21 / 51
神話の中に残る
21 古典演劇
しおりを挟む
まだ元気のない癒々とお菓子を食べながら歩く。広場で演物をしてる。こっちは女神と天女の演目だ、天仙花園。
宝石や真珠が実る木の枝が折れて、女神と天女達が知恵を出し合う話。最終的には皆で世話して新しい枝が生える。
それまでに折れた所を隠そうとする者、逆に飾ろうとする者、折れた枝をくっつけようとする者など、回答に個性がある。
「知らない話だわ」
「じゃあ見て行こうか、まだ最初の頃だし」
椅子にかけた三女神の前で、入れ替わり立ち替わり天女役が台詞を言う。流石に十二人全員に出番はなく、七人くらいが朗々と声を上げていた。
「枝を探して綺麗に繋げて差し上げましょう。きっと元に戻る方が、木も嬉しゅうございます」
「折れてしまった以上、その枝はもう元のままではありません。新たな枝が伸びるまで、在るがままに見守りましょう皆様。木が生きようと枝を伸ばす姿こそ、何より美しい」
天女達の主張に耳を傾けていた三女神が席を立つ。
生命の女神はそれぞれの考えを褒めて行き、最後に見守るべきと結論付けた。
霊薬の女神はそれぞれを叱った後、全てを試すのも良いだろうと結論付けた。
天通眼の女神はそれぞれの未来を見通した結果、見守るのが最善だと言った。
「……どうして天通眼の女神は、最初に結果を見なかったのかしら?」
「この後のやり取りを見てて」
不思議そうな癒々とひそひそ言い交わす間に、天通眼の女神が腕を広げ、飾り付けられた木を示した。
「あなた達の話を聞いて、どう在るべきかを木が選んだのです。木が迷ったままでは何も起こらなかったでしょう。皆が知恵を出し合い、よく語らったからこそ、木も納得出来たのです」
霊薬の女神が追随した。
「どの考え方にも一理あり、状況と状態で最善は変わるのですね。花園の美しさは変わらずとも、草木の彩りは日々変わるように……全ては絶えず移ろい行く」
「この花園の語らいが幾久しく続くよう、皆で祈りましょう」
生命の女神が締め括り、笛と弦楽器が鳴り出した。護国平和の舞踊と演奏が始まり、女性達の衣装がひらひら泳ぐ。
「おしまいだね。これは答えが先にあるんじゃなく、考えや行動の先に答えがあるんだって話だよ癒々」
「圜が教えてくれると分かり易いわ」
他の観客と一緒に拍手して見終える。感想を話しながら歩いていると、通りで年配の女性達が籠を手に花を配っていた。
「納涼祭の記念に、どうぞ」
「ありがとう」
小さな白い花、梅鉢草っぽい。そっか、もう夏も終わり。植物にはとっくに秋なんだな。
「あら、お兄さん色男ね」
「まあ本当、美人さん」
「どうも」
玖玲が囲まれてる……あ、御弥真がいない。あいつ逃げたな。まあ玖玲も一般人のお年寄り相手に乱暴はしないだろ。我慢の限界までは。
「癒々あげる、髪に挿すと可愛いよ」
「良いの? 圜のお花よ?」
「僕は男だから別に」
屈んだ癒々の耳に梅鉢草の花を挿す。珍しい色の双眸を間近に見た。やっぱりその色綺麗だな。
白い花はちんまりと収まる。癒々の髪は薄茶色だから、彩りも柔らかい印象だ。
「出来たよ癒々。可愛いね」
「キキッ」
「ありがとう。でも圜の将来が少し怖いわ……」
「なんで?」
いや、本当になんで?
「はあ……厄介だった」
「無事生還したか玖玲……うわあ、花咲か爺さんみたいになってる」
「花咲かの翁は本人には咲かない、ボケたのかちびすけ」
言ってみただけじゃん。でも玖玲はあちこち花を持たされたり、髪にも挿されたりしている。花まみれで一人生け花展示会になってるの笑う。
「何その顔、死になよ」
「頑張って堪えてやったのに。失礼な奴め」
「ふふ、綺麗ね玖玲さん」
「……」
毟るように花を抜き、玖玲は全部癒々へと押し付けた。癒々はちょっと驚いた顔をして、でもまとめた茎を手に持ち歩いている。
「ここに長居し過ぎ。次の町に着くまで歩きなよ」
正直八つ当たりだろと思ったけど、内容に異論はない。先を急ぐ玖玲の背中に、早足で付いて行った。お祭り楽しかったなー。
そんなこんなで空は既に真っ暗。これ以上は明かりなしに進めなくなりそう、と限界を感じる手前で町に着いた。
「宿の空きあるかなぁ?」
「軒下でも借りれば良い」
「癒々がいるのに?」
「甘やかしてどうする。金を返すかも定かでないのに」
「それは癒々のせいじゃないし、説明したろ」
「大丈夫よ圜、玖玲さんの言う通りだもの。外でも納屋でも構わないじゃない。雨が降る気配もないし、不満なんてないわ」
頑張って明るい声色を作る癒々に免じて引くけども、そもそも僕ら別に仲良くはないんだよ。関係性に罅が……とか全然気にしなくて良い。
「……風呂場はまだ開いてるだろ、中で誰かに話を聞いたら良い」
「はい」
「癒々、急がなくて平気だから。後でね!」
ええと返す癒々とは公衆浴場で一旦別れた。
湯船で地元の人に一晩眠れそうな場所を訊ねてみたら、子連れが物騒なのは良くないと一泊させて貰えることに。やったー。
「これは僕のお手柄だね! 玖玲のじゃないよ! 感謝してどうぞ!」
「別に構わないけど妙に生意気」
バシャッと顔にお湯を引っかけられた。目玉に当たったら痛いだろ馬鹿!
宝石や真珠が実る木の枝が折れて、女神と天女達が知恵を出し合う話。最終的には皆で世話して新しい枝が生える。
それまでに折れた所を隠そうとする者、逆に飾ろうとする者、折れた枝をくっつけようとする者など、回答に個性がある。
「知らない話だわ」
「じゃあ見て行こうか、まだ最初の頃だし」
椅子にかけた三女神の前で、入れ替わり立ち替わり天女役が台詞を言う。流石に十二人全員に出番はなく、七人くらいが朗々と声を上げていた。
「枝を探して綺麗に繋げて差し上げましょう。きっと元に戻る方が、木も嬉しゅうございます」
「折れてしまった以上、その枝はもう元のままではありません。新たな枝が伸びるまで、在るがままに見守りましょう皆様。木が生きようと枝を伸ばす姿こそ、何より美しい」
天女達の主張に耳を傾けていた三女神が席を立つ。
生命の女神はそれぞれの考えを褒めて行き、最後に見守るべきと結論付けた。
霊薬の女神はそれぞれを叱った後、全てを試すのも良いだろうと結論付けた。
天通眼の女神はそれぞれの未来を見通した結果、見守るのが最善だと言った。
「……どうして天通眼の女神は、最初に結果を見なかったのかしら?」
「この後のやり取りを見てて」
不思議そうな癒々とひそひそ言い交わす間に、天通眼の女神が腕を広げ、飾り付けられた木を示した。
「あなた達の話を聞いて、どう在るべきかを木が選んだのです。木が迷ったままでは何も起こらなかったでしょう。皆が知恵を出し合い、よく語らったからこそ、木も納得出来たのです」
霊薬の女神が追随した。
「どの考え方にも一理あり、状況と状態で最善は変わるのですね。花園の美しさは変わらずとも、草木の彩りは日々変わるように……全ては絶えず移ろい行く」
「この花園の語らいが幾久しく続くよう、皆で祈りましょう」
生命の女神が締め括り、笛と弦楽器が鳴り出した。護国平和の舞踊と演奏が始まり、女性達の衣装がひらひら泳ぐ。
「おしまいだね。これは答えが先にあるんじゃなく、考えや行動の先に答えがあるんだって話だよ癒々」
「圜が教えてくれると分かり易いわ」
他の観客と一緒に拍手して見終える。感想を話しながら歩いていると、通りで年配の女性達が籠を手に花を配っていた。
「納涼祭の記念に、どうぞ」
「ありがとう」
小さな白い花、梅鉢草っぽい。そっか、もう夏も終わり。植物にはとっくに秋なんだな。
「あら、お兄さん色男ね」
「まあ本当、美人さん」
「どうも」
玖玲が囲まれてる……あ、御弥真がいない。あいつ逃げたな。まあ玖玲も一般人のお年寄り相手に乱暴はしないだろ。我慢の限界までは。
「癒々あげる、髪に挿すと可愛いよ」
「良いの? 圜のお花よ?」
「僕は男だから別に」
屈んだ癒々の耳に梅鉢草の花を挿す。珍しい色の双眸を間近に見た。やっぱりその色綺麗だな。
白い花はちんまりと収まる。癒々の髪は薄茶色だから、彩りも柔らかい印象だ。
「出来たよ癒々。可愛いね」
「キキッ」
「ありがとう。でも圜の将来が少し怖いわ……」
「なんで?」
いや、本当になんで?
「はあ……厄介だった」
「無事生還したか玖玲……うわあ、花咲か爺さんみたいになってる」
「花咲かの翁は本人には咲かない、ボケたのかちびすけ」
言ってみただけじゃん。でも玖玲はあちこち花を持たされたり、髪にも挿されたりしている。花まみれで一人生け花展示会になってるの笑う。
「何その顔、死になよ」
「頑張って堪えてやったのに。失礼な奴め」
「ふふ、綺麗ね玖玲さん」
「……」
毟るように花を抜き、玖玲は全部癒々へと押し付けた。癒々はちょっと驚いた顔をして、でもまとめた茎を手に持ち歩いている。
「ここに長居し過ぎ。次の町に着くまで歩きなよ」
正直八つ当たりだろと思ったけど、内容に異論はない。先を急ぐ玖玲の背中に、早足で付いて行った。お祭り楽しかったなー。
そんなこんなで空は既に真っ暗。これ以上は明かりなしに進めなくなりそう、と限界を感じる手前で町に着いた。
「宿の空きあるかなぁ?」
「軒下でも借りれば良い」
「癒々がいるのに?」
「甘やかしてどうする。金を返すかも定かでないのに」
「それは癒々のせいじゃないし、説明したろ」
「大丈夫よ圜、玖玲さんの言う通りだもの。外でも納屋でも構わないじゃない。雨が降る気配もないし、不満なんてないわ」
頑張って明るい声色を作る癒々に免じて引くけども、そもそも僕ら別に仲良くはないんだよ。関係性に罅が……とか全然気にしなくて良い。
「……風呂場はまだ開いてるだろ、中で誰かに話を聞いたら良い」
「はい」
「癒々、急がなくて平気だから。後でね!」
ええと返す癒々とは公衆浴場で一旦別れた。
湯船で地元の人に一晩眠れそうな場所を訊ねてみたら、子連れが物騒なのは良くないと一泊させて貰えることに。やったー。
「これは僕のお手柄だね! 玖玲のじゃないよ! 感謝してどうぞ!」
「別に構わないけど妙に生意気」
バシャッと顔にお湯を引っかけられた。目玉に当たったら痛いだろ馬鹿!
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる