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12"マッサージへ行こう!

55.全身オイル

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(哀香視点)

「え ……?」

 思わず戸惑いの声を上げた。私は全裸でマッサージ台の上でうつ伏せになっていて、お尻は丸出し。さっきまで履いていた紙パンツはいつの間にか脱がされていた。

「大丈夫、大丈夫」

 やさしく男性の声がした。

「あ……あの……」

「綾瀬さん、お尻の形も綺麗ですね」

 戸惑う私の声を無視して、彼は臀部にオイルを塗り込み始めた。滑りとした液体の感触。ひやりとして思わずキュッとなる。

「え……や、ちょっと……」

 困惑の声を上げるけれど、彼は全く動じず生のお尻を撫で回し続けた。

「大丈夫、大丈夫だよ」

 私の困惑は無視された。

 あれ?  私……生のお尻触られているよね?  見られてるよね? マッサージでは普通のことなの? 恥ずかしい行為だよね?

 アロマの匂いとだんだんとじんじんとするオイルの熱が私の現実認識を歪めていた。

 全裸でうつ伏せにされて男性に臀部を撫で回されている、という異常な状況。もしかしたら逆に正常かもしれない。逆に。もしかしたらここはあべこべの世界。

「いや、あの?」

「大丈夫、大丈夫……」

 彼は壊れたおもちゃみたいに同じ言葉を繰り返す。私が間違っているとでも言いたげだった。

 ──あれぇ?

 もしかしたら彼が大丈夫って言っているし、大丈夫かもしれない。抵抗しないのも変だと思っていたけれど、間違っているのは私の方かも。

「本当に大丈夫なんですか……?」

「うん。大丈夫、大丈夫だから」

 ──あ、そうなんだぁ。

 安心した私はギュッと閉めていたお尻から力を抜いた。ぷるんと肉が弾んだ気がした。

 すると彼は、抵抗が薄くなった私に気をよくしたのか、そのまま尻たぶにオイルを塗り込むために割れ目に指を這わせて、ゆっくりと中へと侵入させてきた。

 彼の手が私のお尻の肉にサンドされて、スライドするように前後に動かされる。

 お尻の穴の中にさえもオイルが侵入してくるように、ぬりぬりと手が上下する。割れ目の中をオイルで洗浄されている気分。

 そして、ズボォ!

「ん……あっ!」

 突然のことに、思わず声が漏れてしまった。

 マッサージ師の男性は私のお尻の穴の中に指を突っ込んできたのだ。

「あ、あ、そんなとこまで……!?」

「大丈夫、大丈夫だからね……」

 彼の指が私のお尻の穴をぬぽぬぽと出入りして、穴の淵に塗り込むようにオイルが塗られる。

 ヌルヌルのオイルによって彼の指はあっさりと私の穴と外を行ったり来たりした。感じたことのないむず痒さと、他人にお尻の穴を弄られているという異常事態で身が震えた。ぎゅっとシーツを掴んで後ろを伺う。

「あの……恥ずかしいです……」

「大丈夫、大丈夫。大丈夫だから」

 彼は何度も同じことを繰り返すばかり。

「あ、あの、マッサージってこんなこともするんですか?」

「うん。そうだよ。当たり前だよ。大丈夫」

 そんなわけなかった。

 いくらなんでもお尻の穴をいじられるなんてある訳がない。私は確信した。やっぱり、このお店はマッサージにかこつけて女性の身体を触っている悪どいお店なのだ。断るのが苦手で強く言えない女の子に目星をつけてこんなことに及んでいるのだろう。女の敵。

 私はまんまと罠にかかったのだ。

 でも罠にかかったことに私は興奮していた。だって私は変態だから……。

「あ、そうなんですね……。私、初めてで、よく分からなくて。恥ずかしいですけど、我慢します……」

 お尻の穴をいじられながら、私は世間知らずの女を演じてこの行為を正当化した。

 積極的に拒否しない私の態度に漬け込んだ男性は、気をよくしたのかお尻の中を好き勝手ににいじくり回した。

「ん……くっ」

「我慢できてえらいねぇ。ここをほぐすとお通じが良くなったり便秘が治ったりするんだよ。痛かったら言ってね」

 シーツを掴んで耐えていると、私の反応を楽しむようにクリクリと指を動かされてしまう。

「あ、くっ……。痛くはないですけど……あまりにも恥ずかしいです……。あの……汚くないんですか?」

「大丈夫、後で拭くから」

 クイクイと指が高速で振動している。私はむず痒さと、おそらくは屈辱を必死にこらえていた。

 やがて、お尻の穴の中までオイルの効能によってポカポカしてきた頃。満足した彼は穴から指を引き抜いた。

「じゃあ次は仰向けになって」

 ささやくような声が耳に届く。期待するような鼻息の荒さを含んでいる気がした。

 私は言われるがままに、ベッドの上で仰向けになった。

「あっ……」

 ぷるんと胸が上下に震えた。

 乳首も恥部も何もかも晒していることに今さら気づいたかのような声を漏らした。

 でも、もう遅い。私の乳房はトップからアンダーまで丸々、彼に見られてしまっている。

 恥ずかしい素振りをして胸を隠した。そういば恥部も丸見えだった。自分が全裸だったことを思い出したように股を隠したけれど、すぐに手を退けられた。

「大丈夫、大丈夫……マッサージでは普通のことだから」

 彼はワンパターンの同じ言葉を繰り返しながら、私の手を優しく振り解いた。乳房を持ち上げられて、下乳から脇にかけてヌルヌルにされていく。

「綾瀬さん、胸大きいですね」

 彼の手によって胸が弾まされる。ブルンブルンと暴れる乳房にオイルのピチャピチャとした水音が混ざる。乳首にもコリコリとオイルまみれにされていく。弾ける乳房から時折オイルが飛び跳ねた。

 ぎゅっと乳首が摘まれた。

「あっ……」

「大丈夫ですよ。しこりがないか見てるだけですから。意外と他人に確認してもらわないと気づかないものなんです。乳がんの予防ですよ。母乳も出やすくなりますからね」

 彼はもっともらしい(?)理由を並べ立てて行為を正当化した。私は何も答えられないまま、ただされるがままになっていた。

 胸の肉が寄せられブルンと落とされる。入念にオイルを塗り込むように胸の形がぐにょぐにょと変えられた。

 彼の手はどこまでも忍び寄ってきた。

 足の付け根のリンパをほぐすように、太ももからふくらはぎまで丹念に揉みこまれる。

「綾瀬さん、足を開いて」

「……はぁい」

 まるで催眠術にかかったように操られるように従順に行動した。

 いつの間にか私はだらしなくガニ股になっていて、彼に大事なところを晒していた。足の付け根と恥ずかしい部分の境界線が執拗にマッサージされる。足を抱えられてオイルを塗り込まれた。

 思わず剥き出しの股を手で隠そうとしたけれど、彼に手をはねられた。

「……あっ」

「ごめんねぇ恥ずかしいよねぇ。でもパンツ履いてるとやりにくいから我慢してねぇ。リンパの流れをよくするマッサージだから大丈夫だよ。全然大丈夫。恥ずかしいなら目を閉じてもいいんだよ?」

 ──あっそっかぁ。目を閉じたら見られてることが見えないから恥ずかしくないもんね。

 バカになった私は両手で目を覆った。指の隙間からこっそり様子を伺うと、男性のにやけながら私の股を凝視していた。

 そして……とうとう彼は私の割れ目に指を突き立てた。ヌルヌルとしたオイルの助けを借りて、彼の太い指が私の中に侵入してくる。

 ──あぁ……入ってきちゃった。

 他人事のように思った。

「んっ……!」

 思わずビクンッと身体が跳ね上がる。クリを直接刺激された。

「大丈夫、大丈夫、大丈夫だから」

 彼が耳元で囁く。

 そのまま彼は私の中を搔きまわした。

「あっ、あ……だめっ……♡」

 思わず声が出てしまう。でも彼は止めてくれなくて、むしろどんどん早くなっていく。

 私は必死に声を押し殺したけれど、ヌチャッヌチャッといやらしい音が部屋に響き渡っていた。

 オイルの音なのだろうか? それとも私の内部から分泌された液の音なのだろうか?

 おそらくは両方が混ざり合った音なのだろう。

 やがて彼の指は二本に増えていた。

 クチュクチュ。

 ──あぁ……ダメなのにぃ!

 心の中で叫んだけれど、ビクビクと痙攣するように腰が跳ね上がってしまう。その度に彼の指がより深くまで入ってきてしまう。男性が私の膣をいじくり回して、太い指が私の中を掻き回す。

 悠莉の細い指とは違う指の感触。

 ──ごめん。悠莉……。

 なぜか謝ってしまった。

 そしてついにその時が来た。

 彼の指が私の一番感じるところをクリクリと弄った時だった。

「あん♡ あんあんんん!! あああああああああああああ!!」



 声量なんて気にせず叫んでしまった。

 ゾクゾクとした快感に支配される。

 ──あぁ……私、男の人にイかされちゃったんだ……悠莉以外にされちゃった。

「あぁ……♡」

 今までで一番強い刺激が全身を駆け巡り、頭が真っ白になった。目の前がチカチカとして意識が飛びそうになるほどの衝撃。

 全身が弛緩してぐったりとして呆けた。

「ふぁ?」

 気づけば私の胸が揉まれていた。両方の乳首が摘ままれて、くりくりと弄ばれて、くいくいと引っ張られていた。それと同時に恥部にも刺激が加えられて、太ももがなでなでされている。

「……えっ?」

 私は驚いた。手の数が合わないと思って薄目を開けると、胸を揉みしだく人物に受付の男性が加わっていた。

 いつのまにか2人がかりで全身を撫で回されている。力強い男性の手の感触。

「店長、この子可愛いですね。おっぱい柔らけ~」

「だろ? こんな子の身体を自由に触れるなんて滅多にないぞ」

 遥か遠くから声が聞こえた気がした。でもそれは吐息がかかりそうなほど近くから発せられたものだった。

 若い男の人は執拗に胸を揉んで、乳首を引っ張ったりしていじくり回す。

 年配の男性は私の膣を攻め立ててながら、スリスリと太ももを撫でる。

「俺も尻触りたいっス」

 そんな声が聞こえた。

 ごろんと裏返されて、今度は受付の男性にお尻を撫で回され、お尻の穴を弄られる。もう1人の男性は私の脇に執拗にオイルを塗り込んだ。

 しばらくすると、また裏返されて、かわりばんこに膣内を弄られ乳房を揉まれた。

 一体私はどれほどの時間、身体を思うままに触られていたのだろう?

 あまりにも現実離れした事に頭がぐにゃぐにゃと歪んだ。

 とんでもないことをされている。

 全裸で2人の男性にオイルを塗りたくられて、全身を撫で回されている。その手つきはいやらしい。

 なぶられている。

 まさに、『男女男』こんな状態。2人の男性が私の体を弄っている。力でサンドされて身動きが取れない。卑猥で屈辱的な漢字のような感じ。

「ああん!!」

 なのに、彼らのマッサージは的確だった。

 リンパの周りを彼らの手が往復するうちに身体がポカポカしてきて、いつの間にか私は汗だくになっていた。全身から汗が吹き出してビチャビチャになっていたけれど、ベタベタしていない気持ちのいい汗が吹き出していた。

 ──汗だくの姿を見られるの恥ずかしい……。

 全裸の私はそう思っていた。

 胸が揺らされるたび汗が飛び散る。乳首の先端と恥部もポカポカしてあったかい。多幸感に包まれた。

 もう私の瞼は重くて目が開けられなくなっていた。

 ──もういいや……。

 何もかも全ての事を暗闇に任せてしまおう……。自分の運命さえも。

「あん♡ あん♡ あん♡ ああああああああああ♡」

 何度目かの絶頂を迎えた時、私の意識は暗転した。


***


「綾瀬さん、そろそろ時間です。起きてください」

「あっ……ふぁ?」

 いつの間にか私は眠ってしまっていたらしい。

 男性の声でハッとして慌てて身体を起こした。

 私の身体にはバスタオルが巻かれていて、動いた拍子にずり落ちて乳房が顕になる。

「お疲れ様でした」

 そこには爽やかな笑顔を浮かべる男性が立っていた。

 彼の目が私の膨らみに向いた。

「……あの、見えてますよ」

「え?」

 そう言って私の乳房から遠慮がちに視線を外した。思わず、はだけたバスタオルを拾って胸を隠す。

「えっと……私……」

 私が困惑していると、彼は優しく微笑んだ。

「大丈夫ですよ。お疲れだったみたいですね。ぐっすり眠っていました。」

 彼は何事もなかったようにテキパキと後片付けを始めていた。まるで先ほどの出来事が存在しなかったと錯覚させるように。

 何もかも夢?

「そ、そうですか……」

 私は戸惑いながらも生返事をすることしかできなかった。

 それから狐につままれたような釈然としない気持ちで服を着た。

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」

 2人の男性が頭を下げて私を見送った。

 私はぼーっとした頭で帰路についた。

 全てが夢であったかのような朧げな記憶が残留していた。


***


 それから数日後……。

 私は再びあの店の前に立っていた。

 でも店の様相は変わっていて、『空きテナント』と書かれた張り紙が貼られていた。

「え……なんで?」

 外から見える綺麗に片づけられた店内を見て呆然とした。いくつもの段ボールが積まれていて、紙が散乱している。

 閑散とした空間は、あの出来事と共にすべてが嘘かのように消え去ってしまった。

 なのに全身に塗りたくられたあのヌルヌルとした液体の感触が今でも私の身体に染みついている。ゴツゴツとした2人の男性の手が私の身体を這い回った時間。身体中の穴という穴にオイルを練り込まれた感触。

 あれは、もしかして幻だったのだろうか?

「悠莉にも教えてあげたかったのに……」

 私はただ呆然として立ち尽くすしかなかった。




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