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第一章 箱使いの悪魔
番外編.ルーン文字とアーティファクト
しおりを挟む〈レッドストン鉱山 ラインの実験場〉
エリーゼを変化させたのち、俺とマインは『旧エリーゼの実験場』を探っていた。一つ気にかかっていた事があるからだ。
それはここに来るまでに耳にした『機械音』だ。
てっきり俺は廃坑に遺されたトロッコの作動する音かと思っていたのだが……どうやらトロッコはエリーゼの手により全て管理され止められていた状態だったらしい。採掘場を歩いていた時にその一切を目にしなかったのは廃線と化していると獲物に刷り込ませ、油断した相手にだけスイッチを使い作動させる罠としての可動だけで通常は使用していないと自白した。
(だとしたら……この鉱山にはまだ調査隊も発見していない場所がある? あれだけの音を発していたのに気づかなかった? ……常に稼働しているものじゃないからか……それとも意図的に誰かが隠しているのか)
現に音は今聞こえていない。だが、必ず何かあるはずと予感めいたものを抱いた俺は研究場の壁を箱化して音が聞こえた場所に進んだ。
------------------------------------------
〈???〉
大分掘り(?)進めただろうか、位置的には先程の通路の遥か下部であろう場所に到達した時──唐突に光が見えた。あちこちな方向に進んだせいか、体が熱い。もしかすると知らない内に溶岩部に近づいていたのかもしれない。
(……当たりだ、まさかこんな地下にこんな小部屋があるなんて誰も想像していなかっただろうな)
「【箱庭(クラフト)】」
俺は最後の壁を箱にする、すると漏れていた光が夢幻の類いではない──現実であるとその眼に焼き付けられた。
「な…………なん………でしょうか……ここは……」
「……さすがにこれは予想できないし……見ても何なのかさっぱりわからないな……」
そこには非現実的な光景が広がっていた。
まるで遺跡の入口を思わせる……灰色の石造りの壁や床には色鮮やかな黄、紫、薄紅色、青、白、様々な光の導線があちこちに迸(はし)っていた。
そしてそれは入口の円柱の扉へ集結し……そしてまた壁や床に戻っていく。事前に地球の知識を手に入れていなかったなら、ここはまるで理解のできない……未知としか言い表せない場所だっただろう。
地球の文化を知った今──ここをなにかに例えるならば宇宙船の入口のようだった。SF(?)の映画(?)やら漫画(?)やらで出てくる超未来文明の様相(ようそう)だ。
「ス……ステンドグラス……でしょうか……で……でも絵……いえ……光が動いています……」
地球の文明を知らないマインの恐れおののく様子を見れば、これが如何にオーバーワールドにて非常識な光景か解るだろう。扉の両脇にはマインの言うステンドグラスに刻まれた彩りのような光が不規則に動いている──地球のドット表現……俺の視界にのみ映るアイテム欄に収納された道具と同じ技法だ。地球ではこのくらいの表現方法は当たり前で、TVゲームというやつでは周知の技術らしい。何だったか……………………そう、まるでこれは『テトリス』の画面のようだ。小さいミクロな箱を無数に並べたかのような連なりに光を灯し、その箱の点灯により動きや絵を表現する。
「!……この文字はっ……」
円柱型の扉の上部には紫色の光で謎の文字が記されていた。それはオーバーワールドでは未だに難解とされ、完全に理解できた者は未だにいないという【失われた文字 ルーン文字】だった。
【天】
「……記号でしょうか……しかし、あんな型の記号は見た事がありません……ですが……何というか神々しい威光を感じさせます……」
マインが文字を見て呟く。
そのルーン文字の意味を知っている俺はその正確な感性に驚いた、すぐに魔術を理解した事といい……やはりマインには天性の感覚が備わっているようだ。
「【天(てん)】……神々の住まう地……」
「こ……この文字を読めるのですか!? ソウッーーんっ!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
俺が文字を発音した直後──地響きと共に虹色めいた光の収束が扉を輝かせ……その門戸を開いた。喋っている途中だったためマインは舌を噛んだようだ、背を向けしゃがんでいる。
「──っ…………………これは……」
扉の向こう側は未知への遥かなる闇──といった事はなく、謎めいた彫刻が施された台座以外にはヒト一人が入れるスペースがあるだけだった。
「~~~~っ………ぅう………にゃ、にゃんへしょうかこれは……台座に何か見た事もない物があひぃます……」
「…………」
台座には見た事もない【アイテム】と……それを見下ろすように建てられているヒトの形をした彫像があった。
俺は台座に乗っていた【アイテム】を手にする。
これが何なのかはまだわからない……が、数奇な運命──いや、この場合は因縁、若しくは必然とでも言うべきか。
そういったものが俺をここにたどり着かせた事だけはわかった。これは【箱庭】の力を得た者だけが手にできるべきものだというのを。
「この像は一体どなたなのでしょうか? ソウル様はご存知ですか?」
「なっはは、知らねえな。こんな冴えないおっさんの像なんかな。さぁここにもう用はねぇ。帰るとするか」
「あっ、は、はい」
(またお前にいつか会う事があったら今度は俺が笑ってやるよ、実物よりも男前に仕上げすぎだってな。何なのか知らないがありがたく貰ってくぜ、ハコザキ)
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