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第五章

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あれからというもの、私による料理授業が始まった。

最初は卵もろくに割れなかったジュゼッペ様が今では一人でクッキー等の簡単なお菓子なら作れるようになった。
本人も成長は感じれているらしく、とても喜んでいた。
成長過程は割愛させてもらう。

これはジュゼッペ様には言っていないのだが、彼女は料理に関して磨けば光る原石だ。
簡単に言えば、才能があるということだがそんなレベルではないと思う。
初めて少しは見守るこっちも不安しかなかったのだが、クッキーを作り上げたときは見た目よし味よしの文句の付け所のない完成度だった。
将来が楽しみである。

そして、時は少し過ぎ────。














婚約者候補となってから5ヶ月が経った。ほとんど半年に近い。
未だにジュゼッペ様は婚約者候補としていてくれるのだが、相手である王子赤月に興味がないのは一目瞭然だった。

今日はジュゼッペ様とお茶会をしている。

「アイシア様」

「はい」

「本当にありがとうございます。お陰様で料理の知識が少しずつ増えてきて…とても嬉しいです」

「そう言ってもらえて何よりですよ」

「ふふ。…さて本題にいきましょうか?」

ジュゼッペ様の何とも言えぬ笑み。

「いや…あの…早すぎでは」

「まぁ!早すぎも何も。今日はもうそれしか話すことがないのですから大丈夫ですわよ?」

「…はい」

「料理を教われるのはとてもありがたいことですわ。ですが、婚約者候補…いえ、婚約者という自覚をお持ちくださいませ。殿下との時間も大切にしなくては…」

「いやいやいや、まだ婚約者候補ですよ!」

「まだ?そんなわけありませんわ。私は肩書きのみ婚約者候補ですから。アイシア様こそ殿下の婚約者ということに今更何もおかしくはないでしょう?」

「そうですけど…」

「それに。私は今にでも婚約者候補という肩書きも捨ててしまって良いのですから」

そう。
ジュゼッペ様がまだ婚約者候補の肩書きを持っているのには何の利益も無い。本人が王子と結婚し王妃になりたいという願望も無いので、言ってしまえば彼女にとってそれは何の価値もない肩書きでしかない。
それなのに、捨てずにいてくれるのは主に2つの理由がある。
1つはギャルツ家に帰らずここで婚約者候補として暮らすことができるということ。
ギャルツ家にどうしても戻りたくないジュゼッペ様とどうするかを考えた結果の案でもある。
そのさらに先をどうするかは検討中だ。
そしてもう1つ。
これは完全に私のためだと思う。
私にこの婚約について考える時間をジュゼッペ様はくれた。おそらく、私がこの婚約を捨てた場合はジュゼッペ様がその場所に入るのだと思う。
ジュゼッペ様には少しの事情を話しているから、私の立場を良く理解してくれている。
事情といっても、婚約者にならずのんびりしたい、王妃は自分に向いてないなど私の心境を明かしているだけだ。今ではそこまで話せるような仲へと進展していた。

「まぁ、こんな雑な前置きもここまでにしておいて」

「自分で雑って言った…」

「本当の本題に入りましょう。ここ5ヶ月でアイシア様。貴女の気持ちはどう変わったのです?是非お聞かせくださいませ」

「…はい」

今日は私の気持ちをジュゼッペ様と少し整理しようと思っていた。










私の気持ちも変わってきてしまったみたい。
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