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二章第三節.イシハラナツイ、〈続〉〈続〉借金返済の旅

百四十九.おい。

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〈ビューラーの塔 控え室〉

 まつ毛魔女と最上階にて邂逅したのち話を終え、下まで降りるのが面倒だからエレベーターをつけろとクレームをつけるとまつ毛魔女は『飛び降りてご覧なさい』と言った。
 まぁ徒歩で降りるよりいいか、と吹き抜けからダイブするとーーなんとパラシュートをつけているかのようにゆっくりと下降する事ができた。さすが風の魔女の塔、客を飽きさせない趣向がふんだんに盛り込まれている。
 
 まるで『親方! 空から警備員が!』な気分を味わいながらふわふわと降りた先の階段途中には扉があり、休憩したいという本能に導かれるようにそこへ入った。

「あら、ナツイきゅん。どこへ行っちゃかと思って探したわ」
「うわぁぁん良かったっス、ナツイさん! 心細かったっスよ~!」

 休憩する気分を台無しにさせる、野太いおネエ言葉とやかましい女声が俺を出迎えた。一瞬、フィールドに戻ってしまったのかと勘違いしたが、扉の先は貴族の家の貴賓室のような部屋だった。
 魔女のおもてなし部屋か、という事はこいつらは予選を突破したようだ。敗者にこんな部屋を用意するわけないからな。

「ええ、ナツイきゅんが参加者を一気に減らしてくれたおかげよ。アタシ乱戦が得意じゃないからやり易くなって勝ち抜けたわ、ありがとね。chuっー☆」

 ガチムチが投げキスをして更に気分が悪くなるが、まぁ良かった。見知った奴等がいるのは情報集めに優位に働くとかそうでないとか。

「それで? お前らの他には一人しかいないようだが、他の予選突破者はどこ行ったんだ? もう帰ったのか? 帰っていいのか? なら俺も帰ろ」
「違うっスよ! まだ終わってないんスよ! 晴れやかな顔して帰ろうとしないでくださいっス!」
「残り15人が決まるまで終わらないんじゃなかったのか?」
「それがね……ナツイきゅんが一位突破して勝ち抜けたら他の参加者達から不満が上がってね……みんな言う事聞かなくなっちゃって『ポイントで勝ち抜け制』になったのよ。だからまだ予選中なのよ」

 まったく、だったら最初からそういったルールにしとけ。貴族とやらを楽しませる趣向なんて盛り込むからこうなるんだ。スタートからグダクダだなこの大会。

「他に勝ち抜けた人達は別室っス、16人で一部屋は狭いので別れてるんスよ。予選突破枠はあと一人と聞いてるっス。他の部屋は殺伐としてるので……僕とベティさんと【ルールヴ】さんはこっちに逃げてきたっス。あ、すいませんっス……初対面スよね。ナツイさん、こちらはエルフの」
「それよりオトコの子よ、昨今の世界情勢と各国の経済状況による論議の途中だったろ再開するぞ」
「そんな話してないっスよ!? ナツイさん明らかに新たな出会いを拒否しようとしてるだけっスよね!?」

 当たり前だ、勝手に紹介するんじゃない。この国に来てから新キャラが出すぎて覚えきれないんだよ。

 新キャラは窓辺の椅子に腰かけながら、こちらを見て微笑む。紹介される気満々だ。肌が白く、耳が長く、薄い緑髪の女だ。
 ほらな、キャラが多すぎて既に登場人物に緑髪が三、四人も被ってしまった。無闇にキャラを増やすからこうなる、あいつは『エルフの人』でいいよもう。

「本人の前で失礼すぎじゃないっスか!?」
「初めまして、私は【弓術師(アーチャー)】という職業の者です。仰います通り……名などに意味はございませんね、イシハラナツイ様」

 そう言うとエルフの人は立ち上がり、俺の前まで来て握手を求めた。なんだ、まともそうな奴じゃないかーー

「貴方はここで死ぬのですからっ!!!」

 ーーと、普通の奴は騙されるのだろう。
 エルフの人は隠し持っていた短刀を俺の腹部に突き刺した。

「それよりオトコの子、他に勝ち抜けた職業ってなんだ? 対策が打てるかもしれないから書いてみてくれ」

 俺はオトコの子に打診する、職業が割れていればそこからどんな技術を使いそうか事前に分かるかもしれないしな。

「「「!??!?!???!?」」」

 何故か、三者三様に全員が取り乱し混乱している。
 なんだこいつら、一斉に状態異常にでもかかったのか?

「な……な……なんで刺されたのに傷がすぐ治ったんスか!? そしてなんで何一つ気にしてないんスか!?」
「ナツイきゅんに刺す……あ、ダメだわ。興奮してきちゃって鼻血が止まらないわ」
「!?!????」

 それぞれが好き勝手に混乱していて話が進まない。仕方ないので俺は全員に説教をして座らせ、話を進めることにした。

----------------------------
--------------

「……こ……これが……天性の才を持つ者だけが産み出せる【天性技術(エクストラスキル)】スか……」
「そう、終わり。次、エルフ」
「……謝罪は致しませんよ……私は異界人を認めてはいませんから……あなた達のおかげで……私達エルフがどれ程の屈辱を味合わされたか……わからないでしょう?」
「知らん、はい次。ガチムチ」
「とりあえず書いたわよ、あと一枠の予想はつかないわね」
「構わん、いずれわかるからな」

 ガチムチが記した15枠の職業の羅列を見る。知っている職業ならば良いのだが、尚且つ、ファンタジー系の職業だけなら更に良い。わけのわからん異界の現実的職業はいらない。

「まずはアタシ達ね」
――――――――――――――――――――――――――――――――
1【警備兵】
2【司書(ライブラー)】
3【格闘王(チャンピオン)】
4【弓術師(アーチャー)】

 ここにいる四人だな、こう見ると警備兵は確かに異質な存在だ。

「次は勝ち抜けた順ね、ナツイきゅんの次は【黒い鎧】を纏った謎の剣士だったわ。ルールが改定された直後に凄い速さであっという間に勝ち抜けたわ、たぶんイケメンよ」
「どうでもいい。職業は?」

5【蛮族戦士(バーバリアン)】
6【竜騎士(ドラグナイ)】
7【日巫女(ユニソーサル)】
8【風水師(フェンシュナー)】

「蛮族戦士?」
「どの国家にも属さない民族を蛮族っていって……」
「蛮族の意味は知っている、いわゆる自由民族の蔑称だろう。しかしそれは職業なのか?」
「蛮族の中でも優れた戦士はそう認められているみたいよ、魔王軍にとっては敵に違いないし蛮族とはいえ魔物は狩猟対象だしね」

 ふむ、魔物を狩る行いにより職業として認められたとかそんな感じか。他には【竜騎士】【巫女】【風水師】と。どうやって戦うのかわからん職業もあるが中々ファンタジーしているじゃないか。大会自体に興味は無かったが、ファンタジー職業技術をここで存分に拝ませてもらうのも一興かもしれんな。

「続いてこんな感じね」

9【道化師(コメディアン)】
10【彫師(タトゥリスト)】
11【溶接工(ウェルダー)】
12【庭園技師(ガーデンメイカー)】

 雲行きが怪しくなってきたな。
 【道化師】は大道芸人と考えればまぁなくもない。【彫師】ってのはタトゥーを彫る職業だからなんか自分にタトゥー彫ってその模様で不思議パワーを発揮すると考えればなくもなくもない。
 だが、溶接工に庭園技師とはどーいう事だ。

「最後の4枠ーー1枠はまだ決まってないけど……これよ」

13【変幻装備師(コスプレイヤー)】
14【気象予報士(ウェザーレポーター)】
15【絵師(ピクシバー)】

 おい。

 すると部屋がノックされ誰かが入室してきた。風精霊のシラフだ、シラフは書類片手に開口一番に告げる。

「最後の一枠が決定致しました、【ピヨピヨ鑑定士】となります。これにて予選枠16職が揃いました」

16【ピヨピヨ鑑定士】

 おい。
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