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二章第一節 一流警備兵イシハラナツイ、借金返済の旅

九十八.警備兵vs死霊術師

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 俺は骨っ娘に向けてライトセイバーをぶん投げた。

「きゃああああっ!?」

 しかし、骨っ娘は叫びながらしゃがんでそれをギリギリで避けた。
 投擲したライトセイバーは斜めになって地面に突き刺さっている。

 ちっ、外したか面倒くさい。俺がライトセイバーを拾いに行こうとすると骨っ娘がわめいた。

「待って待って!? 話聞いてたネ!? ぼくは君に話そうって言っただけネ! なんですぐに攻撃するアル!?」
「一つ.腹減ったから。二つ.眠いから。三つ.面倒だから。以上」
「それでいきなり人を殺そうとするアルっ!? なんなの君っ?!」
「こっちの台詞だ。お前が敵だろうが仲間になりたそうにこちらを見ていようがどうでもいい、ただ、『面倒はごめんだから』排除するまで。それに俺の大事な飯を奪おうとしているしな」
「してないよっ!? 奪ったのは連れの女の子の心ネっ! 話聞いてるアル!?」
「どっちでもいい。つまり敵(めんどうなやつ)だろ? 先手必勝、俺達を通すまで攻撃を続けるだけだ」
「ぅう~……駆け引きも話も通じないネ……久しぶりに人が来たと思ったらとんでもない人間が来たネ……」

 骨っ娘少女はなんかぶつぶつ言っている。

 とりあえず現状を把握すると、だもん騎士とですわ騎士の二人は骨っ娘の技術とやらにより心を乗っ取られたようだ。
 死霊術師とか言っていたから『霊魂を操って他人に憑依させ、体と心を乗っ取って操る』的な技術という事か。まためんどくさい職業の敵が来たな。

 ん、そういえばムセンと焼き鳥はどうしたんだろうか?

「アクアさんツリーさん! やめてください!! イシハラさん! 大丈夫ですか!?」
「ぴぃっ! 御主人様大丈夫だっぴか!?」

 二人が声をかけてきた。どうやらあの二人は乗っ取られてはいないようだ。

「あ……あれ? どうしたネみんな? なんであの子と鳥さんには憑依しないネ?……え?『したけど乗っ取れない』? どうして?!……『あの女の子と鳥はこの男に対する敵がい心が欠片もない』?『少しでもこの男に攻撃を加えようとすると激しい抵抗により追い出される』?『この男の事で心がいっぱいで憑依したこっちが恥ずかしくなった』? なんなのそれ!?」

 骨っ娘は誰もいない宙をキョロキョロしながら一人言を言っている。幽霊とでも話しているとでも言うつもりだろうか?
 何て危ないやつだ、まさに墓場というステージに相応しい不気味な敵といえよう。

「ぴぃっ! 御主人様に攻撃する事は主従契約法違反になるからぴぃはできないっぴよ! そうじゃなくてもぴぃが大好きな御主人様に危害を加えるなんてありえないっぴ! 乗っ取ろうとしても無駄だっぴよ! ムセン様もそうだっぴ! ねぇムセン様!?………ぴ? ムセン様? 顔が真っ赤っぴ! どうしたっぴか?」
「いえ……あの……そんな大声で私の心中を暴露するのはやめてください……恥ずかしいです………」

「……仕方ないネっ! じゃあ乗っ取った二人で攻撃するだけ! 蒼髪のキミと碧髪のキミ! その男を口が動く程度に痛めつけるね! この武器は没収するネ!」

 骨っ娘はライトセイバーを強奪して草葉に隠れた。武器取られちった。

【魔法剣技一級奥技『水翔波斬』】
【騎士+令嬢技術『創生(ユグドラシル)』】

 だもん騎士とですわ騎士は虚ろな眼をして水と木による波状攻撃を仕掛けてきた。俺は危険予知をして攻撃を躱(かわ)す。

【一流警備兵技術『一時無力化』】

バチッ

 そして二人を無力化するため、技術を繰り出した。
 二人が繰り出した水と木による攻撃は強制的に封じられる。

 しかし、操られている二人は構わず俺に剣を振るう。

「おっと」

 紙一重で避けた剣が髪の先を掠める、どうやら技術を封じる事はできたようだが無力化には至っていないようだ。
 やはりライトセイバー(武器)に乗せないと技術はランクダウンするようだな。

『何したか知らないけど無駄ネ……二人を止めたければぼくの言う事を聞くか、立てなくなるまでその二人を傷つけるかの二択。仲間にそんな事できないでしょ? 大人しくするネ』

 骨っ娘の声がどこからともなく響く。
 こいつっ直接脳内にっ……!? って感じの聞こえ方だ。

 ふむ、面倒極まりない状況になった。

 武器がないから今まで使っていた技術は戦闘に通用するレベルじゃない、少なくとも騎士二人を相手どるには。
 ムセンの銃を借りてもいいが、あれは加減が難しいから操られている二人を消滅させかねない。
 骨っ娘はどこかに隠れていて何故か索敵技術が通用しない。

「イシハラさんっ!」
「御主人様っ!」

 騎士二人からの猛攻は続き、俺を襲う。闘いを見守るムセンと鳥が叫んだ。
 まぁ攻撃は当たらないし当たっても大したダメージにはならなそうだからいいんだけどこのまま避け続けてても埒があかないな。

「ぴぃさんっ、私達でお二人を正気に戻すしかありません! イシハラさんの技術では強すぎて……お二人にケガをさせてしまうかもしれませんから!」
「ぴぃっ! でもぴぃの攻撃手段は音による攻撃だけだっぴよ! しかもぴぃより強いアクア様とツリー様に通用するかわからないっぴ!」
「では……お二人を操っている先ほどの女の子を探しだして止めるしかありません! イシハラさんがお二人を引き付けている間に私達で捜しましょう!」
「承知だっぴムセン様っ! ぴぃに乗るっぴ!」
「イシハラさんっ! 私達で先ほどの女の子を探しだします! それまで耐えてくださいっ!」

 ムセンと鳥が俺に叫んだ。
 その言葉を聞いて再びどこからともなく脳内に直接声が響く。

『んふふっ、無駄ネ。ぼくの技術……【絶対霊奴(ぜったいれいど)】と【心霊現象】で姿を消したぼくを捜し出すのは不可能アルよ、大人しくぼくの話を聞くネ』

 ふむ、仕方あるまい。
 シューズに会いに行くのにこんな敵に時間を使っている場合じゃないし。俺は目的地まで効率良くサクサク行きたい派なんだ、こんな実にもならないサブイベントなんかやってる場合じゃねぇ!


 俺は騎士二人を前に、徒手の構えをした。

「……え? イシハラさん……武器を持たずに何を……?」
「ぴぃっ!? 御主人様っ……ついに『あれ』をやるっぴか!?」
「え?! ぴぃさん……?『あれ』って何ですか!?」

 面倒だったからあまり使ったことはないし、この先一生使う気はなかったが状況が状況なだけに仕方ない。
 こっちの世界ではこの技術も『技術(スキル)』としてなんかなっているんだろうか?
 まぁどうでもいいけど、試しにやってみよう。

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・石原鳴月維は資格(センス)を切り替えた!
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【警備兵技術切り替え(シフトチェンジ)】

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・交通誘導技術から身辺警護(ボディーガード)技術に資格(センス)が切り替わった!
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【一流警備兵技術『護身術』】







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