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第三章 ウチのダンジョンに討伐軍がやって来た!
第三話 盗賊団の頭の転職
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俺はカムランにあるこのダンジョンに捕らえられてから、3か月近く経った。
その前は傭兵崩れの盗賊団の頭、だった。あの日の夜、ハーフエルフ村から若い娘をさらって、奴隷商人に売り飛ばす前に嵐に遭い、雨宿りするためにこのダンジョンに入ったのが、運のつきだった。
罠にかけられ、俺や手下どもは、隷属の首輪をはめられた。そしてここで、ゴブリンやオークにこき使われる奴隷にまで、貶められてしまったんだ。
ハーフエルフの娘達には、汚いものを見るかのような眼差しを向けられるし……。
ちくしょうめっ!
その後、Sランク冒険者パーティも捕らえられて俺達と同じように、奴隷に落とされた。これで最下位の奴隷から先輩奴隷に格上げだ、と思った。肥溜めを畑にまく仕事を、指導という名のもとに後から来た奴に押し付けられる、と。
ところが実際はどうだ。あいつらは、Sランクだからと鬼のガキどもの教育係や、回復スキルがあるからと産婆をやって村里でちやほやされているじゃねぇか。
ちくしょう、ちくしょうっ。こんなダンジョン、潰されろっ!!
そう思っていたら、本当に国や教団が手を組んで、ここに攻めて来るという。
冗談じゃねえ!! 国に掴まったら、俺達盗賊は全員縛り首だ。その時が来たら、混乱に乗じて逃げるしかねぇ。
――だけど、どうやって?
「ほい、飯だど――!」
オークの里長が風呂敷を担いで、ハーフエルフの嫁と一緒に畑にやって来た。
「うひょ――! ありがとさんです――!!」
手下どもがペコペコと頭を下げて、昼飯を受け取った。
こんなクソな所では、三度の飯以外楽しみもないからな。こいつらが卑屈になって、弁当を受け取るのも仕方がないさ。
小川で手を洗い、首にかけた手拭いで拭く。
今日の弁当は、お稲荷さんに金平ごぼう、牛筋大根、カブの漬物だった。
「なんでぇ、こりゃあ、全部茶色じゃねぇか!! 彩りっちゅうもんを考えないのか?!」
ハーフエルフの嫁がビクッとして、オークの里長の陰に隠れる。
「ウチの嫁っちの飯は、このダンジョン一上手いべさっ。気に入らなきゃ、返せ。おらが食うべ」
「「「んだ、んだ!」」」
弁当を取られると思った手下どもが、慌てて手掴みでお稲荷さんや大根を取ると、ガツガツと食べだした。
「んめぇ――! 茶色くてうんめぇです――!!」
「こら、俺の分が無くなっちまうだろうが」
ニ、三人蹴り飛ばして割り込み、俺の分を確保する。
……こっちが死に物狂いで、戦いながら昼飯を食っているっていうのによ。
木陰に座って、オークたちがハーフエルフの嫁とイチャつきながら、弁当を食べている。
なにが、「はい、あーん」だ? 豚鬼のくせに! リア充は逝ってよし!!
くっそ、くっそ。
「――おい、アンタ」
ブチブチと雑草をむしっていると、後ろから声を掛けられた。振り向くと、頬に斜めの傷跡がある暗殺者の男が立っていた。
「Sランク冒険者さまが、俺になんのようだ?」
「アンタはこんなところで燻っているような玉じゃねぇ」
「なんでぇ、いきなり」
今まで話したこともないのにと、いぶかしく思いつつ、おだてられるのはまんざらでもない。
俺が鬱憤を溜めているのを見透かしたように、上手い話を持ち掛けて来た。
「アンタ達の力を発揮できる場所があるんだ。一花咲かせてみないか」
ふーん……。まあ、豚鬼にこき使われるよりは、この男の話に乗ってもいいかも知れないな。
手下も一緒に男について行くことにした。
「ここは――?」
連れて来られたのは、ダンジョンの迷宮エリアだった。
「ダンジョンマスターが、11階層から17階層までを迷宮エリアに模様替えしたんだ」
「ほう、それで……?」
「迷宮に配置するのは、ミノタウルスだとおっしゃるんだが、ミノさんはDPが高いらしくて」
「ミノさん……?」
暗殺者は重々しくうなずき、俺達に衣装を配った。
「その衣装を着てアンタ達には『ミノタウルス』として戦って欲しい。影武者だと思ってくれ」
……影武者って、それ使い方が間違ってねぇか? そう思ったが、鋭い眼光で暗殺者ににらまれ、俺達はうながされるまま、渡された衣装に着替えた。
手下どもが白黒のブチや茶色の牛の着ぐるみを着て、間抜けズラで立っている絵面がシュールだ。オレも同じだが、黒色の着ぐるみなのが、まだましな気がする。
「うむ、なかなか似合っている。あと、これを」
さらに『蘇りのミサンガ』を支給された。
「よし、最後に大事なことを言っておく。アンタ達のドロップアイテムは、白黒ブチが牛乳、茶色がコーヒー牛乳、黒色がブラックコーヒーだ! 以上、各自健闘を祈る!!」
――俺達が倒された時に出て来る、ドロップアイテム情報って……それいらねぇぞ……。
その前は傭兵崩れの盗賊団の頭、だった。あの日の夜、ハーフエルフ村から若い娘をさらって、奴隷商人に売り飛ばす前に嵐に遭い、雨宿りするためにこのダンジョンに入ったのが、運のつきだった。
罠にかけられ、俺や手下どもは、隷属の首輪をはめられた。そしてここで、ゴブリンやオークにこき使われる奴隷にまで、貶められてしまったんだ。
ハーフエルフの娘達には、汚いものを見るかのような眼差しを向けられるし……。
ちくしょうめっ!
その後、Sランク冒険者パーティも捕らえられて俺達と同じように、奴隷に落とされた。これで最下位の奴隷から先輩奴隷に格上げだ、と思った。肥溜めを畑にまく仕事を、指導という名のもとに後から来た奴に押し付けられる、と。
ところが実際はどうだ。あいつらは、Sランクだからと鬼のガキどもの教育係や、回復スキルがあるからと産婆をやって村里でちやほやされているじゃねぇか。
ちくしょう、ちくしょうっ。こんなダンジョン、潰されろっ!!
そう思っていたら、本当に国や教団が手を組んで、ここに攻めて来るという。
冗談じゃねえ!! 国に掴まったら、俺達盗賊は全員縛り首だ。その時が来たら、混乱に乗じて逃げるしかねぇ。
――だけど、どうやって?
「ほい、飯だど――!」
オークの里長が風呂敷を担いで、ハーフエルフの嫁と一緒に畑にやって来た。
「うひょ――! ありがとさんです――!!」
手下どもがペコペコと頭を下げて、昼飯を受け取った。
こんなクソな所では、三度の飯以外楽しみもないからな。こいつらが卑屈になって、弁当を受け取るのも仕方がないさ。
小川で手を洗い、首にかけた手拭いで拭く。
今日の弁当は、お稲荷さんに金平ごぼう、牛筋大根、カブの漬物だった。
「なんでぇ、こりゃあ、全部茶色じゃねぇか!! 彩りっちゅうもんを考えないのか?!」
ハーフエルフの嫁がビクッとして、オークの里長の陰に隠れる。
「ウチの嫁っちの飯は、このダンジョン一上手いべさっ。気に入らなきゃ、返せ。おらが食うべ」
「「「んだ、んだ!」」」
弁当を取られると思った手下どもが、慌てて手掴みでお稲荷さんや大根を取ると、ガツガツと食べだした。
「んめぇ――! 茶色くてうんめぇです――!!」
「こら、俺の分が無くなっちまうだろうが」
ニ、三人蹴り飛ばして割り込み、俺の分を確保する。
……こっちが死に物狂いで、戦いながら昼飯を食っているっていうのによ。
木陰に座って、オークたちがハーフエルフの嫁とイチャつきながら、弁当を食べている。
なにが、「はい、あーん」だ? 豚鬼のくせに! リア充は逝ってよし!!
くっそ、くっそ。
「――おい、アンタ」
ブチブチと雑草をむしっていると、後ろから声を掛けられた。振り向くと、頬に斜めの傷跡がある暗殺者の男が立っていた。
「Sランク冒険者さまが、俺になんのようだ?」
「アンタはこんなところで燻っているような玉じゃねぇ」
「なんでぇ、いきなり」
今まで話したこともないのにと、いぶかしく思いつつ、おだてられるのはまんざらでもない。
俺が鬱憤を溜めているのを見透かしたように、上手い話を持ち掛けて来た。
「アンタ達の力を発揮できる場所があるんだ。一花咲かせてみないか」
ふーん……。まあ、豚鬼にこき使われるよりは、この男の話に乗ってもいいかも知れないな。
手下も一緒に男について行くことにした。
「ここは――?」
連れて来られたのは、ダンジョンの迷宮エリアだった。
「ダンジョンマスターが、11階層から17階層までを迷宮エリアに模様替えしたんだ」
「ほう、それで……?」
「迷宮に配置するのは、ミノタウルスだとおっしゃるんだが、ミノさんはDPが高いらしくて」
「ミノさん……?」
暗殺者は重々しくうなずき、俺達に衣装を配った。
「その衣装を着てアンタ達には『ミノタウルス』として戦って欲しい。影武者だと思ってくれ」
……影武者って、それ使い方が間違ってねぇか? そう思ったが、鋭い眼光で暗殺者ににらまれ、俺達はうながされるまま、渡された衣装に着替えた。
手下どもが白黒のブチや茶色の牛の着ぐるみを着て、間抜けズラで立っている絵面がシュールだ。オレも同じだが、黒色の着ぐるみなのが、まだましな気がする。
「うむ、なかなか似合っている。あと、これを」
さらに『蘇りのミサンガ』を支給された。
「よし、最後に大事なことを言っておく。アンタ達のドロップアイテムは、白黒ブチが牛乳、茶色がコーヒー牛乳、黒色がブラックコーヒーだ! 以上、各自健闘を祈る!!」
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