上 下
19 / 49

第十九話 五月二十日(火) さらにいちゃついて、幸せ!

しおりを挟む
「うん! すごくいいと思う!! 応援する!」

 レィナちゃんの恋心を純粋に応援したいのもあるし、傷つけてしまった、ユシャンちゃんの心を癒やしてあげたい。わたしには、もう、その役目はできないのだから。

「ほんとか! ユー、さっきはその、傷口えぐるようなこと言ってごめんな。ユーだって、辛いはずだもんな」

「ううん、わたしがユシャンちゃんを傷つけたのは、ほんとだもん。せめて、応援させて」

 こうして、ユ・レ同盟成立! 二人で、ユシャンちゃんを幸せにしよう!

 こんな感じで、レィナちゃんとはお別れ。あんまり遅くなると、危ないからね。

 あとは、お父さんたちとプリンを作って過ごすのでした。


 ◆ ◆ ◆


「なー、ユシャン……」

 翌朝。さっそく、ユシャンちゃんにアプローチをかける、レィナちゃん。

 二人で、何やら話しています。

「二人が気になるの?」

「え? うん、ちょっとね」

 わたしが、やたら熱心に眺めてるものだから、エレンちゃんが、ひょっこり話しかけてきました。

「へー……。レィナたち、上手くいくといいね」

 えあっ!? 遠目に見ただけで、わかっちゃうの!? すごいなあ、エレンちゃんは。

「ね。お二人さんの邪魔しても悪いし、今日、ユーのうち行っていい?」

 例の、ミステリアスな微笑み。それで頼まれたら、断れないんだよう……。断る理由もないし。

 というわけで、今日はエレンちゃんが遊びに来ます!


 ◆ ◆ ◆


「んふふ~……」

 エレンちゃんと、自室で過ごし、にまにま。ユシャンちゃんには申し訳ないけど、それはそれ、これはこれで許してね。

「ユー、ごきげんだね」

 両手で頬杖ついて、ミステリアスな笑みを浮かべる彼女。その笑顔に、メロメロです。

「こないだ、ほっぺた触ったじゃない?」

「うん」

「今度こそ、キスしてみる?」

 ほえええええええっ!? いや、無理無理! ただでさえドキドキだった心臓が、バクバクしちゃってるし!

「いや、あの。それはまだ、ちょーっと早いんじゃないかなーって……」

 汗、だらだら。

「私とじゃ、嫌?」

 ちょっと、拗ねるエレンちゃん。そんな顔も、可愛い。

「嫌じゃないけどぉ~……。恥ずかしい……」

 最後はもう、消え入りそうな声。

「誰が、見てるわけでもないじゃない」

 そうだけど~、そうだけどぉ~……!

「ね?」

 小麦を傾げて、ミステリアスに微笑む。ああ~! その微笑みに弱いのぉ~!

「軽く、なら……」

「うん。じゃあ、軽く」

 テーブルから身を乗り出し、目を閉じる彼女。あう~!

 ちゅっ。

 温かくて、柔らかい。そして、心臓がもうダメ。わたし、また転生しそう。

「もっと……どう?」

 名残惜しく唇を離すと、ミステリアスな笑みで、いたずらっぽく訪ねてくる。

「ごめん、今日はこれ以上無理! 恥ずか死にそう! 心臓やばいよ~!」

 我ながら、呼吸が荒い。

「そっか。私も、すごくドキドキしてるよ。今度は、もっとディープにやってみようね」

「ひゃ~……。これ以上のことしたら、わたし死んじゃう~!」

 泣き言を聞くと、「大げさだなあ」と、くすくす笑う。あうう~。その仕草も、可愛いです……。

「じゃあ、これはどう? あ~ん」

 そう言って、お父さんたちが作ったクッキーを差し出してくる。

「ふええ?」

「うふふ。戸惑ってるユー、かーわいい! はい、あ~ん」

 うう……。覚悟を決めて……さくっ。もぐもぐ……。

「美味しい?」

「緊張しすぎて、味がわからなくなっちゃった……」

「ふふ。ユーは、いちいち可愛いね」

 ああもう、顔から火を吹きそう!

「次は、私にもお願い。あ~ん」

 ひょお~! エレンちゃん、恥ずかしくないのぉ!?

「はい、あ~ん……」

 少し震える手で、エレンちゃんの口に、クッキーを運ぶ。

 さくっ。もぐもぐ。

「うん、美味しい。さすが、ユーのご両親の手作りだね」

「ああう~……。よく平常心でいられるね」

「平常心じゃないよ? あまり、表に出さないだけ」

 そう言って、ふふと、ミステリアスに微笑む。ああもう、その笑顔、腰が砕けちゃうのぉ!

 はー……。でも、幸せ。幸せで、幸せで、とても幸せで、どうにかなりそう!

 こんな感じでいちゃついてると、時間というのは、あっという間に過ぎていくもので。エレンちゃんの、帰宅時間となりました。

「今度は、泊まりに来たいな」

 もう! ダイタンさんっ!

「じゃあ、また明日」

 帰り際に、きゅっと握手。彼女のぬくもりを感じる。

 玄関から先の見送りは不要とのことで、ひとり帰る彼女。

 はあ、今日はほんとにドキドキしたー。

 ところがこの後、びっくり仰天なことが!
しおりを挟む

処理中です...