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第十三話 五月十八日(日) 水の楽園で幸せ!
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ああ、女子更衣室。女子更衣室。女子更衣室!
わたしは、こっち側!
女子何とかに入ると、自分が女なんだーって、じわ~って幸せを実感する。
鼻歌歌ってお着替え~。プール、楽しみだなあ!
「ユー、どうかな?」
一足早く着替え終わった、エレンちゃんが、どう? どう? ってカンジに、水着を見せつけてきます。
「黒が大人っぽーい!」
可愛いとか、きれいとかも思いついたけど、この言葉をチョイス。
「ありがと」
ミステリアスに微笑む彼女に、思わずドキッ!
「ユー、あたしは?」
後ろから、トントン肩を指で突かれたので振り返ると、ユシャンちゃんが「どーよ?」って感じに水着姿を見せつけてきます。
「ユシャンちゃんも、大人っぽくてグー!」
サムズアップすると、「ならばよし!」と、一人でうんうん頷いています。
「ねーちゃん、スタイルいいよなー」
「鍛えてるからね。レィナも引き締まった、いい体してるよ」
そんな会話をしているのは、ルシャル姉妹。小学生だけでプールはNGなので、付添いに中学生である、レィナちゃんのお姉さんが同行しています。彼女も、カーリングが上手なんだよ。
なんか、着替えが一番最後になっちゃった。わたし、とろいからなあ……。
「じゃ、みんないいかな? 行こうか」
ぞろぞろと、お姉さんについていく、わたしたちでした。
温水プールなので、むわっとした熱気がたちこめています。大時計塔と、ラドネスブルグでは珍しい、ヤシの木が特徴的。まあ、前世でも北国生まれだった私は、あっちでも、ナマで見たことないんだけど。
「ちゃんと、準備運動するよー。おいっちにー!」
お姉さんの指導で、運動開始。ふう、これだけで汗が出てくるな。
「はーい、終わりー。で、どこいく?」
お姉さんに尋ねられます。
「はい! はい! 競泳プール!」
レィナちゃんが、元気よく手を挙げるけど、わたしたちは「う~ん」って感じに、顔を見合わせる。
「だめっぽいね。案内板を見ようか」
残念がるレィナちゃんの肩を叩きながら、案内板に向かうお姉さん。わたしたちも、ぞろぞろ。
「これ、興味あります!」
「波のプール」を指差す。
「へえ。みんなは?」
「ユーと一緒で!」
エレンちゃんと、ユシャンちゃんがハモる。
「人気者だねー。レィナもそこでいいかな?」
「まー、いーよ」
「じゃあ、行こうか」
ぺたぺたと、向かうわたしたちでした。
◆ ◆ ◆
「おお~!」
波だー! 岩場を模したプールに、ざざーん、ざざーんって!
「入るぞー!」
レィナちゃんが突撃しちゃった。
「あ、おいこら! あたしから離れんな!」
やれやれって感じに、追いかけるお姉さん。
「私たちも入ろ」
エレンちゃんが手を引くと、ユシャンちゃんも手を引く。
二人にエスコートされ、胸まで浸かるあたりへ。
「面白いね」
波に逆らうように、手のひらを動かすと、結構な抵抗を受ける。
「ねえ、ユー」
「ん?」
「なんだか、ロマンティックだね」
頬を少し染め、例のミステリアスな瞳で見つめてくる、エレンちゃん。
わたしもつい頬が熱くなって、俯いてしまう。
「はーい、二人の世界作らなーい」
そこに、割り込んでくるユシャンちゃん。
「いや、二人の世界だなんて、そんな……」
もじもじ。
「作ってんじゃん……」
そう言ったあと、ユシャンちゃんがさらに小声でなにか言ったけど、よく聞き取れませんでした。
「遊ぼ!」
今度はなにやら吹っ切れると、私の手を引いて、奥に進む。エレンちゃんも、あとをついてきます。
こうして、水を掛け合ったり、フードコートでフライドポテトを食べたりしながら、楽しいプール遊びは終わりました。
◆ ◆ ◆
「あのさ、ユー」
三人と分かれたあと、ユシャンちゃんと家の裏口に回ると、彼女が神妙な面持ちで切り出してきます。
「なーに?」
「あたし、ユーが好き。恋愛的な意味で、愛してる」
静止する時間。一拍して、春風がわたしたちの間を、通り抜けていく。
それは、私が今まで、どれだけ親友に対して、無神経で鈍感で、深く傷つけていたかを、思い知らされる言葉でした。
わたしは、こっち側!
女子何とかに入ると、自分が女なんだーって、じわ~って幸せを実感する。
鼻歌歌ってお着替え~。プール、楽しみだなあ!
「ユー、どうかな?」
一足早く着替え終わった、エレンちゃんが、どう? どう? ってカンジに、水着を見せつけてきます。
「黒が大人っぽーい!」
可愛いとか、きれいとかも思いついたけど、この言葉をチョイス。
「ありがと」
ミステリアスに微笑む彼女に、思わずドキッ!
「ユー、あたしは?」
後ろから、トントン肩を指で突かれたので振り返ると、ユシャンちゃんが「どーよ?」って感じに水着姿を見せつけてきます。
「ユシャンちゃんも、大人っぽくてグー!」
サムズアップすると、「ならばよし!」と、一人でうんうん頷いています。
「ねーちゃん、スタイルいいよなー」
「鍛えてるからね。レィナも引き締まった、いい体してるよ」
そんな会話をしているのは、ルシャル姉妹。小学生だけでプールはNGなので、付添いに中学生である、レィナちゃんのお姉さんが同行しています。彼女も、カーリングが上手なんだよ。
なんか、着替えが一番最後になっちゃった。わたし、とろいからなあ……。
「じゃ、みんないいかな? 行こうか」
ぞろぞろと、お姉さんについていく、わたしたちでした。
温水プールなので、むわっとした熱気がたちこめています。大時計塔と、ラドネスブルグでは珍しい、ヤシの木が特徴的。まあ、前世でも北国生まれだった私は、あっちでも、ナマで見たことないんだけど。
「ちゃんと、準備運動するよー。おいっちにー!」
お姉さんの指導で、運動開始。ふう、これだけで汗が出てくるな。
「はーい、終わりー。で、どこいく?」
お姉さんに尋ねられます。
「はい! はい! 競泳プール!」
レィナちゃんが、元気よく手を挙げるけど、わたしたちは「う~ん」って感じに、顔を見合わせる。
「だめっぽいね。案内板を見ようか」
残念がるレィナちゃんの肩を叩きながら、案内板に向かうお姉さん。わたしたちも、ぞろぞろ。
「これ、興味あります!」
「波のプール」を指差す。
「へえ。みんなは?」
「ユーと一緒で!」
エレンちゃんと、ユシャンちゃんがハモる。
「人気者だねー。レィナもそこでいいかな?」
「まー、いーよ」
「じゃあ、行こうか」
ぺたぺたと、向かうわたしたちでした。
◆ ◆ ◆
「おお~!」
波だー! 岩場を模したプールに、ざざーん、ざざーんって!
「入るぞー!」
レィナちゃんが突撃しちゃった。
「あ、おいこら! あたしから離れんな!」
やれやれって感じに、追いかけるお姉さん。
「私たちも入ろ」
エレンちゃんが手を引くと、ユシャンちゃんも手を引く。
二人にエスコートされ、胸まで浸かるあたりへ。
「面白いね」
波に逆らうように、手のひらを動かすと、結構な抵抗を受ける。
「ねえ、ユー」
「ん?」
「なんだか、ロマンティックだね」
頬を少し染め、例のミステリアスな瞳で見つめてくる、エレンちゃん。
わたしもつい頬が熱くなって、俯いてしまう。
「はーい、二人の世界作らなーい」
そこに、割り込んでくるユシャンちゃん。
「いや、二人の世界だなんて、そんな……」
もじもじ。
「作ってんじゃん……」
そう言ったあと、ユシャンちゃんがさらに小声でなにか言ったけど、よく聞き取れませんでした。
「遊ぼ!」
今度はなにやら吹っ切れると、私の手を引いて、奥に進む。エレンちゃんも、あとをついてきます。
こうして、水を掛け合ったり、フードコートでフライドポテトを食べたりしながら、楽しいプール遊びは終わりました。
◆ ◆ ◆
「あのさ、ユー」
三人と分かれたあと、ユシャンちゃんと家の裏口に回ると、彼女が神妙な面持ちで切り出してきます。
「なーに?」
「あたし、ユーが好き。恋愛的な意味で、愛してる」
静止する時間。一拍して、春風がわたしたちの間を、通り抜けていく。
それは、私が今まで、どれだけ親友に対して、無神経で鈍感で、深く傷つけていたかを、思い知らされる言葉でした。
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