上 下
9 / 49

第九話 五月六日(火) エレンちゃんのおうちで幸せ!

しおりを挟む
 エレンちゃんは、いろんな女子グループで引っ張りだこになり、最終的に、わたしたちのグループに入りました。

「なーなー。せっかくだから、エレンち行ってみねえ?」

「ええ!? 突然行ったら、ご迷惑だよ!」

 唐突なレィナちゃんの提案に、苦言するわたし。

「うちは構わないよ。誰もいないし」

 そう言うエレンちゃんの横顔は、気のせいか、少し寂しそうに見えました。しかし、なんだろう。それが妙にまた、ミステリアスで。

「じゃー、決まりー! 電話借りていーかー?」

「ええ」

 というわけで、四人で彼女の家へ。

「入って」

 おじゃましまーすと、上がるわたしたち。

「ここが、私の部屋。飲み物取ってくるから、適当に座ってて」

 ラドネスブルグは、靴文化。屋内でも靴のまま。

 とりあえず、テーブルを囲む。

「おまたせ」

 コーラっぽい飲み物が、ラドネスブルグにもあって、それを配膳してくれます。

 皆で、いただきますと口をつける。

 改めて、室内を見渡す。ユシャンちゃんほどじゃないけど、結構な数の本。推理小説が多いみたい。あとは、カーリング観戦が好きだと言うだけあって、その雑誌も。

 あとは、テレビ。ラドネスブルグではまだ、自分用テレビを持ってる子は少ない。

 あとは、ベッドの枕元に、猫ちゃんのぬいぐるみ。

「やっぱり、十二にもなって、ぬいぐるみとかおかしいかな?」

 私の視線に気づいたエレンちゃんが、照れくさそうに、もじもじ上目遣いで尋ねてくる。か、可愛い~……!!

「そんなことないよ! わたしのお部屋も、ぬいぐるみだらけだもん!」

 さっとフォロー!

「うん。ユーって、女の子っぽいこと全般好きでさ。ほんとリリアンしたり、花育てたりとか大好きなんよ」

 ユシャンちゃんが、補足する。

「そうなんだ。中でも、一番興味あることって何?」

 吸い込まれそうな瞳で見つめられ、ドキドキしてしまう。

「あ、うん。お菓子作りかな。うち、両親がパティシエとパティシエールだから」

「へえ、素敵だね」

 くりくりとした瞳に見つめられる。やだ、なんかドキドキするよう……。

「おいおい、ユーだけじゃなく、アタシらのことも訊いてくれよな」

「ごめん、つい。レィナちゃんは何が好きなの?」

「そりゃもう、カーリングよ! 両親が選手でさ! アタシも自然とな!」

 エレンちゃんもカーリング好き。たちまち、大盛り上がり。

「所在ないね。本、読んでていい?」

「ごめんなさい。つい、一人のお話に夢中になっちゃうの、私の悪い癖だね。ユシャンちゃんは、本が好きなの?」

「まあ、家業が本屋だからね。何でも読むよ」

 今度は、ユシャンちゃんとおしゃべり。私の方に、もう一周きてくれないかなー。

「なあ、ユー」

「ふぁい!?」

 ぼーっとエレンちゃんを見ていたら、突然レィナちゃんに話しかけられて、びっくり!

「うぉっ!? こっちがびっくりするわ! 今度の日曜、試合があるんだけどさ……」

 後ろ髪引かれる思いで、レィナちゃんとおしゃべり。あーん、なんでこんなに、エレンちゃんが気になるんだろー!?


 ◆ ◆ ◆


「おじゃましましたー!」

 あまり遅くならないうちに、帰宅。

「またいつでも、遊びに来てね」

「うん! うちにも来てね! 美味しいケーキ、ごちそうするよ!」

 レィナちゃんとは途中で別れ、ユシャンちゃんと、てくてく歩く。

「あの子、なーんかフシギな魅力のある子だね」

「わかる!? だよね!?」

 ユシャンちゃんがこぼした感想に、がぶーっといく。

「うおっ、めっちゃ食いつくな」

「あ、ごめん。つい」

「まさかね。いや、まさかだよなあ……」

 わたしを見て、一人で首を傾げたり、うなずいたりしている彼女。はて?

「わたしが、どうかした?」

「ううん、なんでもない! さ、遅くならんうちに帰ろー!」

 大股で歩いて行くユシャンちゃん。

「待ってー!」

 ほんと、なんなんだろ?
しおりを挟む

処理中です...