61 / 64
第六十一話 待ち合わせ
しおりを挟む
「行ってきます!」
隼人は明るい陽射しにむけ駆けだした。隼人の影が、白い光の中、軽快に弾んでいる。最近、体の軸から、体がぶれない気がする。鼻歌も心地よく、隼人は歩道橋へと向かう。
今日は、龍堂と図書館で勉強する。――龍堂君、驚くかな? 自分なりに目一杯進めたテキストをカバンに携えて、龍堂の姿を思い浮かべ隼人は「ふふ」と笑った。
龍堂はすでに待っていた。今日も後だ! 早く来ても、龍堂を待てたことはまだない。
「龍堂くん!」
駆け寄りながら声をかけると、龍堂は振り返り「おう」と応えた。もうとっくに気づいていた、そんな様子だった。龍堂の整った輪郭に、汗の滴が輝いていた。
「お待たせ!」
「今来たところ」
隼人は、息を整える。止まった瞬間、汗があふれ出てきた。滝のように汗が伝い、隼人は恥ずかしくなる。
「ごめん。今日も暑いね」
ごまかすように、ぱたぱたと手で扇いだ。龍堂はしずかに笑い、隼人の肩に手をそえ促した。
「行こう。のぼせちまう」
シャツごしに龍堂の手が、隼人の湿った肌に密着した。隼人は申し訳ないような、気恥ずかしいような気持ちになって、ただあわてていた。俺ってなんでこんなに汗っかきなんだろう……。龍堂は愉しげに笑っていた。
そうこうている間に、図書館に着く。巨大な扇風機にあおられつつ、ふたりは机を探した。どこもまばらに人が座っていたが、幸い、無人の机を見つけた。そこに決め、いつものように向かい合って座った。
隼人はカバンからタオルを取り出すと、顔をばふりと埋めた。汗を吸わせて、生き返った心地になる。いい香りに安心して顔を上げると、龍堂に笑いかける。
「すいててよかったね」
「そうだな」
「あっ、龍堂くんもタオルいる? 俺、もういっこ持ってるよ」
龍堂がシャツの襟をつまんで風を送っているのを見て、隼人はカバンからタオルをもう一枚取り出した。やわらかくてふかふかのタオルを差し出す。龍堂はわずかに目を見張った。
「準備がいいな」
「うん。俺、歩いてるでしょ。あと汗っかきだから」
あと、あったら龍堂も助かるかなと思って。隼人は内心付け加えた。といっても龍堂はハンカチを持っているタイプだし、汗っかきでもないのだが。まあ、そのときは自分が使えばいいのだし精神で、持ってきたのであった。龍堂は、どこかおかしげに隼人のタオルを見ていた。そして「ありがとう」と受け取り、首回りをそっとおさえだした。
隼人は一安心して、自分もタオルに再度顔を埋めた。
隼人は明るい陽射しにむけ駆けだした。隼人の影が、白い光の中、軽快に弾んでいる。最近、体の軸から、体がぶれない気がする。鼻歌も心地よく、隼人は歩道橋へと向かう。
今日は、龍堂と図書館で勉強する。――龍堂君、驚くかな? 自分なりに目一杯進めたテキストをカバンに携えて、龍堂の姿を思い浮かべ隼人は「ふふ」と笑った。
龍堂はすでに待っていた。今日も後だ! 早く来ても、龍堂を待てたことはまだない。
「龍堂くん!」
駆け寄りながら声をかけると、龍堂は振り返り「おう」と応えた。もうとっくに気づいていた、そんな様子だった。龍堂の整った輪郭に、汗の滴が輝いていた。
「お待たせ!」
「今来たところ」
隼人は、息を整える。止まった瞬間、汗があふれ出てきた。滝のように汗が伝い、隼人は恥ずかしくなる。
「ごめん。今日も暑いね」
ごまかすように、ぱたぱたと手で扇いだ。龍堂はしずかに笑い、隼人の肩に手をそえ促した。
「行こう。のぼせちまう」
シャツごしに龍堂の手が、隼人の湿った肌に密着した。隼人は申し訳ないような、気恥ずかしいような気持ちになって、ただあわてていた。俺ってなんでこんなに汗っかきなんだろう……。龍堂は愉しげに笑っていた。
そうこうている間に、図書館に着く。巨大な扇風機にあおられつつ、ふたりは机を探した。どこもまばらに人が座っていたが、幸い、無人の机を見つけた。そこに決め、いつものように向かい合って座った。
隼人はカバンからタオルを取り出すと、顔をばふりと埋めた。汗を吸わせて、生き返った心地になる。いい香りに安心して顔を上げると、龍堂に笑いかける。
「すいててよかったね」
「そうだな」
「あっ、龍堂くんもタオルいる? 俺、もういっこ持ってるよ」
龍堂がシャツの襟をつまんで風を送っているのを見て、隼人はカバンからタオルをもう一枚取り出した。やわらかくてふかふかのタオルを差し出す。龍堂はわずかに目を見張った。
「準備がいいな」
「うん。俺、歩いてるでしょ。あと汗っかきだから」
あと、あったら龍堂も助かるかなと思って。隼人は内心付け加えた。といっても龍堂はハンカチを持っているタイプだし、汗っかきでもないのだが。まあ、そのときは自分が使えばいいのだし精神で、持ってきたのであった。龍堂は、どこかおかしげに隼人のタオルを見ていた。そして「ありがとう」と受け取り、首回りをそっとおさえだした。
隼人は一安心して、自分もタオルに再度顔を埋めた。
20
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる