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40.神殿を後にして

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 更新遅れてしまい大変申し訳ございません! こちら土曜日分となります。本日分は後程更新いたしますので、よろしくお願いいたします。

▽▼▽▼▽▼


 図書室を出ると、一度神殿内の物陰に二人で身を隠す。入った頃より時間も経ち、警備の騎士も配置についたため、神殿の外まで一気に駆け抜けることはできなかった。

「……急いでここから出ますが問題ありませんか」
(もちろん)
「あくまでも堂々としていてください。警備の騎士達は、入ってくる人物にこそ警戒しますが、出てくる人物には少しは警戒心が薄まるはずですから」
 
 ディートリヒ卿のもっともな発言に頷きながら、迫ってきているかもしれないルキウスを考慮して、私達は素早く行動した。

(私は神官、私は神官……)

 そう自分を思い込むと、すっと背を伸ばして堂々と神殿の外へと踏み出した。

 できる限り不自然にならない程度に足早く、階段を下りていく。何人かの神官とすれ違ったものの、特段怪しまれるようなことはなかった。

 警備の騎士に声をかけられることもなかったため、無事に神殿から脱出することができた。

 私は神官に扮しているが、ディートリヒ卿は素の状態。それなのに気が付かれない理由を尋ねた。

「あぁ、気配をできる限り消しました。私はルミエーラ様の……この国の聖女を守る専属護衛ですから。神殿の警備の視線を掻い潜るのは可能かと」

 それを聞いて、ルキウスがディートリヒ卿を随分腕の立つ騎士と言っていたことを思い出した。実力の高さから脱出したことに納得した。

 私達は宿につくと、そのまま馬へと向かう。

「ルミエーラ様、万が一にでも大神官様が私達だと気が付けば、急いで教会に人を送って確認をなさるでしょう」
(私も、それはほぼ確実にされると思う)

 ルキウスは私が神殿に行きたがっていたことを知っているから。それに加えて、図書室に入った者が外部の侵入者だとわかるのは時間の問題でもある。

 その答えにたどり着けば、おのずと犯人が誰だかルキウスならたどり着いてしまうはずだ。

「その使者が来るよりも先に、教会に到着しなければなりません。ですので馬を飛ばしますが大丈夫ですか?」
(大丈夫です、今はとにかく全力で急がないと!!)

 力強く頷けば、二人で馬に乗った。行きの時とはまるで違う、かなりの速さで教会へ戻っていく。

(……まずい。凄く、眠い……)

 目蓋が重くなってくると、手綱を掴む手の力が緩まってきてしまう。起きようとすればするほど、今度は体まで重くなってきてしまった。

(どうしよう……)

 風を浴びても、その疲労と眠気が消えずに酷くなっていく。

「ルミエーラ様。ゆっくりお休みになってください。決して振り落とされないよう、私が何があってもお守りいたします」
(ディートリヒ卿……ありがとう)

 その言葉で安堵し一気に張り詰めた感情がほどけたのか、気を失うように私は意識を手放すのだった。


◆◆◆

〈ルキウス視点〉


 自分は確かにこの図書室に入った時、誰も入れないように内側から鍵をかけたはず。そしてその鍵は、決して簡単には開かない作りだった。

(……何故開いたんだ)

 そもそも部屋に入れている時点で、侵入者は二回この扉を開けたことになる。それがどうしても信じられなくて、確認しようと近付いた。

 すると、何かが落ちていることに気が付いた。

(これは……!)

 すぐさまそれを拾い上げると、複雑な感情が込み上げてきた。

「……ルミエーラ」

 落されていた物は、間違いなくルミエーラが使用したであろうメモ帳だった。

(……それなら、あの騎士はディートリヒ卿で間違いないな)

 そうすぐさま判断すると、振り返ってソティカの方へ向かった。

「何が起こったかは一先ずわかりました」
「ほ、本当ですか」
「はい。ただ今は、説明する時間も惜しいので、貴女は急ぎ教会へと戻ってください。私も準備が整い次第、教会へ向かいます」
「わかりました。神官長様にそうお伝えします」
「いえ。訪問に関しては内密に」
「……承知いたしました」

 本当なら自分自身も、今すぐにでも教会へと向かい真実を確かめるべきなのだ。しかし、起こってしまったこの一連の出来事を処理するためにも、まずは侵入した神官の処罰から考えなくてはならない。

 ソティカを見送ると、未だに何が起こっているのかわからない様子の神官の元へ行った。

「だ、大神官様っ」
「神官。貴方は何も見ていませんね?」
「え……」
「そもそも今日、図書室ににも入っていない……違いますか?」
「……そ、その通りにございます!」

 図書室に入り書物を読んだことを不問にするから、今日見たことは黙っていろ。という圧をかけて、彼のことは解放した。

 一人残された図書室で、辺りを見渡す。

(勝手に開いた窓と、開くはずのない扉……)

 常識では考えられない二つの出来事を思い返しながら、メモ帳を握りしめた。

(ルミエーラ……やはりお前は何か隠しているのか?)

 ただひとつ、思うのはお飾り聖女とされたルミエーラのことだけだった。

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