求婚者達に溺愛されすぎて死にそうです！ 〜乙女ゲーム攻略ダイアリー〜

episode.30

私達はリリーが歩いて行くのを呆然と見守っていた。
「リオン様ごめんなさいね。リリーはあんな子なの」
昔は違ったんだけどねと悲しそうに呟く。

「なんだか落とすのが目的になっているみたいで、誰が好きって言う感情はないんじゃないかしら」
メアリーは困ったように眉を下げた。

リリーはここが現実ではなく、ゲームをしている感覚に近いのかもしれない。

「それにリリーは6人全員にアタックしているから、私が手助けしても本気じゃないと思われてしまって、いつもかわされてしまうのよ」

多分リリーの好きと言う感情は芸能人や推しを見る好きに近いのだろう。

「そうだリオン様、もっとゆっくりお話ししたいから今度うちでお茶でもしない？」
メアリーは手を合わせて、パアァッと明るい表情で私に提案してきた。
「わあ、是非！楽しみです」
こっちで友達がいないから誘ってもらえて嬉しかった。
二人でお茶会の約束をしているとレイがこっちに向かってやって来るのが見えた。

「じゃあ私はやる事があるからまた後でね」
そう言って手を振りながらメアリーは行ってしまう。

「リオン、探しましたよ。こんなところにいたのですね。動かないでと言ったのに」
「ごめんなさい…お腹が空いてしまって」
私はお皿にのっている料理を見せた。
「全く…心配させないでください」
レイは不安な表情をし私の頭を撫でた。

「そろそろダンスですが、一曲お願いできますか？」
そう言われて、私は急いで料理を食べてレイの手をとった。

私はダンスは苦手だなのだ。
今踊れているのはレイが上手いからに他ならない。
レイはそんな私の不安をよそに楽しそうに踊っている。

「そういえば、さっきリリー様がそっちに行ったみたいでしたけど大丈夫だったのですか？」
私はつい気になっていた事を聞いた。
「私は全く問題ありませんよ。彼女は具合が悪いようで今は休まれています」

（え、リリー体調悪かったの？そんな風には見えなかったけど）

「リオン、そんな事どうでもいいのです。今は私の事だけ考えてください」
レイは私に優しく微笑んだ。

私は顔の温度の上昇を感じながらダンスを踊った。