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十話 真実

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最後に職員室に入ることにした。
金白学園では職員室の扉を開ける前に、「失礼します」、誰かに用がある時は「○○先生いますか」と言わなければならない。
しかし扉の小窓から覗いてみると先生は誰もいなかったので、勝手に室内に立ち入った。
「職員室ってよく見るとこんな感じなんだね」
ないよー君は小さく呟くと、鉄の机の引き出しを漁り始めた。次の瞬間。
プルルルルルルルル
入り口付近にある電話が鳴った。
「え、何何……?」
ないよー君は珍しく怯えていたが、震える足で電話に近寄り受話器を手に取った。
「も、もしもし……」
『職員室ですかー?』
受話器の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「は、はい」
『こちら5年A組のアップルですー』
「え?アップル?」
ないよー君の声に俺は驚いた。アップルはないよー君の兄である。そのアップルが電話に?
『体調が悪い子がいて……』
「アップル!僕だよ!ないよーだよ!!」
『熱はないって言ってるんですけど…』
アイツこっちの話聞いてねえな。なんだよ。

「アップルってばー!!!」
『本人が早退したいって言ってるんですよー』
中々気づいてくれないアップルに苛立ってきた時、ないよー君は息を吸って大声を出した。
「アップルーーーー!!!!!!」
『ん、その声はないよーか?』
「そうだよ!ポケっこもいるよ!!」
『なんで職員室にいるんだ』
俺とないよー君はこれまでのことをアップルに説明した。
話を聞いたアップルは、『ふ~ん…。じゃあさっきの早退したい子のこと、近くにいる先生に伝えといてくれ。じゃ』と残して電話を切ろうとした。
慌ててないよー君はアップルを引き留めた。
「ちょちょちょ、ちょっと待って!!」
『なんだよ~』
「職員室で集合しようよ!!」
『あーもう分かったよ、今から行く』
そういえばアップルは職員室に来ていいのか?ニ限目が終わって休み時間なのか?
それは置いといて、俺達はここでアップルを待つことにした。


十分程経ったが、職員室にアップルは現れなかった。
ないよー君と一緒にお喋りしていたが、だんだん口数も減って職員室は静かになった。
しかし電話の音で静寂は破られた。ないよー君が電話に出た。
「ないよー君です」
『おい!いつまで経っても来ねぇじゃねーか!!』
「は?僕達はもう職員室にいるし。そういうアップルこそ来ないのは?」
『ふざけんな!!オレはもういるんだよ!!』
「いないよ。ここには誰もいないよ!!」
『あぁもういいよ。ニ限目も始まるし。オレも調べるから、お前らもなんか調べとけ!!』
電話が切れる音がした。
学園に職員室は一つだけ。なのにすれ違っている。
時間、ロゴ、今の職員室……
「ないよー君」
「ん?何」
「考えてみて?さっきの体育館のロゴとか、学園に職員室は一つしかないのに行ってもアップルに会えないのとか……」
「……」
「俺図書室行ってた時、時計見てみたんだが、10時23分でな。10時なら大体ニ限目の途中だろ?で、今アップルがニ限目が始まるって言ってたから、時間差があるんだよ」
「あぁ、そういうことね……」
ないよー君は全て察したような表情を見せた。

「―ここは金白学園じゃない」
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