74 / 79
73. 親友への誓い
しおりを挟むお披露目パーティーから一月が経つと、国民全体にも新たな公爵家の誕生知れ渡ることとなった。長らく悪政で苦しんでいた旧ラベーヌ領の民は、フィーディリア公爵の手腕に歓喜した。どうやらお父様には大きな才能があったようだ。問題だらけの領を一ヶ月で平凡な領地へと戻したのは間違いなくお父様の実力だろう。
ちなみに新しく建てられたフィーディリア邸には、ウィルから分けてもらった花々が綺麗に咲いていた。というのも、彼らは役目を終えたと言わんばかりに美しく散っていったのだ。来年になるまで、しばしの別れとなるだろう。
また、国民からも様々な噂が飛び交っていた、国の第二王子ことデューベルン大公殿下の婚約も世間を騒がせた。やはり王子であったこともあり心配していた国民は多かったようだ。今ではウィルの婚約話は国中で、一途な思いが起こした奇跡と言われている。幸いにも相手である私に対しての不満は一切なく、むしろこれからの幸せを願われるほどであった。
そして、あれから私とお父様はアルバートさんの元を訪ねた。パーティーでは会話を交わすことができた。実はアルバートさんはずっとお父様自身の幸せを願っていたのだとか。だからこそ結婚の心配はしていたし、未来を案じていた。婚約発表で幸せそうなお父様を見て、ようやくアルバートさんの気持ちも満たされたのだとか。アトリスタ商会に関しては、今後はフィーディリア公爵として関わっていくのだとか。
今回は主な目的はアルバートさんではなく、ライナックのお墓参りである。
数ヵ月ぶりにアトリスタ領に足を運ぶ。感じる懐かしさと暖かさはもはや第二の故郷と呼べるほどだった。
「やっぱり落ち着くなぁ……」
「そうだな、ここは本当に静かで過ごしやすい」
アトリスタ邸に着くと、そこからライナックのお墓を目指してアトリスタ領内を二人で歩く。
「それにしてもお父様は凄いですね、一ヶ月で領内を立て直して」
「いや、まだまだ足りないさ。ロゼだって毎日大公妃になるための教育を頑張っているだろう」
そうなのだ。ここ数日前から始めたものだが、ウィルの隣に立つ時にお飾りにならないために多くのことを学び始めた。
「お互いに忙しい日々に追われてますね」
「そうだな」
「ちなみにお父様、フローラ様とはどうですか。しっかりとお会いになられてます?」
「もちろん。以前と比べれば頻度は落ちたものの、何とか時間は作っている」
お互いの一目惚れから入ったものの、どうやら性格的にも一致するようだった。以前フローラ様が言っていた好みとあまりお父様が合わないことから勝手に不安を覚えていた。だがそれも杞憂に終わり、フローラ様にとってお父様は自由で面白い人なんだとか。今度二人で会う約束があるから、その時に詳しいことを聞きたいものだ。
「お父様が充実した日々を過ごせていて何よりですよ」
「俺も……こんな日々を送れるようになるとは全く思わなかった。ロゼはどうだ?」
「私は学ぶかウィルに会うかの二択ですね」
「ロゼも幸せそうだな」
「はい」
長い喪失期間を埋めるように、ウィルは私との時間をできるだけ設けた。会えた衝動でどこかたがが外れた彼だったが、徐々に落ち着きを取り戻し出した。今では昔のような、少し嫌味っぽくも私をからかうことが好きなウィルが見え始めている。落ち着いた様子が見られるものの、私を想ってくれているという本質は変わらない。
何気なく話していると、いつの間にかたどり着いたようだ。
「……着いたぞ」
「ここが……」
そもそもアトリスタ邸自体来たことがない私にとって、ライナックのお墓の周囲も初めて見る景色だった。
「……ライナック、久しぶりだな」
お墓の前にしゃがみこむと、お父様は寂しそうな瞳を向けながら呟いた。
「……お前の代わりとして過ごしていた日々から一変した。……ようやく俺は自分として踏み出そうと思ったんだ」
「…………」
「お前の言っていた人並みの幸せを、ようやく手にできた気がするよ」
お父様とライナックの間にある最後の記憶は、悲しいことにあの惨劇の日だ。その辛い記憶を呼び戻しながらも、お父様は語りかけ続けた。
「お前を死なせた俺が……あの日を招いた俺だけは幸せになってはいけないと思っていたが、愛しい娘のおかげで目が覚めたんだ。それで思い直した。いつまでも気にしてたら、むしろライナックは怒るだろうなってな。だから俺は、お前の分もしっかりと生き抜くよ。ここに誓う」
その時、一つの光が綺麗にゆっくりと散ったように見えた。まるでライナックの魂が、もうこの世に未練がないと告げたかのように。
「……ありがとう、ライナック」
その光がどうにも幻に見えなかった私は、空にと消えた光へと笑いかけた。
少しの間、その場に滞在した後にアルバートさんの元を訪ねた。姿が変わっても、何だかお父様とアルバートさんは本当の兄弟に見えた。それをどこか嬉しく思いながら、紅茶の入ったカップを手に取るのだった。
11
お気に入りに追加
2,533
あなたにおすすめの小説
悪妃になんて、ならなきゃよかった
よつば猫
恋愛
表紙のめちゃくちゃ素敵なイラストは、二ノ前ト月先生からいただきました✨🙏✨
恋人と引き裂かれたため、悪妃になって離婚を狙っていたヴィオラだったが、王太子の溺愛で徐々に……
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……
三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」
ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。
何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。
えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。
正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。
どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
【完結】名ばかり婚約者だった王子様、実は私の事を愛していたらしい ~全て奪われ何もかも失って死に戻ってみたら~
Rohdea
恋愛
───私は名前も居場所も全てを奪われ失い、そして、死んだはず……なのに!?
公爵令嬢のドロレスは、両親から愛され幸せな生活を送っていた。
そんなドロレスのたった一つの不満は婚約者の王子様。
王家と家の約束で生まれた時から婚約が決定していたその王子、アレクサンドルは、
人前にも現れない、ドロレスと会わない、何もしてくれない名ばかり婚約者となっていた。
そんなある日、両親が事故で帰らぬ人となり、
父の弟、叔父一家が公爵家にやって来た事でドロレスの生活は一変し、最期は殺されてしまう。
───しかし、死んだはずのドロレスが目を覚ますと、何故か殺される前の過去に戻っていた。
(残された時間は少ないけれど、今度は殺されたりなんかしない!)
過去に戻ったドロレスは、
両親が親しみを込めて呼んでくれていた愛称“ローラ”を名乗り、
未来を変えて今度は殺されたりしないよう生きていく事を決意する。
そして、そんなドロレス改め“ローラ”を助けてくれたのは、名ばかり婚約者だった王子アレクサンドル……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる