上 下
15 / 18

15

しおりを挟む
こたつに入って寝転がり、ただぼんやりとこたつ布団を眺める。体に穴が開いたみたいに、スースーと空気が抜けていく。
『なんで?そこまで言う必要ないだろ』
思ったよりダメージの強い一言だった。
体が結ばれたからって、心まで結ばれたワケじゃない。
土足でズケズケ入ってくるな。そう言われたみたいだった。
今回ばかりはさすがに凹んどります。やっと気持ちが通じ合えたって思えたばかりだったし。

彼がいなくなった後、お母さんも泣きながら帰って行った。
その姿に旦那様も心を痛め、帰りの車の中は悲惨な雰囲気に包まれていた。
レイ君はもちろん、昨夜からイッセイ坊ちゃまも全然口をきかないし、無邪気な凌空坊ちゃまの声だけが、唯一の救いのように思えた。
誰も何も言わず、最低限の言葉だけ交わし、本宅と離れに分かれて帰った。
レイ君は速足でどんどん先を行く。
2人きりになれると思って楽しみにしてたのに、離れに帰るのが嫌で堪らなかった。
一緒にいる時の孤独ほど辛いものはないから。
結局、帰ってから言葉も視線さえも交わすことなく、彼は自分の部屋に籠り、あたしも仕方なく和室に籠っていた。日が落ちるにつれ、部屋も影っていく。
「なんだ、もう寝てんのか?」
完全に日が落ちた頃、イッセイ坊ちゃまが離れにやって来た。あまりにいつも通りだったので、驚いて返事できなかった。
「お前でも落ち込むことあるんだな」
「それはまあ……。それよりどうかしたんですか?」
部屋の電気を点け、お茶でも入れようとキッチンに向かう。
「俺はなぁ、あんな奴にまんまと出し抜かれて、黙ってるような男じゃねえんだよ」
言いながら、彼が後ろをついてくる。
「どういう意味です? それ」
「今日のことで、よく分かっただろ? あいつはああいう男だ。誰にも心は開かない。あいつを好きになっても、お前が傷つくだけだ」
急須を持つ手が止まる。
「……」
早速凹んでいるあたしには反論できなかった。
「そんな顔してるお前を黙って放っておくほど、俺はお人好しじゃない。隙があれば迷わず奪う」
昨日の今日なのに、こんなに簡単に揺らぐなんてどうかしてる。でも、今日のレイ君の態度は本当に堪えたんだ。
「なあ……」
これ以上、何か言われたらダメになっちゃいそうで、思わず身構えた。
「飲みに行くか?」
「……へ?」
気の抜ける誘いだった。
「今からですか?」
「凹んでる時は飲んで忘れるのが一番だろ」
「ああ、まあそうですけど。だったらここで飲みます?」
「いいけど、ここだったら襲いかかるかも。それでもいいなら……」
「分かりました!行きましょう!」
「フンッ。ヤな女」
不服そうに彼は笑っていた。また、イッセイ坊ちゃまに助けられちゃったな……。
コートを着て、2人で玄関に向かっていると、ちょうどレイ君が下りてきて、階段の前で鉢合わせした。
「……ちょっと出かけてきてもいいですか?」
表情のない彼を誘う勇気はなかったから一応許可だけもらおうと思った。
「いちいち俺に断らなくてもいいよ」
そそくさと背を向け、あたしを見ることもなく、彼は冷ややかな声で言った。
「ですよねー。じゃあいってきます」
ギリギリの笑顔で家を出た。少しは期待していた自分がバカみたいに思えた。2人で行くなって言ってくれるんじゃないかと思っていた。もし、言ってくれたら止めるつもりだったのに……。
レイのバカ! もう知らない! まさにそう叫びたい気分。
「あー! もーヤダ! あの人ぜんっぜんワケ分かんない」
お墓でのこともショックだったけど、出かける前のこともショックで、最初からかなりのハイペースで飲み、店に着いてから30分もしないうちに自分でも分かるくらい酔っていた。
「だから言っただろ? あんな奴止めとけって」
意外にも、坊ちゃまは普通の居酒屋に連れて来てくれた。半個室の座敷だと、どんどん気が緩む。会員制の上品なバーとかだったら、こんな風に気兼ねなく酔えなかっただろう。
「寝たのがマズかったんじゃねえのか? いるだろ? 手に入れたら興味失くす奴」
「ええっ! そうなのかなー。そう思います?」
そうだったらどうしよう。
「なんだ、やっぱり寝たのかよ」
あ。カマかけられてたんだ。
「あれ? でも、知ってたから部屋に来たんでしょ? 泊まってる時」
「夜中に起きたらあいつが部屋にいなかったから、もしかしたらって思っただけで知ってたワケじゃない」
なんだーお得意の勘かぁ。
「すいませんっ」
酔っ払った頭を下げる。
「で、どうなの? あいつって。もしかして童貞だった?」
「違いますよぉ!」
訊いたわけじゃないけど、恐らく違う。
「けど、どうせ下手だっただろ? っていうかフツ―に変態だろ?」
「もう! 変なこと訊かないでくださいよ」
思い出したら赤くなるぐらい、あの夜のコトはまだはっきりと覚えている。レイ君の声も匂いも体温も感触も全部。それなのに、もう遠い昔のことみたいだし、二度とない気さえする。
あたしの予定では、今頃2人でイチャイチャしてるハズだったのになぁ。なんでこんなことになっちゃうんだろ。
「なあ、実梨」
「なんです?」
「あんな奴止めて、俺と付き合えよ」
テーブルに置いていた手をギュッと握られた。
柔らかくて大きな手……。うんって勢いで頷いてしまいそうに温かくて、安心感がある。
この手を握り返して、うんと頷いたら、あたしは楽になれるのかな。
そう言えば、レイ君は付き合おうとは言わなかったな……。
一夜のコトとして忘れた方がいいの? レイ君はそのつもりだった?あ~ダメだ~! どんどん悪い方向に考えてしまう~!
「分かりました!」
「え? マジで?」
ややこしい返事をしたので、坊ちゃまに驚かれてしまった。
「そうじゃなくて。あたし、レイ君に確かめてみます!」
「は? 確かめるって何を?」
「気持ちです! あたしとのことをどう考えてるのか、訊いてみなくちゃ分からないですもんね!」
浮かれてて肝心なことを確認しなかったあたしも悪い。気まずくても逃げてたら始まらない。あたしと付き合う気があるのか、ただ寝たかっただけなのか、確かめれば済む話だ。こうやってずっとウジウジ悩むのは性に合わない。
「お陰でスッキリしました。ありがとうございます」
「それ、礼言われても俺は別に嬉しくないやつだよな」
「あ、ですね。すいません!」
「おいー、ふざけんなよなー」
「でも、訊いたらどうなるか分からないし」
イッセイ坊ちゃまといると、話は弾むし楽しいし、目尻がシワになるくらい笑える。男らしい一面もあり、感情も表情も豊かで分かりやすい。
それなのに、なんであたしはあんなに分かりにくい人が好きなんだろう。
急に好きって言ったかと思ったら、次の瞬間には背を向けられて、何考えてるのか分からないし、怒ると目怖いし、極端に口数少ないし。
あれは女子の好きな無口で無愛想のレベルを軽く超越してる。
思えば、レイ君のここが好き! って言い切れるとこ……実はないのかも。
だから厄介なんだ、恋は。落ちたらなんにも見えなくなっちゃう。
「今日はありがとうございました。ちょっと元気が出ました」
「元気じゃなきゃ、お前らしくないからな」
「えー。そんな元気キャラじゃないですよぉ、あたし」
「元気しか取り柄ねえクセに」
「あ、そっか。って失礼ですね」
最後まで下らないこと言い合って、笑顔で別れた。
よし! 気合を入れる。時間はまだ日付が変わる前。人の部屋を訪ねるにしては非常識な時間かもしれないけど、お酒の力も借りないと、二階には行けそうにない。
「あの! ちょっといいですか?」
気合のわりに、消極的に部屋のドアを叩く。反応ないなぁ。まさかもう寝ちゃった?
さすがに起こすのは気が引けるし、今日は諦めるか。せっかく頑張れそうだったのに。
がっかりして階段を下りていると、カーブのところで足が滑り、尻餅をついたまま階段を滑り降りた。
「あ、あ、あ!!」
1人で何やってんだろ、あたし。
「アイタタタ……」
背中やお尻の痛みに、情けなさも倍増。あーあ。もう泣きそうだよ。
壁を伝って何とか立ち上がり、しょんぼり部屋に戻った。
痛い……。
が、しかし!これしきのことでめげるものか!
明日こそ頑張ろう。鼻息荒く眠りについた。
次に目を開けた時には昼前だった。
「いつまで寝てんだ」
「おはようございます……あれ?ど うしたんですか?」
起きるとまたイッセイ坊ちゃまがいた。
「引っ越しだよ」
「引っ越し? 誰が?」
「あいつだよ。これじゃあ、どう考えてもフェアじゃないからな。強制退去だ。いい加減、向こうに移ってもらう」
「ええっ!」
強制退去!? なんで? なんでそうなんの? まだ話し合いもできてないのに!
「ちょっと待ってくださいよ!そんないきなり……」
「あいつもようやく納得したから」
な、納得、したの? なんでよ~! それって、あたしと2人きりなのがイヤってこと?
荷物といっても家具や日用品はほとんど向こうにあるし、ってか寧ろ充実してるし、ここから持って行くものなんて洋服くらいなもの。引っ越しってほど大がかりでもなく、長期の旅行程度の荷物しかない。
「あたし、手伝いします」
玄関にいたレイ君に声をかけた。
「大丈夫。ありがとう」
いやいや、そうじゃなくて……って行っちゃった。
どんだけ鈍いんだよ。あ~話し合いが~! イチャイチャが~!
計画が悉くダメになっていく。引っ掻き回して髪の毛もぐちゃぐちゃ。くそー!
こうなったら、とっ捕まえてでも話を訊いてやる。

次の日、複雑な休暇も終わり、新年初仕事を迎えた。
本宅のダイニングにレイ君がいる。
見慣れない光景に違和感しかない。
もちろん、黒澤家にとってはこの方がいいに決まってる。だけど、一言の相談も、挨拶さえもないまま戻っちゃうなんてさ。素直に喜べないよ……。
「家族全員揃うのって、やっぱりいいわね、お父様」
旦那様を気遣うようにお嬢様が言った。
「ああ、うん」
笑顔は見せているものの、旦那様はまだ元気がない。レイ君のお母さんのこと、堪えてるんだろうな。
いつも以上にシーンとした朝食を終えると、旦那様がお出かけになった。
玄関までお見送りした後、振り返るとイッセイ坊ちゃまとレイ君が玄関に向かって歩いて来ていた。もちろん並んで、ではなく、かなり離れて。
「お前さ、実梨と付き合う気あんの?」
あたしの近くまで来ると、イッセイ坊ちゃまが切り出した。
えっ! 今訊いちゃいます?
「……お前に答える必要ないだろ」
「だったら本人に答えてやれよ」
レイ君はあたしを見ると、気まずそうに目を逸らした。
ごくりと息を呑む。
「答えられないっつーことは、単にヤリたかっただけってことだろ」
挑発するようなイッセイ坊ちゃまをレイ君がキッと睨み、胸ぐらを掴む。
「おい。口を慎め」
「それじゃあ答えになってねえよ」
火花バチバチってこういう時に使うんだろうなっていう状況。
「お前には関係ないだろ。いちいち首を突っ込むな」
「何をエラソーに。こいつが今どんだけ不安なのかも知らないクセに」
一言一言、一触即発ムードが高まる。初出勤の前なのに、この空気はヤバくない?
「一回寝たぐらいで調子に乗ってんじゃねえよ」
「なんだ、僻んでんのかよ」
嘲笑するようにレイ君が言い放つ。次の瞬間、不安が的中した。イッセイ坊ちゃまがレイ君を殴り飛ばした。
「え、ちょっと!!」
ヤバいと思ってからはあっという間だった。もともと仲のよろしくない2人はすぐに取っ組み合いのケンカになった。これからお仕事なのに、服も顔もボロボロになっちゃうよ!どうしよう……。さすがに殴り合いは止められない。オロオロするだけでなす術がない。
「ふざけんじゃねえ!!」
皮膚に当たる鈍い音がする度に、怖くて手が震える。あ~見てるだけで痛い。
「ちょっと兄様たち! 一体何事なの?」
騒ぎを聞きつけ、お嬢様と左近さんが様子を見に来た。
救いの手のようで、あたしはホッとしていたけど、2人は誰が来ようと収まりそうにない。
どちらかが殴られたり蹴られたりした拍子に、勢いで飾り台に当たる。
「わー! それはダメですよ!」
その度にあたしは高価な壺や置物が落ちそうになるのをキャッチしなければいけなくて、気が抜けない。
「お前のその不幸面が気に入らねえんだよ!」
「好きでこんな顔になったんじゃない」
ん? なんかだんだん方向がおかしくなってない……?
「このド変態が!」
「それはお前だろ!」
やっぱりおかしい……。真剣に殴り合いしながら、言ってることはすんごい幼稚。あたしの話はどっかいっちゃったの?
「なんだとー! 表出ろ!コラ!」
ええー! 表!?
「左近さん、どうしましよう」
「暫く静観しているしかありませんね。旦那様にはわたくしから連絡しておきましょう」
男の子は元気がいいとでも言わんばかりの余裕の笑みで、左近さんはダイニングに戻った。
「まあ、それもそうね」
お嬢様もそれに続く。ホントにいいんですかい? それで。一抹の不安を抱え、2人の後を追う。
庭でも同じようにケンカは続いていた。幼稚な罵り合いとともに。
「もう、いい加減止めましょうよぉ!」
本題からも大きく逸れてるし。やっぱり静観しようかなと思った時だった。
「ギャー!」
飛んできたどちらかを避けようとして、噴水の中に背中から落ちたのだけど、場所が淵ギリギリだったので足だけ残り、体がL字に。
「大丈夫かよ」
さすがに一時休戦したらしく、2人で手を引いて起こしてくれた。
「だ、大丈夫なワケないでしょ! 水冷たいし、息できないし、死ぬかと思いましたよ!」
「お前どんだけ体張るんだよ。リアルにスケキヨじゃねえか」
イッセイ坊ちゃまは必死で笑いを堪えているみたいだけど、全然堪え切れていない。
誰がスケキヨじゃ!
「ケンカが止まったんなら、とりあえず無駄じゃなかったので、笑いたきゃ笑ってください」
どうせこういう役回りなんだ、あたし。
『あたしのためにケンカしないでぇ!』
みたいなどこぞのお嬢様っぽくはならないんだ。

新年早々、階段から落ちるわ、後ろ向きに噴水に落ちるわ、家に受験生でもいたら非難囂々、縁起悪すぎだよ。あたしの一年は大丈夫なのか!? これで厄払いでもできてりゃいいけど。
「ハー、ハー、ハックション!」
ちきしょうめってか。
あー、風邪引きかけかなぁ。マジで最悪なんですけど。
ケンカを中断した2人は、仲良く? 家政婦さんたちに傷の手当てをしてもらい、腫れた顔に絆創膏を貼って出かけて行ったらしい。ずぶ濡れのあたしはとりあえず離れに戻り、お風呂に入って着替えを済ませ、再び本宅へ。
「左近さんの言う通りでした。あたしも静観してればよかったですぅ……」
マスクの下で口を尖らせる。
「ホホホ。ですが、静観できないのがあなたの良いところですからね」
良いところ? ただのお節介って気が……。
「お2人がお生まれになった頃から見ておりますが、取っ組み合いの喧嘩をされたのは初めてですからね。お互いに相手の存在を意識できるまでになったのは大したものです。これもあなたのお陰ですよ」
「そんな、滅相もない」
煽てるのが上手いんだよなー、やり手の執事は。
「おかえりなさいませ」
夜の7時を過ぎると、お嬢様、旦那様、イッセイ坊ちゃまが順番にお帰りになった。
「今日は災難だったらしいね」
マスク姿のあたしを見て、旦那様が気遣うように言った。
「いえ、そんなに大したことじゃありませんから」
旦那様に見られなくてよかったと、今になって心底思う。
「なんだ、お前、風邪引いたのか?」
帰って来るなり、イッセイ坊ちゃまもあたしのマスクを指差して訊いた。
「まだ引きかけだと思います。それより会社で笑われませんでした? その顔」
目元も口元も痣ができて、腫れている。
「みんな普通に引いてた」
「でしょうね……。兄弟揃って、ですもんね」
中学生ぐらいならともかく、いい大人だしね。
「俺とあいつは全然違う部署にいるし、フロアも違うから、まず揃って見られることはないけどな」
「へぇ。同じ部署だと思ってました」
「最初は同じとこにいたけど、あいつ、それが嫌で逃亡しやがったから」
逃亡って……。聞けば聞くほど、知れば知るほど複雑なのね……。あまり深く掘り下げるのは止めよう。
その日の仕事を終え、離れに戻りながら肝に銘じていた。
「あ、おかえりなさい……ませ」
ちょうどレイ君が帰って来たところに鉢合わせた。
「……ただいま」
色々気まずいのか、彼はずっと俯き加減だ。
「あの、今ちょっといいですか?」
訊くなら今しかない。そう思い、彼を離れに呼んだ。極度の緊張に頭は真っ白になった。
誰か耳元で囁いて―!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」 度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。 事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。 しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。 楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。 その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。 ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。 その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。 敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。 それから、3年が経ったある日。 日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。 「私は若佐先生の事を何も知らない」 このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。 目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。 ❄︎ ※他サイトにも掲載しています。

副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~

真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

鬼上司は間抜けな私がお好きです

碧井夢夏
恋愛
れいわ紡績に就職した新入社員、花森沙穂(はなもりさほ)は社内でも評判の鬼上司、東御八雲(とうみやくも)のサポートに配属させられる。 ドジな花森は何度も東御の前で失敗ばかり。ところが、人造人間と噂されていた東御が初めて楽しそうにしたのは花森がやらかした時で・・。 孤高の人、東御八雲はなんと間抜けフェチだった?! その上、育ちが特殊らしい雰囲気で・・。 ハイスペック超人と口だけの間抜け女子による上司と部下のラブコメ。 久しぶりにコメディ×溺愛を書きたくなりましたので、ゆるーく連載します。 会話劇ベースに、コミカル、ときどき、たっぷりと甘く深い愛のお話。 「めちゃコミック恋愛漫画原作賞」優秀作品に選んでいただきました。 ※大人ラブです。R15相当。 表紙画像はMidjourneyで生成しました。

スパダリ外交官からの攫われ婚

花室 芽苳
恋愛
「お前は俺が攫って行く――」  気の乗らない見合いを薦められ、一人で旅館の庭に佇む琴。  そんな彼女に声をかけたのは、空港で会った嫌味な男の加瀬 志翔。  継母に決められた将来に意見をする事も出来ず、このままでは望まぬ結婚をする事になる。そう呟いた琴に、志翔は彼女の身体を引き寄せて ―――― 「私、そんな所についてはいけません!」 「諦めろ、向こうではもう俺たちの結婚式の準備が始められている」  そんな事あるわけない! 琴は志翔の言葉を信じられず疑ったままだったが、ついたパリの街で彼女はあっという間に美しい花嫁にされてしまう。  嫌味なだけの男だと思っていた志翔に気付けば溺愛され、逃げる事も出来なくなっていく。  強引に引き寄せられ、志翔の甘い駆け引きに琴は翻弄されていく。スパダリな外交官と純真無垢な仲居のロマンティック・ラブ! 表紙イラスト おこめ様 Twitter @hakumainter773

処理中です...