上 下
26 / 49

第二十六話 六月六日(水) エレンちゃんと、例によってイチャイチャして、超幸せ!

しおりを挟む
「ねえ、ユー。今日、私のうちに遊びにこない?」

 昼休み、四人で固まってると、エレンちゃんが不意にそんなことを切り出す。

「え、でも……」

 ちらりと、ユシャンちゃんを見る。

「今更、あたしのこと、気にせんでいーぞー」

 手を、ひらひら振る彼女。ほっ。

「じゃあ、ユシャンはアタシと付き合ってくれよ! 今度買う服、選びたいんだ!」

 向こうは向こうで、カップル同士デートするみたい。ユシャンちゃんを取られちゃったようで切ないけど、元々、わたしが選んだことだもんね。


 ◆ ◆ ◆


「ただいまー」

「おじゃましまーす」

 不思議よね。なんで他所様のお家って、違う匂い・・がするんだろう。不思議!

「ジュース出すから、くつろいでて」

「あ、うん」

 カバンをソファの脇に置く。

「あ、そうだ。アメリちゃんは?」

「私の寝室。今連れてくるから」

 オレンジジュースをソファ前のテーブルに置くと、そのまま別室に向かう彼女。

 ややあって、可愛い毛玉ちゃんを抱っこしてきました。

「わあ! 結構大きくなった?」

「そうだね。すくすく育ってるよ」

 にぃにぃ鳴いてるアメリちゃんを、抱っこさせてもらう。

 温かい。ちっちゃな命が、ここにある。わたしも、いつかこの手に自分の赤ちゃんを抱いてみたかったけど。

 こちょこちょ。うふ、くすぐったそうにしてる。可愛いなあ。

「お世話、大変?」

「それなりに。まだ、ケージから出して育てるのは危ないかな」

「そっかー」

 もふもふ。わたしなんて、アメリちゃんもマオちゃんも、たまにもふるだけだから気楽なもんだけど、育てるの、大変だよね。

「あ、そうだ。渡そう渡そうと思ってて、タイミングがなくて」

 アメリちゃんをソファに置き、紙包みを手渡す。

「開けていい?」

「うん」

「……クッキー! 猫のもあるね。ありがとう!」

 えへへ。そんなに喜んでもらえると、照れるな。

「お皿に空けるから、一緒に食べよ」

「ええ!? エレンちゃんのために作ったのに」

「二人で食べたほうが、美味しいじゃない。ねっ?」

 ミステリアスな微笑み。ああ、これには勝てないのデス。

 かくして、クッキーとジュースを楽しむわたしたち。二人で、空いた手でアメリちゃんをもふもふ。

「はい、あ~ん」

 不意に、エレンちゃんが、クッキーを差し出してきました。これって……。

「あ~んだよ、ユー」

「あ、あ~ん……」

 ぱくっ。さく、さく。うう、照れくさい……。

「私にも~」

 もう、やけです!

「あ~ん……」

「……ん、美味しい~!」

 エレンちゃんは、こういう恥ずかしいムーブ、よく平気だなあ……。

「なんかさ、こうしてると」

「うん?」

「アメリ、私たちの赤ちゃんみたいだね」

 思わず、ジュースをむせる。「大丈夫!?」と、背中を擦ってくれる、エレンちゃん。

「けほ、びっくりさせないでよ~。こほ」

「ごめん。ここまで驚くとは思わなくて。でも、結婚したら、ペットを子供代わりに育てるっていいと思わない?」

「まあ、それには賛成かも」

 女同士で、赤ちゃん産めたらいいのにね。

「ねえ、ユー」

「なあに?」

「キス、しよっか」

 あぶな! 今、なにか口に含んでなくてよかった。

「キ、キキ……キ!?」

「だめ?」

 ミステリアスな微笑み。だからそれ、反則だってば……。

「だめ、じゃないけど……恥ずかしい……」

「アメリしか、見てないよ」

「じゃあ、軽く、なら。ほんとに軽く」

 こくりとうなずき、頬を押さえてくるエレンちゃん。

「目、つぶって」

 言われた通りにすると、ややあって、柔らかい感触が唇に触れた。どっひゃあ~! 心臓が爆発するぅ~!!

 アメリの前で、キスしちゃった……。直接キスも、オレンジの味。

 軽く、という約束なので、すぐに唇を離してくれました。

「どうだった?」

「柔らかかった……」

「私も。ユー、可愛かったよ」

 エレンちゃんから、私がどう見えてたのだろうと思うと、ボンッ! と顔が熱くなる。

「あう~……。恥ずかしいこと言わないでえ~」

「ふふ。照れてるユー、ほんと可愛い」

 くすくすと、笑う彼女。

 ああ、この笑顔、ほんと弱い。

「今度は、もっとすごいのしようね」

「すごいの……」

 顔が、アツアツです。

「それは今度のお楽しみにして、アメリと遊びましょ」

「あ、うん……」

 わたし、エレンちゃんにペース握られっぱなしだな。こういうの、受けって言うんだっけ……。

 今日もまた一つ、愛のメモリーを重ねたのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ようこそ、悲劇のヒロインへ

一宮 沙耶
大衆娯楽
女性にとっては普通の毎日のことでも、男性にとっては知らないことばかりかも。 そんな世界を覗いてみてください。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...