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第十七話 五月十九日(月) 女の魅力を認められて、幸せ!

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 どうしよう……。

 朝、ユシャンちゃんのおうちの、裏口前でうろうろ。

 ユシャンちゃんを振った直後に、あんなにいちゃついて……。さすがに気まずい。

 学校でも、普通に振る舞えるかなあ……?

「ユー?」

「うひゃあっ!?」

 がちゃりと裏口を開けて出てきたユシャンちゃんに、思わず変な声を上げてしまう。

「えー、そんなにびっくりするかあ? あー。昨日のこと、引きずってんのか」

「あ、うん。そんなところ……」

「ユーにまで引きずられると、辛いじゃんかよ。気分変えて、行こーぜ」

 そう言って、私の手を引く彼女。わたしにまで、か。明るく見えるけど、やっぱりユシャンちゃん、引きずってるんだね。ごめん。


 ◆ ◆ ◆


 お昼。給食を食べながら、ユシャンちゃんの様子をじーっと見る。

 一見平然としてるけど……、目があった! 慌ててそらす。

「ユー、様子変だよ?」

 エレンちゃんに心配されてしまった。振った大親友と、現カノジョ。やりにくいな……。

「なあ、マヌエル」

 最後にパンをお口に詰め込んでると、不意に話しかけてきたのは、あのユベール。

「……何?」

 パンを、牛乳で流し込んでごっくん。正直、わたしはあまりユベールと接点がない。強いていえば、妙に意地悪された、嫌な思い出ばかり。

「ちょっとさ、用あんだ。来いよ」

 顎を、くいと動かす彼。不躾だなあ。

「これ、片付けてからね」

 食器を片付けると、ユベールについていく。


 ◆ ◆ ◆


「で、用って何?」

 校舎の外れで、なにやらもじもじしてる彼。

「あの、さ。俺、お前が好きだ! 付き合ってくれ!」

 唐突な告白に、キョトン。

「ごめん、ユベールはない!」

 我に返って、即答!

「な……なんでだよ! せめて、理由を聞かせろよ!」

「理由も何も……。わたし、キミに嫌なことしかされた記憶ないもん」

 あちゃあ、という感じに、額に手を当てる彼。

「あれは、そのだな。お前の気を引きたくて……」

 うっわー、これが、小学生男子がやるので有名なムーブ? かーわいーい。でも……。

「だめなものはだーめ。もう、好きな子いるんだよね」

「!? 誰だよ!」

「んー? ヒミツー。言ったら、その子に意地悪するでしょ、キミのキャラだと」

 ふう、とため息。エレンちゃんを、巻き込むわけにはいかないからね。

「う、うう……」

 あらら、ユベール半べそ。

「ぜってー、俺のほうを振り向かす!」

「ほらほら、そういうとこだよ、ユベール。わたしね、キミのそういうとこ、ニガテなんだ」

 はっきり言い切ると、涙をポロポロ。あらら。

「そっか。わたしのこと、ホンキで好きだったんだね。でもね、ユベール。キミ、顔立ち悪くないけど、メンタルも……ううん、メンタルこそイケメンじゃなきゃ。わたしに、女としての魅力を感じてくれたことは、嬉しいし、お礼言うよ。ありがとう」

「ちくしょおおお……!」

 無念の声を上げる彼。でも、半端な情けは彼のためにならないかな。

「ごめんね。そろそろ掃除始まるだろうから、行かなきゃ。落ち着いたら、戻ってきてね」

 そう言い残し、教室へ戻るのでした。


 ◆ ◆ ◆


「ユベールくん、何の用だったの?」

「んー? 野暮用ってやつだよ~」

 ホウキを手に訪ねてくるエレンちゃんに、ぼかして答える。さすがに、振ったことを言いふらすほど、やな女の子じゃないつもりだよ。

 わたしもホウキを手に、掃除に参加。

 途中、不意にユシャンちゃんと目が合った。そして、ため息つく彼女。う~ん、やっぱり引きずってるんだね。幸せ逃して、ごめん。明日は、償いをしよう……。

「エレンちゃん。今日は、ユシャンちゃんと二人で帰っていいかな?」

 小声でささやくと、意図がわかったようで、うなずいてくれる。

 しばらく、デリケートな状態が続くね……。

 わたしも、ため息。幸せ一つ、さようなら。

 しかし、明日は意外な相手と過ごすことになるのでした。ええーっ!?
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