上 下
13 / 48
第二章 ウチのダンジョンに冒険者パーティがやって来た!

第二話 ダンジョン運営会議

しおりを挟む
「これより記念すべき第一回、カムラン・ダンジョン運営会議を行います」

 アーサーが会議の開始を告げると、拍手が巻き起こった。

 パチ、パチ。

 ――手を叩いているのは、オレとアーサーの二名だけだけどな。

「進行役と書記は、ボクが務めさせていただきます」

「よろしくお願いします」

「今回の議題は、

一、村里の鬼たちのレベル向上による、ダンジョンモンスターの配置変更について
二、宝箱のアイテムの改善について

……の二つです。ぼったくりダンジョンと評判になることを防ぎ、冒険者ギルドから調査隊第二弾が派遣されることを鑑み、それに間に合うよう手配をしていきたいと思います」

「あのさぁ」

「発言するときは、挙手をお願いいたします」

 オレはしぶしぶ手を上げる。

「はい」

「ディーン、どうぞ」

「二人しかいないんだから、挙手なしで普通にしゃべろうよ……」

「――うん、わかった」


 1LDKのリビングで、オレとアーサーは並んで座り、テーブルの上のタブレットに、ダンジョンマップを表示させた。


「上層の洞窟エリアのモンスター配置を、一新するしかないな」

 村里の鬼たちは、新たな装備とアーサーの訓練しごきによって、強くなった。Cランク冒険者パーティ相手に先制を取れたとはいえ、ゴブリン達が一回の攻撃でパーティを殲滅させるまでになっていたとは、オレもびっくりだった。

「まあ、あのボス戦は麻痺薬やクロスボウ対策されたら、また結果は違ったよね」

 確かに。相手もゴブリンと侮っていただろうし。二回目は、ああうまくはいかないだろうな。

「それでディーンは、新しいモンスターを召喚するDPダンジョンポイント、あるの?」

「うーん。ここんとこ、村里で鬼どもとハーフエルフの娘達との結婚ラッシュで、ご祝儀が嵩んでDPもキツキツなんだ」

「新婚さん達の新居に、台所用品を贈ったり、風呂場に魔道具のシャワー取り付けたりしてあげて、みんなも喜んでたよね」

 喜んでもらったのは、良かったけどな。

「DPがあまり掛からないモンスターというと……」

 タブレットの画面を、召喚可能なモンスターに切り替える。

「うわぁぁああああっ!」

「ちょ、ディーン! 驚かさないでよっ」

 画面に映ったのは、人族の死体に悪霊が取りついた食屍鬼グールやゾンビだった。腐乱した屍肉、ずるりと落ちた眼球、あばら骨が露出した胸……。

「ダメ、オレほんとこういうの、ダメだから……」

「確かに死体は墓地で手に入るし、ここに来て命を落とした冒険者になってもらってもいいし、安上がりだよね……あー、これ結構腐っててもなんとかなるんだぁ」

 だから、止めろってば。ホラーとか苦手なんだよっ。

「じゃあ、ミイラやスケルトンもダメなの?」

 コクコクと頷いた。

吸血鬼ヴァンパイアは?」

 見た目がこわくなければ、アンデットでも平気だけどさ。

「うーん。吸血鬼ヴァンパイアは、すごく高いねぇ」

「むー。なんかないのかなぁ」

 タブレットをタップして、探す。

「あ、ゴーレムは? 土とか石の材料なら、ダンジョンの中にいっぱいあるし」

「それだ! ゴーレムなら食料調達の心配もないっ」

 ぱしっ。思わずアーサーとハイタッチしてしまった。

「じゃあ、あと決めるのは宝箱の中身だけだね!」

「……それだけど、ボクがリストを作ったから見てよ」

 渡されたリストは、武器や防具、探索に使うアイテムなどの実用的なものだった。

「奇をてらわないで、普通に冒険者が欲しいと思うものにした方がいいよ。ディーンが欲しい物じゃなくてさ」

 まぁ、そうなんだけど。なんか、つまんないなぁ……。

「二階層から、ポイズンスライムが出て来るから、セーフエリアに薬草の他、毒消草も植えよう」


 モンスター配置もお宝の中身も、アーサーがほとんど考えて、決めてくれた。これで真っ当なダンジョンに成れたな。よかった、よかった。
 
 ――けどさ。

「なあ、アーサー。なんでそんなに、ここのダンジョンの守備力上げたり、冒険者ギルドの調査に対応しようとしたり、頑張ってくれるわけ?」

 俺の言葉にハッとして、大きな黒い瞳がいっそう見開かれ、うるんだ。そして、膝の上でぎゅっと手を握りしめ、微かに震えている。

 ここはオレのダンジョンなのに、アーサーに色々仕切られるのが面白くなくて。いや、アーサーの言っていることが正しいのは分かっているけど。つい、嫌味っぽくなってしまった。

 それに、まだ 聖剣エクスカリバーのことを聞いてない。今まで、アーサーから話してくれるんじゃないかって、待ってた気持ちもあったんだよ。

「お前が持ってるその聖剣エクスカリバーを、国とフレイア教団が必死で探しているらしいな。いずれここにもやって来るんじゃないのか?」

 あー、もっと別の言い方をすればよかった。これじゃまるで、オレがアーサーに、迷惑だから出て行けって、思ってるみたいじゃん……。

 そんなことないのに。アーサーを邪魔に思ったり、迷惑だなんて、一度だって考えたことなんかないのに。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

邪悪で凶悪な魔物ですが聖女です。~神の使命を忘れて仲間と気ままなスローライフを送っていたら、気付けば魔王とか呼ばれていた訳でして~

日奈 うさぎ
ファンタジー
 とある山奥にて魔物のお友達と共にスローライフを始めた心優しき子猫獣人のネルル。実は彼女には誰にも言えない秘密があった。  それは彼女が元人間で、魔物の宿敵である聖女だったということ。  聖女、それは人類を産んだ至高神オーヴェルの力を授かりし者。本来なら神の使命を全うして神々の仲間になるはずだった……のだが。  色々あって転生した結果、なぜか人類の敵である魔物に生まれ変わってしまった訳でして。  それでもネルルは諦めなかった。人間の敵になろうとも優しい心を忘れず、一生懸命生きようと努力し続けたのだ。  そうして苦難を乗り越え、分かり合える友達と出会い、その末に山奥の元聖地という自分たちの理想郷を手に入れたのである。  しかしそんな彼女たちの平穏は意図しない客人によって振り回されることに。  人間や魔物の間で噂が広まり始め、気付けば尾ひれ背びれが付いて収集が付かなくなっていって――  元聖女だとバレたくない。でもお友達は一杯欲しい!  だけど来るのは奇人変人ついでに亜人に怖い魔物たち!  その中でネルルたちは理想のスローライフを維持し続けられるのだろうか!?  邪悪で凶悪な猫聖女の新たなる人生譚が今ここに始まるにゃーん!

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

悪堕ち王子の快楽ダンジョン、女冒険者を帰さない ~エロゲの悪役に転生した俺、ひっそりスローライフを送りたいだけなのに美少女たちが集まってくる

タイフーンの目
ファンタジー
同人18禁ゲーム【悪堕ち王子の快楽ダンジョン】に転生した主人公、もと日本人のアルト・レイモンド。 〝王家の権力争いで命を狙われた王子アルトは、逃亡生活のすえ、瀕死の状態でとあるダンジョンに転がり込んだ。 邪悪な瘴気に魅入られ、魔族に変貌し、ダンジョンマスターとして君臨。モンスターを強化したり罠を開発して、探索に来た女冒険者たちを非道な手でやり込めるようになる――〟 というのが本来のゲームシナリオ。 しかし、その通りに進めるとアルトには破滅が待っている。 「それくらいならひっそりと暮らしたい!」 人畜無害なダンジョンを装い、自分が快適に過ごすためにあちこち改良するアルト。《クリエイト》スキルと生来の凝り性で、ダンジョンをいじるのに没頭する。 見た目の恐ろしいモンスター娘たちも、《キャラクターメイク》の能力で美少女に。 そうしているうち、やがて女冒険者たちが攻略にやって来た。 アルトは彼なりの『撃退方法』で対処するが――そのあまりの気持ち良さに女冒険者たちが入り浸るようになって……!? 強気な剣士、清楚なシスター、狡猾な盗賊、お忍びでやってきた隣国の皇女まで……信じて送り出した美女・美少女たちが、そのダンジョンから帰ってこない!!!! ※他サイトにも掲載中です。 ※○○○シーンはありません。 ※鬱展開や、女の子が酷い目に遭うシーンはありません。 ※「ダンジョンに夢中になった女冒険者たちが恋人や婚約者よりもこちらを優先させちゃう」的な意味ではちょっとNTR?(BSS?)あり。

知識ゼロでダンジョン作ったら、クソ認定された件

一樹
ファンタジー
現代日本にダンジョンが現れて20年。 その数は緩やかに伸びていた。 管理をするのは、ランダムに選ばれた老若男女。 どこでもそうだが、ダンジョンの人気にもピンキリがあり、不人気ながらそれでも維持管理を続けるダンジョンマスターも少なくない。 この話はとあるネット掲示板に愚痴を書き込んだ、新人学生ダンジョンマスターと、他のダンジョンマスター達のなんてことない交流の物語である。

お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

婚約破棄された公爵令嬢はダンジョンマスターを兼任する。

アリス
恋愛
「シャルティエ・エンハイム、貴様との婚約を破棄する!」 そんなお粗末で雑な大声で玉座の間は静まり返った。 はあ? 「シャルティエ!貴様は私が真に愛するルナシー・エンリケ男爵令嬢を不当に痛めつけ、公衆の面前で罵倒した!」 …。 しかも、身に覚えのない罪状がつらつらと出てくる。出てくる。 …証拠もないのに? しかも、その“証人”って…あなた様の目の前たんこ──取り巻きじゃない? 「よって、私エリック・フォン・バスカ第3王子の名の下に貴様を国外追放の刑に処す!」 あ゛!? それは越権行為だろ!このバカ王子(笑)!! “王太子”でもない第3位でしかない私の(元)婚約者様(笑)…玉座に座る陛下の前で堂々としている。 …すげぇ。 あ、この発言で分かると思うけど…私、シャルティエ・エンハイム公爵令嬢は前世の記憶持ちです。 所謂転生ってやつ。 ここ、乙女ゲーム“暁の恋を君に”の舞台で、エールグリーンって架空のファンタジー世界。 舞台は王立学園、高等部の3年間で攻略対象の貴族子息(5人)との個別ルートか友情エンド、ハーレムエンドの3つ。 …因みに私は腐女子なので、断然友情エンド押しだ。 「──エリックよ、これは何の茶番だ?」 厳かな声が玉座の間に響く。 決して大声ではないのに聴く者に畏怖を抱かせる… 「──!?ち、父上…ですから私は」 「くどい──お前はこの場を持って廃嫡だ。そんなにその男爵令嬢とやらと結婚したいのなら認めてやる──但し、城の地下牢で、な。」 「!?な、どうしてですか!?私は父上の息子ですよ!ルナシーは王子妃──」 「黙れ。──衛兵、即刻この二人を牢に入れろ。目障りだ」 一言も発することなく(元)エリック王子(笑)は件の男爵令嬢と地下牢へと連行された。 「…はあ。済まぬな、シャルティエ…あれの矯正を間違えたようだ」 威厳ある顔立ちが疲れからか、心なしか、やつれているように見える…。 「いえ…心中お察し致しますわ、陛下。」 男爵令嬢は一言もしゃべらせてもらえず退場した。 …まあ、建国記念日パーティーがとんだ茶番で終わったのだから…シャルティエはダンジョンへと戻った。 ?ダンジョン…ああ、私、シャルティエ・エンハイムはダンジョンマスターをしているの…領地で。 ダンジョンマスターを兼任する公爵令嬢の内政ストーリー…かもしれない。

大迷宮都市大陸帝国

LAアサルト
ファンタジー
 時空間滞留領域『シナプス』では、それぞれの『ダンジョンマスター』が各自の異世界『ダンジョンワールド』を運営し『探索者』達を迎え撃つ。  そんなダンジョンワールドの一つ『ハウス・オブ・オーバーズ・ザ・ダンジョン』のダンジョンマスター『シリウス・ブラック』は、今日も自分のダンジョンワールドの出来栄えに笑みを浮かべつつ「我が領域は難攻不落なり」と高を括っていたのだが……。

処理中です...