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第十一話 五月九日(金) お手々つないで幸せ!

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「ねえ、ユー。私、なにかよくないことしたかな?」

 お昼休み、不意にエレンちゃんにそう言われた。

「えっ!? 全然! 逆に、なんで?」

「気を悪くしないでね。なんか、態度がよそよそしいかなって」

 少し悲しそうな顔をする彼女に、罪悪感が芽生える。

 ユシャンちゃん、レィナちゃんをそれぞれ見ると、二人ともうなずく。

「ごめん! ほんとに、そんな気なくて! 気分悪くしたなら、こっちこそ、ほんとごめん!」

 あちゃ~。恋心を表に出すまいと、距離感が、遠いほうにバグっちゃったらしい。

「そうだ、ユー。放課後、予定あるか? どっか寄ってこーぜ」

 空気を変えようとしてか、レィナちゃんが話題を振ってくる。

「ごめん。今日、相談室の予約が入ってるんだ」

「スクカ? また、ユーには縁遠そうなところに、用があるもんだね」

 ユシャンちゃんが、不思議そうな顔をする。わたし、幸せモードでずっと来たからねー。

「とりあえず、なんか悩んでんのはわかった。立ち入るのもヤボだな。今日は、三人でお先に帰るかー」

 レィナちゃんが、うーんと伸びをする。

「ごめんなさい。実は、私も相談室の予約が」

 おずおずと、手を挙げるエレンちゃん。

「ありゃ、エレンもか。しゃーなしだな。ユシャン、二人でどっか寄ってこーぜー」

「ん。いいよ」

 そのとき、ふとわたしをちらりと見た、ユシャンちゃんの視線に、なんともいえない印象を受けました。

「三人とも、ほんとごめんね。埋め合わせ、ちゃんとするから」

 合掌して、頭を下げる。ラドネスブルグの人、合掌すると、「?」って感じの顔するのよね。


 ◆ ◆ ◆


 で、待ちに待ったスクールカウンセラーの先生だけど、アドバイスはお母さんと大差なくて、失礼だけど肩透かし感が。ただ、先ほどのやり取りに関しては、「好きという感情は隠さなくていいよ」と言ってもらいました。

 ありがとうございましたとお辞儀して、相談室を出ると、エレンちゃんとばったり。

「あ……えと、さよなら。また明日ね」

「うん」

 互いになんだか妙に気まずい感じで、入れ替わりになる。

 彼女、一体どんな悩みを抱えてるんだろう? 力になってあげられたら、いいんだけど。


 ◆ ◆ ◆


 家に着いて郵便受けを覗くと、アユムさんからの返信が届いてました!

 急いで、リビングで確認!

 アユムさんからのお返事には、さらに濃ゆく、前世のお話が書かれていて、どれもこれもが、わたしの前世と一致! まさに、運命的!

 こちらからも、さらに前世のことについて、色々と書く。

 そのときふと、エレンちゃんのことについて、相談してみたくなったのです。

 縁もゆかりもな……くはないけど、遠くの……といっても、お隣の市だけどの人のほうが、かえって相談しやすいかな、なんて思って。

 ……よし、明日出そう!

 お風呂入ろーっと!


 ◆ ◆ ◆


 日曜。レィナちゃんの、試合の日。彼女は今日も、大活躍! チームの勝利に大貢献しました!

「祝杯あげよーぜ!」

 帰り支度を終えると、拳を突き上げる彼女。

 祝杯といっても、そのへんでジュース飲むだけだけどね。

「エレンちゃん」

「ん?」

「手、つないで帰らない?」

 勇気を出した提案に、きょとんとする彼女。でも、一拍置いて、「いいよ」と、例のミステリアスな微笑みで快諾してくれるのでした。

 エレンちゃんの手、やわらかくて、あったかいなあ。ドキドキしちゃう……。

 ふとそのとき、妙な視線を背後から感じました。

 ハッとなって振り返っても、ユシャンちゃんとレィナちゃんが並んで歩いてるだけで、別に怪しい人影もナシ。気のせいか……。

 やがて、四人の分かれ道へ。

「二人とも、またねー!」

 手をブンブン振って、エレンちゃん、レィナちゃんとお別れ。

「ユシャンちゃん。お手々つないで帰りましょ!」

「ん」

 彼女はそう、そっけなく返すけど、その握り方は、ずいぶんと力強いもので。

 何となく、いつもとは違う力の入り具合に、戸惑うわたしでした。
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