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第四話 四月一日(火) 女友達のお部屋で幸せ!

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「おかーさーん、ユーからこれ~。んで、部屋に行って遊ぶわ。お隣に、連絡しといて」

 おばさんに、ケーキを手渡すユシャンちゃん。

「あらー、いつもありがとうー。後で。おいしくいただくわね。飲み物とお菓子、後で持っていくから」

「いえいえ、お気遣いなく!」

「子供が遠慮しないの! ね」

 うにゅう。そういうなら、ありがたくいただきましょー。

「はい、ありがとうございます」

「じゃあ、上で待っててちょうだいね」

「はーい」

 二人でお返事。おばさんにぺこりと頭を下げ、親友のお部屋へ。


 ◆ ◆ ◆


 ユシャンちゃんのお部屋は、本だらけだ。少女小説から、なんだか難しそうな専門書まで!

「また、本増えた?」

「うん。ユーも、なにか適当に読みなよ」

 さっそく、手近な本を取ってベッドに腰掛け読み始める彼女。

 わたしも、読みかけの少女小説を手に取り、彼女の横に掛ける。わたしたちの遊びは、だいたいこんな感じだ。

 ユシャンちゃんの部屋も、本だらけというわけでもなくて、年頃の女の子してる、かわいらしい家具で揃えられている。ただ、わたしよりは若干趣味が大人っぽいかな?

 机の上の、ミニサボテンがかわいらしい。

 女友達のお部屋に上がって、まったり……。前世では出来なかった、幸せムーブ~。

「ユーさー」

 本から目を上げずに、彼女が話しかけてくる。

「なーに?」

 わたしは、読書しながら会話できるほど器用じゃないので、栞をはさみ直して、ユシャンちゃんに視線を向ける。

「まさかとは思うけど、ユベールはやめときなよー」

 一瞬意味がわからなかったけど、少ししてから理解して、「ないない! ユベールはないよー」と、くすくす笑う。

「そーう? いや、今日のアレさ、まさかと思って」

 彼女も、話に集中する気になったのか、本から目を上げ、こちらを見る。

「わたしは、女扱いされたのが、心の底から幸せなだけなんだ~。ほんと、そんだけだよ~」

 にゅいんっと、伸びをする。

「ユーのそれも、よくわからないよね。やっぱ、前世の影響ってやつ?」

 ユシャンちゃんは、私の前世に半信半疑。でも、この世界のものではない知識を色々話して聞かせてるので、否定できないって感じかな。

「だねぇー。前世の子がね、凄く苦しんでたから。多分、当事者になるか、わたしみたいに一心同体になるかしないと、わかんないと思う」

「ふーむ……。ユーはさ、前世に振り回される生き方、辛くないの?」

「わかんない。混ざっちゃったらもう、そこは違和感とかなくて。逆に、前世のわたしの思い残しを、少しでも実現してあげたいなーって」

 わたしにとって、女の子する・・・・・のは、苦痛どころか、心の底からじわ~っと溢れてくる喜びに満たされる行い。だから、今どき古風かもだけど、女の子らしいことするのが、幸せで、幸せで仕方ない。

 ただ、普通に生きてるだけで、幸せなんだもん。わたし、サイキョーかも。

「逆に、ユシャンちゃん、人生辛い?」

「んー。今んとこ、不満はないかな。この、紙とインクの匂いがあれば、当面幸せに生きられる。あ、でも月イチのあれはやだなー。ユー、まさか、あれすら幸せだったりするん?」

「うん! 痛いは痛いけどね!」

 満面の笑みで回答するわたしを見て、やや引き気味に、肩をすくめるユシャンちゃん。

「やっぱわからんわ」

「ユシャンちゃんは、それでいいと思うよ!」

 にこにこしながら、ポンと彼女の肩を叩く。さらに不可解そうに、首を傾げるユシャンちゃんでありました。

 そのとき、不意にノックの音。

 「どうぞー」とユシャンちゃんが言うと、お盆を手にしたおばさんが入ってきた。

「おまたせ。ユーちゃんのお母さんから、よろしくお願いしますって」

「ありがとう。気兼ねなく遊べるね」

「ありがとうございます~」

 おばさんが、月餅とウーロン茶の入った茶碗を置いて、「ゆっくりしていってね」と、去って行く。

 ユシャンちゃんたちの一家は、「タイオウ」という東の国出身。ここ、商業地区を北に行くと、大きなタイオウ人街がある。よく、ユシャンちゃんたちと観光に行ったものです。

 月餅、美味しいなー。前世と同じ味。あんこの味を、ここ、ラドネスブルグでも味わえるなんてねー。

 こうして引き続き、親友とまったり過ごすのでした。幸せ!
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