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二章第一節 一流警備兵イシハラナツイ、借金返済の旅

百七.キャラ付けのバーゲンセール

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「「「ウォォォオオオオォォォオオオオオオオオォォォ!!」」」

【一流警備兵技術『強制交通誘導』】
【死霊術師技術『絶対霊奴&憑依の術』】

 俺達はだもん騎士と魔物の親玉を探しながら町をひた走っていた。
 俺は疲れないように競歩だけど。

 やる気の無かった町民達は魔物に操られたのか、ゾンビのように俺達に襲いかかってくる。
 主に男は俺の技術で吹き飛ばし、女の町人は骨っ娘の幽霊を憑依させる技術で無力化していた。

「ここの幽霊もオトモダチとやらなのか?」
「はいネ、この町には食料や道具の買い出しにたまに来てたアルよ。その時にオトモダチになったネ」
「そうか」
「………えっ? なになに……? どーしたアルか?………本当ネ!? わかったアル!!」
「俺は何も言ってないぞ、頭がおかしくなったのか?」
「違うネ! 何度言ったらわかるアルか! オトモダチと話してたアル!」
「ややこしい」
「……あ、あと……それとさっきは助けてくれてありがとうネ……」
「    」
「な……何で無視するアルか!? イシハラ様に言ってるアル!」
「幽霊と喋ってたんじゃないのかよ、いい加減にしろ」
「文脈で察してほしいネ!」

 まるで昨今よく見たワイヤレスイヤホンをつけて通話してるやつのようだ。誰に話しかけてるのかわけわからんし、うどん食いたくなってくるからやめろ。

「それで? 幽霊は何て言ってる?」
「この先で住民に捕まってる蒼い髪の女の子を見たらしいネ! きっとアクアアル!」

 案の定囚われていたか。まあ仕方あるまい、助けてやるか。

「案内しろ」
「はいアル!」

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<ムキリョクの町.広場>

 俺達は住民を蹴散らしながら町中央にある広場にたどり着く。

 そこには行く手の侵入を阻むが如く、住民がゾロゾロと壁のように列を為して待ち受けていた。

「町人がいっぱいネ! アクアはどこにいるアルか!?」
「よく見ろ、あそこだ」

 町民達の頭上を飛び越えた視界の先には、まるでかつて地球でよく見たような……地球の文化を模したような光景が広がっていた。

 囚われの身の女が木製の十字架に磔(はりつけ)にされている……処刑風景……囚われているのは言うまでもなく…俺達の同行者……だもん騎士ことアクア。
 それを囲うように……まるで処刑を楽しむかのように…扇動(せんどう)され醜悪な笑みを浮かべる町民達…………そう、そこにはかつて地球で見たような……残虐な光景が広がっている……地球人なら必ずどこかで見た事があるだろう……。

 私刑、磔(はりつけ)、処刑。
 そう、あれは……まるで……。

「くっ! 殺せ!!」

 まるでライトノベルだ。
 気高い女騎士が捕まって磔にされるのは定番だものな。
 いわゆる『くっころ』系というやつだ、まさかこんなところで見れるとは。だもん騎士も気高そうな騎士だしイメージにぴったりだ。
 実際に今まさに言ってたし。

「まさか……今度は囚われてしまうとは……ナツイに合わせる顔がない……頼むから殺してくれ……」

 だもん騎士は酷く落ち込んだ様子で項垂(うなだ)れている。
 体はピンピンしてそうだし、どこもケガはしてなさそうだな。さっさと助けてやるか。

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-----------

「アクア、大丈夫アル?」
「…………」

 町民達を片付けてだもん騎士を開放して介抱する。

 と言ってもケガはしてないし鎧や服とかも破かれた形跡もないけど。エロ同人みたいにならなくて良かったな。

「………操られ……足を引っ張ったばかりだというのに……またもや迷惑を……私がいる意味はあるのだろうか……」

 だというのにだもん騎士は落ち込んだ様子でブツブツ言っている。
 真面目かまったく。女騎士というのは打たれ弱いという決まりでもあるのだろうか。

「操ったのはお前だよな? 骨っ娘」
「そうアルけどそれ今言う必要あるアルか!?」
「まぁ気にするな、それはお前が住民に手出しできなかった優しさ故の結果だ。悪いのは自分で手をくださずに人にやってもらおうとする奴だ」
「それボクも含まれてるネ!?」

「……ナツイ……も……もぅ………たまにすごく優しくなるんだから……」

 まぁ、面倒だから人にやってもらおうとする気持ちはわからなくもないし寧ろわかりみだけど。無理矢理は良くないよな。

「と、いうわけで何か不都合があるなら自分でやれ、そこにいる奴。言葉はわかるんだろ?」
「「!!?」」

 俺は上空に目をやりながら言った。
 そこには何もない、綺麗な青空が広がっているだけだ。

「……誰に言ってるネ? イシハラ様……もしかしてイシハラ様もボクと同じで幽霊が見えるようになったアルか!?……でも空には誰もいないネ?」

 んなわけあるかい。
 すると、俺が見ている空の方向から声が聞こえた。

「……あらぁ、やっぱりわかるんやねぇ……お姉さんびっくりしてもうたやん……オーちゃんが言うてたとーりや………失敗したなぁ……もう少し遠くから様子を見とけば良かったやん……」

 なんか甘ったるいよう女の声だ。
 何で関西弁なのかは知らんしどうでもいい。空間か何かにに隠れる技術でも使っているのか未だ姿は見えない。
 そういえば以前、何か同じようにどっかから隠れて攻撃してきたやつがどっかにいたようないないような、誰だったっけ?


 そんなどーでもいい事を考えていると空間が渦を巻き、ブラックホール的に現れた闇の中から声の主が現れた。

「……この町を支配している魔物の登場というわけか……」
「そうネ! 町民の皆の心の中の姿と一致してるアル……」

 だもん騎士も骨っ娘も姿を見せた魔物を視界に捕らえ、固唾(かたず)を飲んだように身を引き締めた。


「んふふ、せやで? ウチは魔王様直属部隊の【リリス・モーニングリング】……リリスでええよ? キミらが死ぬまでの間、そう呼んでや?」

 現れたのは、ほとんど裸に近い痴女みたいな格好で関西弁を使う角や羽根や尻尾が生えた美人の、キャラ付けのバーゲンセールみたいな魔物だった。

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・『魔王直属部隊』サキュバスの【リリス・モーニングリング】が現れた!
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