上 下
10 / 34

第十話 女子飲み会・後編

しおりを挟む
「おおう、油揚げというからなにかと思ったが、厚揚げじゃないか」

「福井じゃ、厚揚げイコール油揚げらしいですよ。お味噌汁に入ってるようなのは、薄揚げっていうんだそうです」

「へえ」

 さっそく、油揚げを食むらいあ。

「む! 確かに美味いな!」

「ですよね!」

 まりんも、白岳仙と油揚げを、ちびちびやる。

「おまたせしましたー! レバー、ぼんじり、黒龍です!」

「いただきまーす。うん、焼き鳥も美味しいわね」

 奏は、黒龍をきゅーっといく。

「おまたせしましたー! つくね、ねぎま、保津です!」

「きたきた! ……んー! 美味しー!」

 ご満悦なあくあ。

「いいなあ、みんなもう来て」

「すみませんね! おまたせしました! 油揚げとぬか漬けと鳴り瓢です!」

「まってました! ……ん! 美味しい!」

 ほくほく笑顔で、いただく里愛。

「ぬか漬け! その手があったか! すみません。わたしもぬか漬けと、黒龍のおかわりを」

「っしたー!」

「よく、そんなに飲めるな」

「わたし、強いのよ」

 呆れ顔のらいあに、笑顔で応える奏。

 飲み会なんて、久しぶりだから忘れてたが、強かったかなあ? と、おぼろげに思い出す。

 奏以外のメンバーは程々に抑え、談笑を楽しむ。

「おまたせしましたー! ぬか漬けと、黒龍です!」

「ありがとうございまーす。くぅ~っ、効くーっ!」

 (やれやれ、新人二人をいじってた割には、自分が一番呑兵衛じゃないか)と、呆れるらいあであった。


 ◆ ◆ ◆


「っしたー!」

 店主に頭を下げられ、店を去る五人。

「美味しかったわね~」

「ですよね! ほんと、気に入っちゃいました!」

「わたしも、贔屓にしよーっと」

 ほわほわと、酔いの残るトークを繰り広げる、里愛、まりん、奏。

「車とか、気をつけようね」

 心配で、皆……特に奏に、注意を促す里愛。

「はーい」

 上機嫌で応える奏。本当に大丈夫かなと、本気で心配になるのであった。


 ◆ ◆ ◆


 特にトラブルもなく、寮に戻ってきた一同。

「はーっ! 楽しかった! 明日は、何しよーかなーっと!」

 明日の計画を、あれこれ考えるあくあ。

「おい、そんなとこで寝たら、風邪引くぞ!」

 ソファですやすや休む奏を、揺するらいあ。

「すまん、誰か手伝ってくれ。ベッドまで運ぶ」

「じゃあ、私が」

 里愛と二人がかりで、搬送する。

「奈良先輩、あんな一面があるんだなあ」

 目を、白黒させるまりん。

「この世に、完璧超人なんていないさー。それよりまりん、明日どっかでかけない?」

「どっかって、どこに?」

「それを訊いてるんだけどな」

 流しでコップに水を汲み、飲み干すあくあ。

 ああ、こないだキッチンいじるなって言われたのに……と、止める間もなかった。まあ、流しだけなら大丈夫かな?

「ふーっ! お酒飲んだ後の水は、美味しいねえ!」

 コップを洗い、もとに戻す。

「まりんから希望がないなら、服でも見に行かない?」

「服かー。いいねー」

 せっかく入ったお給料。飲み以外でも、ちょっと贅沢に使いたい。あんな激務に耐えたんだものね!

「何の話?」

 横合いから、声が聞こえたので振り向くと、里愛が立っていた。

「あ、波部先輩。奈良先輩、大丈夫ですか?」

「うん。ちゃんと、お布団に入れてきた。らいあが、様子見てる。服がどうとか、聞こえたけど」

「明日、あくあちゃんと、服を見に行こうって話してまして」

 笑顔で答える。

「へー。私たちも、服、見に行こうかなあ。ねー、らいあー」

 再び、奏とらいあの相部屋に戻る里愛。

「じゃ、明日は二人で、ブティック行こう」

「だね」

 明日も五人で、という選択肢もなくはないが、二十歳と二十五歳では、似合う服の傾向が変わってくる。

 別々に行動した方が、いいだろうという判断。

 その後、一眠りして起きた奏は、らいあにお説教され、平身低頭モード。

 らいあも気が済んだので、五人で食卓を囲み、夕飯のエビフライ定食を美味しくいただく。

 やはり、ブティックは、新人コンビと先輩トリオ、別々に行こうという話になった。

 その後は入浴してさっぱりし、消灯時間まで、めいめいの趣味に、打ち込むのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

全ての悩みを解決した先に

夢破れる
SF
「もし59歳の自分が、30年前の自分に人生の答えを教えられるとしたら――」 成功者となった未来の自分が、悩める過去の自分を救うために時を超えて出会う、 新しい形の自分探しストーリー。

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

聖女戦士ピュアレディー

ピュア
大衆娯楽
近未来の日本! 汚染物質が突然変異でモンスター化し、人類に襲いかかる事件が多発していた。 そんな敵に立ち向かう為に開発されたピュアスーツ(スリングショット水着とほぼ同じ)を身にまとい、聖水(オシッコ)で戦う美女達がいた! その名を聖女戦士 ピュアレディー‼︎

処理中です...