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第四章 ウチのダンジョンから聖都へ出張した!

第四話 迷宮創造

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迷宮創造クリエイト・ダンジョン!!」


 ダンジョンマスターの固有スキル『迷宮創造』が発動されると、下水道がオレのダンジョンへと変貌していく。

 空気がわななき、地面が揺れ、オレの中から膨大な魔力が流れ出した。


「な、なんだこれは――!!」

 聖騎士達の怒号が響く。


 二つ目のダンジョン創造は、DPを十憶ポイント消費した。これまで勇者やSランクパーティ、草原エリアで増えた村里の人々、そして今回の討伐軍がもたらしたDPの貯金を一気に使い果たす。

 ダンジョンを拡大し、様々な条件を満たす中で、ダンジョンマスターとしてのレベルが上がり、二つ目の迷宮創造を可能にしていた。

「あれっ?! まずい。魔力切れだ……!」

 ガクッと力が抜けて、膝をつく。意識が朦朧として、視界がぶれていく。


「あの少年を、捕まえろ!」

 ランスロットが、聖騎士達に命令する声が聞こえた。このままでは、すぐに捕らえられてしまうっ。


 ――オレを、守れっ!!

 新たに迷宮ダンジョンと化した下水道に住んでいるあらゆる魔物に命令した。もともと下水道に生息していた彼らは、オレの眷属と化している。

 チュウ、チュウチュウ……。最初に現れたのは、ネズミ型モンスター。下水道に巣を作る都市型の魔物、黒闇ネズミだ。オレの命令に従い、暗がりの中から無数の赤く光る目が聖騎士達を目指して押し寄せた。

「な、なんなんだ?!」

 足元から数十匹の黒闇ネズミが這い上がり、聖騎士達は夢中で振り払った。だけど、何百、何千という黒闇ネズミが幾度振り払っても、後から後からよじ登り噛みついてくる。聖騎士達は黒闇ネズミを踏みつぶし、叩き落とし、ある者は剣を振り回した。

光の盾ライトシールド!!」

 彼らは無数の黒闇ネズミたちを遮断するために、自分達の周囲に防御の壁を作った。光る壁に阻まれ、小さな魔物たちが押し返される。


 足止めされている今のうちに、逃げないと! オレは震える手を魔法の鞄に突っ込み、魔力回復薬マジックポーションを取り出して一息に飲む。まだ、足りない。限界近く魔力を使い果たしてしまったのだ。


「スキル解放! 退魔神剣イヴィルス・スレイヤー! 薙ぎ払え、邪悪なモンスターを! 大地に還れ、悪しき魔物達!」

 聖騎士達の剣のスキルが発動し、一振りごとに大量の黒闇ネズミが駆逐されていく。


 一刻も早く、ここを離れないと!! ダンジョン内転移魔法で、出来るだけ彼らから遠くに……! 

 そう念じて、転移する。オレは王城の地下から、王都の南門近くの下水道にダンジョンマスターのスキルで瞬間移動した。この王都に来た時にくぐった門の近くだ。そこでとうとう力尽きて、倒れ込む。

 眠い……魔力回復薬マジックポーションを使わないと……寝ちゃ、だめだ……。

 ボヨン、ボヨン……。ブルースライムが何匹か、こちらに近づいて来る。スライムに囲まれ、ぷるぷるした表面が、ほっぺたにすりすりと擦りつけられる。スライムたちが合体して一つの大きな塊になった。それから楕円形だったスライムの形状が薄く伸びて、オレの身体の下に入るとぷるぷる震えながら、ボヨヨンボヨヨンと移動を始めた。

「え? 安全な所へ、連れて行く? ……って、どこに?」

 まあ、このスライムもオレの眷属になっているから、任せて寝ちゃっても、いいかな?

 王都の下水道全部ダンジョン化したので、すごく疲れた。ちょっとだけ、寝ようかな……ほんの、ちょっとだけ……すやぁ――。


◆◇


 目が覚めると固い台の上に寝かされていた。手足は金属の枷によって台に固定されている。

 ――ここは、いったい?!

 辺りを見回すと、石壁の部屋で天井には滑車が取り付けられ、鎖がぶら下がっていた。壁にはX型の貼りつけ台や、人形の形の鉄箱が立てかけてあった。部屋の隅には水槽や火鉢が置かれている。

 そして首を横にして見ると、オレの寝かされている台のすぐ側にワゴンがあった。その上には、ノコギリ、トンカチ、ペンチ、ノミ、千枚通し、ナイフ、おろし金、針などが並べられている。


「やあ、起きたかい?」

 金髪碧眼の白皙の美丈夫、ランスロットがオレを見下ろしていた。

「ここは、大聖堂の地下だよ」

 転移したのに、結局こいつに捕まってしまったのか?!

「君には色々聞きたいことがあってね。痛い目に合う前に、話した方がいいと思う」

 背が低くてずんぐりした猫背の男が、暗い顔に嗜虐の笑みを浮かべて、ランスロットの隣に立っている。

「まず君は、何者なんだ? あのダンジョンで何をしていた?」


 ……枷を外そうとしたけど、身体に力が入らない。こんな枷、すぐ外せるはずなのに。

「その枷は外せないよ。神代遺物アーティファクトのオリハルコン製でね。物理的耐久力はもちろん、すべての属性魔法を無効化する作用があるんだ」

 くっそ! 

「痛い目に合わないうちに話した方がいい。このジャックは、殺さずに痛めつけることにかけては王国一の刑吏でね」

「ヒッヒ……」


 ジャックは嬉しそうに、鋭利なミスリルナイフを手に取り、オレの頬にあてた。

 

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