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序章第三節 石原鳴月維、王都警備開始

■番外編イシハラ勧誘会~『魔王と冥王』

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〈『魔王城』〉

カツ………カツ………カツ………

「あら?帰ったの?偽装魔女【オールフォーエリート】……いえ、人間名は【キャリア・オールマイティー】だったっけ?」
「うふふ、ええ……さすがですわ、魔王様。驚かそうと思いましたのに」
「なめないで。姿を隠してもわかるわよそんなの。それで? 勇者はどうだったの? 脅威になりそう?」
「うふふ、いいえ。思ってた以上に役立たずでしたわ、あれなら放っておいても魔王様の敵にはなりえません、わ」
「ふーん、つまんないわね。じゃあもう様子見してなくていいんじゃないの?」
「うふふ……まだダメですわ。至るところに危険因子が存在してます、特に……厄介なのが異界召喚によりこの世界に現れた戦士達……『後天的』な潜在力を秘めた者が大勢います。ふふ……馬鹿な人間達は気付いていないみたいでしたけど」
「えー、アタシ退屈なんだけどー。いつまでこうしてればいいのよー」
「焦りは禁物ですわ、魔王様が所望されている【至高の悪職】も未だ発見されていません。もう少し人間共を観察する必要があります、わ」
「その当て馬にするために【テロリズム】をけしかけたんでしょ? 良さそうな人間は見つからなかったの?」
「うふふ、見つかりましたわ。名を【イシハラナツイ】……『天職の警備兵』……直に一流の警備兵となるお方です、わ」
「……何の冗談? ふざけてるの? 警備兵なんかが参考になるわけないでしょ?」
「うふふ、ええ。注視すべきは職業ではなくその人間性……強大な力を秘めながら信念や目的たるものを何一つ持たない男……まるで『無』なのです。流れゆく雲……きっと魔王様も気に入ると思います、わ」
「……ふぅん……面白そうね、アタシも見に行ってみようかしら。……いずれ仲間になるかもしれないしね……【至高の悪職】……その男が器になればいいんだけど」

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〈冥界〉

「ヒッヒッ、冥王様……何故わざわざお力を貸されたのですか? あの【イシハラ】という男に……」
「気付かなかったか? バカ者め、あの男……わらわに近い器を持っておる。今のうちに恩を売っておこうと思うてな、この冥界を更に荒らす存在になるぞ」
「ヒッヒッ、調べによりますと……【ケイビヘイ】という職業に固執されているようですが……誘いにのるでしょうか?」
「バカ者め、そのためにわざわざわらわが出向いて力を貸してやるのだ。どうやら魔の者が蔓延しているようだからな。行くぞ、異界『オルス』へ」
「ヒッヒッ! 冥王様が動かれるなど何万年ぶりでしょう! よほど気に入られたようですな!良いでしょう、お供しましょう!」

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