行ってみたり、追っ手から馬で逃げたりするのだ。

でも実際は誰も馬に乗っていない。
移動手段はもっぱら馬車である。
それか転移魔法。

私は今部屋でダラダラ過ごしている。
今日はレイが授業の何か用事があるとかで会えないのだ。
要するに暇である。

(うちの馬車を引いてる馬に乗ってみるかな)
勉強でもするべきなのだが、やる気が起きないので馬を見に行く事にした。

うちの庭はそんなに広くないので馬車や馬がいる場所まですぐに着く。
馬を見たけどよくよく考えたら、鞍がついていないから乗れないのだ。

私はがっかりして部屋に戻ろうとしていたら、門の外に見たことのある馬車があるのが見えた。
そしてその中から、よく知った人が降りてきたのである。
「やぁ、リオン嬢久しぶりですね。庭で何をしているのです?」
王子が満面の笑みで手を振りながら降りてきた。

私は驚いて身体が一瞬ビクッとなる。
「えと、殿下こそなぜうちに……?ご連絡いただいてましたか?」
「いや、ちょっと用があって通り道だったので寄ってみたのですよ」
この辺りは何もないので通り道ではないと思うが、王子がそういうのであればそうなのだろう。

私はさっきまでの事を王子に話した。
「あなたはよくわからない事を考えますね」
そう言って王子は手を口に当て笑いを堪えていた。

その様子を見て私はハッとして、王子を乗ってきた馬車の馬の近くに誘導した。

「わぁ、やっぱり殿下は馬が似合いますね」
ちょうど白い馬だったのだ。
「本物の王子様みたいです」
そう言うと王子は声を出して笑った。

「そんな事を言われたのは初めてですよ。こんな令嬢は周りにいませんね」
私は白馬と王子のセットて少しテンションが上がってしまっていたのだ。
「あ、あのごめんなさい」
私は頬を赤らめる。

「全然構わないですよ。それにそんなあなたと毎日一緒にいたらとても楽しいそうだと思いましたよ」
王子はそう言って私の手にキスをした。

「では少し顔が見たかっただけなのでもう帰りますね」
そう言い残し王子は帰って行った。

(王子はきっと忙しい時間を割いて会いに来てくれたのよね……)
そう思ったら私は胸が苦しくなった。
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