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最終節.女子高生(おっさん)の日常と、いともたやすく創造されしNEW WORLD

227.女子高生(おっさん)の最終イベント『文化祭』プログラム⑩~ミスコン3~

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 その後も続々と、ステージには見知った身体……いや面々が溢れんばかりの想いを胸に出場し、俺と向き合ってくれた。

【鏑木煌花】──委員長、彼女は関西弁を隠すことなく堂々とコーヒーショップでの出来事を語る。
【七海八天】──アイドルとして駆け出した彼女は病み気味に俺への想いを語る。
【早苗エナ】──無個性を嘆いていた彼女はそんなコンプレックスをはね退けるように回りくどく俺にアプローチしていた。
【来栖亜璃修】──病弱だった彼はそんな過去を微塵も感じさせない体躯で俺に感謝の意を述べる……いや、彼、男の子。
【青井蒼】───いつだかのエロ本の小学生。いやいやなんで出場してるの。もはやミスコンでも何でもねえ。

 それぞれがそれぞれの想(であ)いを、おっさんへとぶつけてくるその度に……たった一度だけの、その人の人生で一度だけの出逢いに想いを巡らせるごとに綻びが大きくなっていくのを感じる。

『──さぁ、ラストはこの人!! 第8回第9回ミスコングランプリ!! 殿堂入り目前の現生徒会長!!【皇めらぎ】だー!!』

 そして──より一層高くなる歓声と共に、最大級の心の動揺がおっさんに訪れた。

『……アシュナ……』
「……めらぎ」

 何故かバツが悪そうに壇上に登場しためらぎは、俺の名前をマイク越しに呟き、俺もまた呼応して彼女の名を口にした。

 果たして彼女はどうだろうか。
 仮におっさんが別の世界で再び出逢えたとして、彼女は俺を受け入れるだろうか。
 そんな世界は本当に存在するのだろうか。

『あの………その……怒って、ますわよね……何も告げずに貴女を生徒会長としてしまったことを……ご、ごめんなさい……』

 もしもそんな世界が存在しないのならば。
 彼女と過ごした日々は夢幻と化し、虚空の果てへと消え去るのだろう──最初から存在しなかったかのように。
 世間知らずで、凛として、奥底では欲望にまみれていたのに政略婚させられそうになって、厳かで、雅やかで……綺麗で可愛い、俺に全てを吐き出し、全てを吐き出させてくれた彼女はいなくなってしまうだろう。

 そんなのは……嫌だ。
 そう体で感じ。 
 自然に身体は動き。
 彼女を抱き締めた。
 歓声は雑音で。
 観客は視界からは消えてはくれなかったけど……それでも。

「めらぎ……」
「ど、どうしましたのアシュナッ…………震えてますわよ……?」
「…………」
「……………今日は甘えん坊さんなんですわね…………思えば、わたくしはこれまで貴女に甘えてばかりでしたから…………なにがあったかは聞きませんわ。気の済むまでわたくしの胸をお使い下さいませ……よしよし、恐れなくても大丈夫ですわ……わたくしは、命尽きるその時まで貴女と共にいます……誓いますわ」

 たとえ慰めでも、たとえ不可能だとしても、虚言だとしても──めらぎの放つ言葉は温かくて……自然と俺の震えを止めた。

 だけど、結局……俺はなにも口に出せなかった。
 割り切った別れの言葉も、いまさらになって湧いた名残惜しい気持ちも、なにも。
 だってアシュナはこれからもずっと共にいるから。
 消えるのは──おっさんだけなのだから。

「…………」

 これでいいんだ。
 綺麗に収めたはずの想いを今更引っ張り出しても、しょうがない。

「……ぅん、ずっと一緒だよ。めらぎ」

 綺麗に嘯(うそぶ)いて、笑顔で放たれたその言葉は……空の彼方へと消えていった。


 ──その後、俺の意志に関係なくミスコングランプリ優勝は何故か【波澄阿修凪】に決定した。めらぎとのやり取りで見せた笑顔が観客と他審査員の心を鷲掴みにしたらしい。
 一回も出場してないのに殿堂入りしてたり、俺の審査まったく関係なかったり──なんなのこの茶番と思わざるを得なかったが……そんな学祭の適当さ加減は少しだけおっさんの心を軽くしてくれた。





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