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第三章 ウチのダンジョンに討伐軍がやって来た!

第十三話 救出作戦

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 今日の朝ご飯は、戦時という事もあって簡単におにぎりだ。

 アーサーのおにぎりは、本当うまい! ホカホカご飯にちりめんじゃこ、山椒、おかか、梅肉に醤油を垂らして混ぜて握って、海苔を巻いてある。このおにぎりには緑茶がよく合う。

 そして、アーサーと並んでソファに座り、おにぎりを食べながら、モニター監視。

 赤狼人狼傭兵団が居なくなって、慌てている討伐軍。これからどうするのかな。オレは10階層セーフエリアの討伐軍幕僚本部のカメラをズームアップした。

「狼人傭兵が、消えた?! 敵前逃亡は死罪だぞ!! ええい、忌々しい、獣人共めが。これまで生かしてやった王国の恩を仇で返すとは。見つけ次第、殺せ! 王都に帰還したら、狼共の女子供すべて奴隷にしてやるっ」

 部下の報告を聞いて、おっさん将軍が顔真っ赤にして吠えていた。


「えーっ?! あの傭兵たち、妻子持ちだったの?! まずいんじゃないか?」

 アーサーが驚いている。確かに、まずいな。そんな話は、聞いてなかったのに。合コンセッティッングして欲しいって話はあったけど。

 オレはまた、森林エリアにモニターを切り替えて、団長にマイクで呼び出しを掛けた。確認しておかないと。

「赤狼の団長。お前達傭兵は、王都に奥さんと子供がいるのか? もしかして王国の人質になってんのか?」


 団長は宴会の後、みんなと一緒に雑魚寝していたけど、丁度起き出したところだった。

「えっ?! 俺達はみんな独りもんのはずですが……。なあ、イザーク! ビクトル!」

「あ――、えーっと……」

「そのう、実は……」

「……。まさか! 俺の知らない所で、てめぇら、リア充爆発したのかっ?!」

「いや、俺達は違いますよ? でも、戦場を渡り歩くうちに、女が出来て離れがたくなり、こっそり連れて来た奴が何人か居るんです」

 その言葉にショックを受けて、頭を抱えている団長。

「部下のことは、全部把握していると思っていたのに……」

 全く、ホントしょうがない団長ヤツだな。

「とにかく、王都に幾人、家族が居るのか、急いで調べて報告してくれ」


 それから隣のアーサーを見る。

「どうしようか?」

「うん。傭兵たちを受け入れるなら、どちらにしろその家族も迎えなきゃならないし。ここはいくつか選択肢があるけど、どれを選ぶ?」

 彼女の提案は、三つだ。

 一、討伐軍を皆殺しにして、傭兵団が寝返ったこと自体を隠匿する。傭兵団は生きているから、いずれバレる可能性がある。また、皆殺しにしてしまうと、人族からこのダンジョンは完全に敵対することになる。

 二、討伐軍をダンジョンに足止めしている間に、王都の家族を逃がす。その場合、ダンジョンから誰かを王都に使いとして出さなきゃならない。王都から逃がした後のことも、考える必要がある。

 三、家族が心配だと傭兵達もまともに戦えないだろうから、なんとか方法を考えて、至急このダンジョンに連れて来る。


 傭兵の家族が王都に留まることは、どちらにせよ危険。狼人族への人族の差別や迫害も考えると、三つ目の案か。

「分かった。ここに連れて来よう。後は誰が迎えに行くか、だな?」

「ボクは王国で顔が割れている。賞金掛けられて手配もされているから、難しいな……」

「オレも、討伐軍がダンジョンに居る状態で外に出るのはちょっと……。赤狼人族も、目立つ風貌で王都ですぐにばれちゃいそうだけど、フードでも被って行ってもらうか?」

「うーん。それも……万一、見つかった時に対処できる人たちじゃないと」

「あ、そうだ! Sランク冒険者パーティに、やってもらおう!」

「ええっ?! あの人たちに?」

 Sランク冒険者パーティはオレの討伐に来た時、セーフエリアで寝ているところを襲って、隷属の首輪を付ちゃったんだよな。あれから鬼たちの村里で、子供たちの剣と魔法の指導などをやらせている。最近は、すっかり村里に馴染んでいると聞いていた。

「でも、ディーン。隷属の首輪は、奴隷を遠距離で従わせることはできないよ?」

「パーティに依頼という形で、報酬を用意して頼むのは、無理かな?」

「それは、ちょっと虫が良過ぎるような……。そのまま逃げてしまうんじゃない? そうなると、こっちの情報を王国に渡すことにもなる」

「そうならないように、考えてみる」


 モニター画面では、24時間経過したため再ポップしたモンスターたちが、傭兵団が抜けた討伐軍と戦っているのが映っていた。


 うん。まずは、Sランク冒険者たちと顔を合わせて、話してみよう。
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