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第一章 一流警備兵イシハラナツイ、勤務開始

■番外編.王王パニック【冥王視点】

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「な……何者だい……? こんなに……美しい僕よりも……美しく強いなんて……がはっ……」

「ひひひ、相も変わらず容赦ないですなぁ……」

 黒いフードをかぶった腰の曲がった老婆がそう呟く。
 まるで街角におる占星術師じゃな、と、他愛もない事を考える。

「ふん、幾千年ぶりじゃが何も変わってはおらぬな。人間の質もこの世界の醜さも」

 わらわ達をただ見ただけで不審者として強引に喧嘩を売ってきた、目下に転がる兵士達を見てそう呟く。

「ひっひっ………デス・プルート様のあまりの美しさに惹かれたのではないのですかね……ひっひっ」

 聞き慣れぬ名前に一瞬、首をかしげる。
 ……あぁ、そうじゃ。わらわの名前であったな。わらわが自ら名付けたのであった、何と禍々しくも壮美な名であろうか。

「バカ者めが。人間なぞにわらわの美しさが理解できるはずなかろう。それよりも、じゃ。ここは一体何処なのじゃ? 肝心のイシハラはどこにおる?」
「ひっひっ、こちらへ来ると職業神の影響か……向こうでの『技術』が形を変化させてしまいますので中々技術使用に難航しておりまして……ただつい先日までは、この通用口『冥邸洞』におられた事は確かなんですがね……」

 ふむ、げに忌々しい職業神がここでも立ち塞がるか……。
 確かに冥界で使えるわらわの術が上手く発動せぬ、『オルス』でひと暴れするには少々時間が必要か。

「ひっひっ、冥王様に敵う者が『オルス』おるとは思えませぬが……万が一、魔界の王に出会った場合はご注意を……進化を遂げた『悪職』に就いた事により絶大な力を手に入れております故……」
「バカ者め、たかが魔王なぞに遅れをとるものか。では行くぞ、イシハラを探しにな」

 そして、イシハラをわらわのものにする。
 さすれば冥界を統べる新たな王として……イシハラは今の冥界の現状を一から創り変える存在となるであろう。

「待っておれ、わらわがそなたの器を育て上げてやろうぞ」

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