ハヤトロク

白崎ぼたん

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第六十一話 待ち合わせ

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「行ってきます!」

 隼人は明るい陽射しにむけ駆けだした。隼人の影が、白い光の中、軽快に弾んでいる。最近、体の軸から、体がぶれない気がする。鼻歌も心地よく、隼人は歩道橋へと向かう。
 今日は、龍堂と図書館で勉強する。――龍堂君、驚くかな? 自分なりに目一杯進めたテキストをカバンに携えて、龍堂の姿を思い浮かべ隼人は「ふふ」と笑った。
 龍堂はすでに待っていた。今日も後だ! 早く来ても、龍堂を待てたことはまだない。

「龍堂くん!」

 駆け寄りながら声をかけると、龍堂は振り返り「おう」と応えた。もうとっくに気づいていた、そんな様子だった。龍堂の整った輪郭に、汗の滴が輝いていた。

「お待たせ!」
「今来たところ」

 隼人は、息を整える。止まった瞬間、汗があふれ出てきた。滝のように汗が伝い、隼人は恥ずかしくなる。

「ごめん。今日も暑いね」

 ごまかすように、ぱたぱたと手で扇いだ。龍堂はしずかに笑い、隼人の肩に手をそえ促した。

「行こう。のぼせちまう」

 シャツごしに龍堂の手が、隼人の湿った肌に密着した。隼人は申し訳ないような、気恥ずかしいような気持ちになって、ただあわてていた。俺ってなんでこんなに汗っかきなんだろう……。龍堂は愉しげに笑っていた。
 そうこうている間に、図書館に着く。巨大な扇風機にあおられつつ、ふたりは机を探した。どこもまばらに人が座っていたが、幸い、無人の机を見つけた。そこに決め、いつものように向かい合って座った。
 隼人はカバンからタオルを取り出すと、顔をばふりと埋めた。汗を吸わせて、生き返った心地になる。いい香りに安心して顔を上げると、龍堂に笑いかける。

「すいててよかったね」
「そうだな」
「あっ、龍堂くんもタオルいる? 俺、もういっこ持ってるよ」

 龍堂がシャツの襟をつまんで風を送っているのを見て、隼人はカバンからタオルをもう一枚取り出した。やわらかくてふかふかのタオルを差し出す。龍堂はわずかに目を見張った。

「準備がいいな」
「うん。俺、歩いてるでしょ。あと汗っかきだから」

 あと、あったら龍堂も助かるかなと思って。隼人は内心付け加えた。といっても龍堂はハンカチを持っているタイプだし、汗っかきでもないのだが。まあ、そのときは自分が使えばいいのだし精神で、持ってきたのであった。龍堂は、どこかおかしげに隼人のタオルを見ていた。そして「ありがとう」と受け取り、首回りをそっとおさえだした。
 隼人は一安心して、自分もタオルに再度顔を埋めた。

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