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楽しかったパーティーの余韻もなく、その場は突如、修羅場に。
引金ってまさかあたし……?
「世間の笑い者だなんて、何もそんな言い方しなくたっていいだろう」
気まずそうに旦那様が注意する。
「あら、家政婦に産ませたような汚らわしい息子を跡取りにしても、笑い者にならないと仰るの?」
なっ……!?
今なんかとんでもないこと聞いちゃった気がするんだけど。
ってか、どういうこと? この2人って双子じゃないの? 本当は腹違いの兄弟?
いや、そんなことより。今、汚らわしい息子って言った? なんちゅうことを……!
本人が目の前にいるってのに、何考えてんの?
あー、ダメだ。なんかムカムカしてきた!
「止しなさい。零の前で」
どこか遠慮がちに旦那様が言った。こんな時までお上品でどうする! ガツンと言っちゃえ、ガツンと!
「何を今さら。みんな知ってることじゃないの。本人だって知ってるわ。ねえ? 零。お前だって自分が産まれてきちゃいけない子だったって自覚してるわよね」
はあぁ!? ごめんなさい。もうムリ!
「ちょっと待って下さい。いくら何でも言い過ぎじゃないですか?」
「星崎さん。我々が口を挟むことではありませんよ」
前のめりのあたしを左近さんがそっと止める。
「分かってます! 分かってますけど、あんなの黙って聞いてられませんよ! 左近さんはおかしいと思わないんですか?」
「ご家族にはご家族のご事情というものがあるのです。我々が意見するなどもってのほかです。さあ、あちらへ」
物分かりのいい執事は、あたしの腕を引く。
「放して下さい!どうしてですか? どうして誰も何も言わないんですか? 旦那様も奥様と同じ気持ちなんですか?」
「そんな訳ないだろう。わたしにとってはどちらも同じ、大事な息子なんだ」
「だったら、奥様を引っ叩いてでもそんなこと言わせちゃいけないですよ! レイ坊ちゃまが聞いてるのに!お父さんならちゃんと守ってあげて下さい!!」
少しずつ部屋から押し出されそうになりながら、あたしは必死で叫んでいた。
ふと気がつくと、目の前に奥様がいた。
ギョッとする間もなく、脳みそまで震えるようなビンタを食らう。
痛っー!
多少トナカイがクッションにはなったけど、それでも痛かった。
怪力鬼ババアめ……。
「お黙りなさい! たかが家政婦の分際で生意気にもほどがあるわ! 左近さん、この小娘を今すぐここから叩き出して下さい!」
「はい、承知い……」
左近さんが返事をしている途中で、奥様が大きく左横に飛んだ。なんで!?
「キャッ!」
倒れた奥様の足元にはレイ坊ちゃまが立っていた。どうやら彼が突き飛ばしたらしい。今までとは比べ物にならない、真っ黒な悲しみを目に宿して。
「母親に向かって、何てことするの!」
床の上で体を起こし、奥様がヒステリックな声を上げた。
「お前は母親じゃねえんだろうが。散々お前はうちの子じゃないって言ってきたクセに都合のいい時だけ母親面すんじゃねえよ」
見下ろす顔が怖すぎる……。
「わざわざ引き取って育ててやったのにその恩も忘れるなんて! お前みたいな人間が黒澤の苗字を名乗れるだけでもありがたいと思いなさい!」
奥様を旦那様が、レイ坊ちゃまをイッセイ坊ちゃまが押さえ、何とか2人を引き離そうとしている。
「愛人への腹いせで引き取っただけのクセに恩着せがましく言うんじゃねえよ! 俺は好きでここにいる訳じゃない! お前らが閉じ込めんだろ! こんな家、いつでも出てってやるよ」
心の奥から叫び、イッセイ坊ちゃまを振り払うと、彼は部屋を出て行った。
「え、ちょっと!」
誰も待てとか言わないし、せめてあたしだけでも後を追おうとした。
「おい、どこ行くんだ」
そんなあたしにイッセイ坊ちゃまが手を伸ばし、腕を掴んだ。
「一成!みっともない真似は止して!」
怒り心頭に発している奥様が怒鳴る。あまりの迫力に坊ちゃまは手を離した。頭がトナカイなことも忘れ、あたしはレイ坊ちゃまを追って長い廊下を走る。
離れに着くと、坊ちゃまは外したネクタイを玄関に投げつけ、咆哮した。
「なあぁぁぁ」
すぐ後ろにいたあたしはあまりの声に驚いて、変な声を出してしまった。
その瞬間、坊ちゃまがキッと睨んで振り返ったので慌てて口を塞いだ。
「すいません」
頭を下げると、角が当たった。
「わー!ホントにごめんなさい」
どんだけ空気読めないんだ、この頭。ふざけたものを急いで外す。ってか、あたしこの格好で奥様と……。我ながら恐ろしいことしたなー。
「君はいいね、楽しくて」
たいそうご立腹かと思いきや、拍子抜けするほど穏やかな顔をしていた。
「え ?ああ。それって嫌みで言ってるんですよね?」
当たり前だ。
「いいや。君を見てると楽しい」
「ホントですかぁ? 楽しいって顔してないですけどー」
いや、それこそ当たり前だな。あんなことがあった後なんだ。無理やりでも笑えるワケがない。
でも、でも――。
「悔しいから笑いましょう」
「え?」
「ここで落ち込んだら奥様に負けたみたいで悔しくないですか? パーティーの続
きでもして楽しんじゃいましょ。ね?」
笑いかけると抱き寄せられた。
「ごめん……ありがとう」
ぎゅうっと痛いくらいに抱きしめられると、なんだかドキッとした。
「あ、そうだ!せっかくだから、どっか行きません? 今日、ここの冷蔵庫空っぽでなんにもないんですよー」
速くなる鼓動を誤魔化すように少し体を離し、彼を見上げた。
「できれば……」
「お。希望あるんですか?」
珍しいこともあるものだ。
「君と2人の方がいい」
完全に無防備だった。こんなタイミングでスゴいセリフ放り込んできたな。さすがに恥ずかしくて顔見れないわ。
「嫌なら無理にとは言わないけど、今日だけ一緒にいてくれないかな」
なんでいきなりこんなに畳みかけてくるの!? 返事に困って焦る。
「じゃ、じゃあとりあえず乾杯だけでもしますか」
怪しまれないように(?)坊ちゃまから離れ、キッチンへ。
「寒いからこたつに入ってて下さい」
また横でじっと見られてても困るし。
「あ、うん」
こちらに背を向けて、こたつに入ったのを見届けると、大きく息を吐いた。
あー苦しかったぁ。慣れないわーあのリズム。急に少女漫画のセリフみたいなこと言うんだもんなー。
「ワインでいいですか?」
「俺、飲めないから」
「そうでしたっけ?」
飲んだら陽気になるかもって期待も打ち砕かれた。水でいいという坊ちゃまを差し置いて、あたしはワインを飲んだ。飲まなきゃどうにかなりそうだよ。
だって……。
全然、盛り上がらないんだもん!盛り上がらないどころか会話すらない。今頃ドロドロになっている本宅に対抗して、何事もなかったかのように盛り上がってやろうという目論見は失敗に終わりそうな予感。
「あ!そうそう。レイ坊ちゃまってピアノ上手ですよね!習ってたんですか?」
得意分野なら盛り上がるかもという安易な期待。
「ああ、うん。あの女に無理やり教えられた」
アウトーッ! 奥様の話題は絶対NG。
「へ、へえ」
苦笑いするしかない。どんな話題なら奥様が出て来ずに盛り上がるんだろう。
ダメだ!何も思いつかない。シーンとした部屋に時折、「美味しい」とか「寒い」とかどうでもいい話が出る
だけ。息苦しい時間だけが、刻一刻と過ぎていく。
「あ。もう日付変わっちゃいましたね」
「うん」
12月24日……クリスマスイヴか。
「そう言えば、サンタさんって今日来るんでしたっけ? 明日でしたっけ?」
「さあ。でもクリスマスは明日だから明日じゃないかな」
「あ、そっか。もうサンタさんなんか待つことないから忘れちゃったなー」
小さい頃はそれだけが楽しみだったのに大人になるのも寂しいもんだ。
「ウチね、ホント笑っちゃうぐらい貧乏だったんで、クリスマスプレゼントもお願いしたものが届いた試しなかったんですよ」
思い出したように、昔話が口をついて出た。
「そうなんだ」
「『今年は不景気なのでごめんね。サンタより』とか律儀に手紙が置いてあったりして。今考えたら面白いんですけど、当時は意味も分からなくて、ショックで泣いたなー」
残念な両親を思い出すと笑える。
「でね、泣いてるあたしに兄が言ったんです。『貧乏な家に来るのは貧乏なサンタさんなんだよ』って。『サンタさんは自分が食べるのも我慢して子どもにプレゼントくれてるんだから、文句言っちゃダメだ』って」
「初耳だな」
「でしょ?でも、子ども心にそれ信じちゃって。なんかプレゼントねだるの悪いなって思って、次の年から逆にサンタさんにお菓子置いたりしてました」
「優しいね」
おや? なんか会話が成り立ってる!? そっかー。自分のこと話せばよかったんだ。
坊ちゃまに話振ったら地雷踏むんじゃないかってビクビクしてたけど、自分のことなら大丈夫じゃん。
なんでこんな簡単なことに気づけなかったんだろ。
その後、一方的ではあったけど、クリスマスの思い出や誕生日の思い出なんかを話すと、少しずつ坊ちゃまの表情も解れていった。
大笑いとはいかないけど、目が死んでない微笑くらいにはなった。
芸人でもなんでもないけど、笑わない人が笑ってくれるというのは、自分が笑うより気持ちがいいもので。
もっと楽しませたいってなる。お腹を抱えて大爆笑……なんて日がくるといいなぁ。レイ坊ちゃまにも。
やっとの思いで場も盛り上がってきたけど、そろそろ睡魔には勝てなくなってきた。
眠気覚ましが必要か……。
「お風呂入ってきてもいいですか?」
今日はケーキにダイブもしたしね。
「ああ、どうぞ」
「じゃあお言葉に甘えて。よかったら一緒に入ります?」
調子に乗ってからかう。赤い顔で首を振る坊ちゃまは結構かわいいから。
当然1人でお風呂に入り、クリームのついた髪をシャンプーしながらふと思う。
そういや、この後どうするんだろう? 朝までお喋り?
それは体力的にキツいし、もうネタも尽きそう。
じゃあ寝る? 寝るってまさか一緒に?
今日だけ一緒にってのはそういうコトも含めて?
どうしよう。今頃不安になってきた。ドキドキしながらそっと部屋に戻る。
「お先でしたぁ……」
緊張しながら声をかけると、坊ちゃまもお風呂へ。
何でもないって顔してたけど、実はヤラしいこととか企んでるのかな? あわよくばぐらいの期待は持ってる?
分かってますよ的な対応をするべきか、分かんなーいって逃げるべきか。この歳で分かんなーいは寒いか……。じゃあ、お布団敷いて待つ? 敷くなら一組か二組か。
あ~!それこそ分かんなーい!
こたつに顔を突っ伏して必死に考えるけど、いい案が浮かばない。だんだん頭も回らなくなってきた……。
ん? なんか、すごく心地いいのは気のせい?
誰かに髪を撫でられてるような……。
目を開けると、坊ちゃまが頬杖をついてあたしのことを眺めているのが見えた。
目を開けるとってことは。
「はっ!ごめんなさい」
考えながら眠ってしまったらしい。顔を上げると坊ちゃまが手を退けた。
「あ、ごめん」
そうか。坊ちゃまが髪を……。ってか、顔近っ!思った時には遅かった。
重なった視線を逸らすことができなくなっていた。ゆっくりと、自分の顔が陰に覆われていく。
自然と瞼も落ちていく。焦らすように近づいてくるのが待てなくて、自分から距離を埋めた。
初々しいくらいお行儀よく重なる唇。
29歳を迎えたオトナの男とは思えないような純真なキス。
物足りないようでいて有り余っている。
時間をかけて唇を離していくと、それに合わせるように目も開いていく。
とろんとした熱っぽい目だけは、やたらとオトナの色気があった。
例え純真さを感じたとしても、彼はもうコドモじゃない。
そっと彼の手が頬に触れる。
彼の手に自分の手を重ねる。大きくて温かい手。
潤んでいく目を見ていると、胸が熱くなる。
頬に触れただけで、目を潤ませる人なんて初めてだ……。
キュンとしそうなあたしを坊ちゃまは抱きしめた。
「ありがとう……」
お礼なんか言わなくていいのに……。
「こういう一番効果がありそうな時には言わないんですね」
「何を?」
わざわざ言ってもピンともこないなんて驚きの鈍さ。
「じゃあ、そろそろ寝ましょうか」
「えっ……」
「朝までここにいるつもりじゃなかったんですか?」
「……いいの?」
なんであたし主動になってるのか分からないけど、彼に任せてると何一つ前に進む気がしない。
「ダメだったら、もうとっくに追い出してますよ」
いつも通り、平然としながら布団を敷いているけど、内心はドキドキしていた。
自分から布団まで敷いて、まるで催促してるみたいじゃない?
別にそういうんじゃないから! 眠いだけで、深い意味はないから!
とは言いつつ、この状況で何もないなんて、あり得ないだろうとどこかで思っている自分もいた。
いいのか?いいのか、実梨。
結局、分かってますよ感を出し、一組だけお布団を敷いた。
「どうぞ」
なんて、軽々しく言う唇は震えている。老夫婦よりも離れたこの距離を、彼はどう埋めるのだろう。
期待にも似た高揚感を隠し、寝つこうとしているフリをする。
何度も寝返りをうったりして。
ん?
チクタク、チクタク……
おや?
やけに遅くはないかい?
寝ちゃってもいいのかしら?あたし。って、ええ!?
スーッ、スーッ……
ウソ……。もしかして……寝たの? この状況で迫ってもこないの?
は!? なんで? 意味分かんない!
自分で言うのもなんだけど、あたしのことが好きなんじゃないの?
ムラムラして眠れないならともかく、あたしより先に寝ますかい?
しかも、そんな健やかに……!
なんだ、なんだ、この敗北感は!
なんであたしがこんなにヤキモキさせられなきゃいけないのぉー!
このまま朝まで眠れないんじゃないかと思ったけど、いつの間にか眠っていたらしい。
今、何時だろう……?
……ん!?
レイ坊ちゃまの背中にしがみついているあたしに、誰かが後ろから抱きついてない?……ってそんなことする奴1人しかいないか。そーっと目を開ける。はぁ。やっぱり。
「ちょっと!何してるんですか!」
またお決まりのフル○ン!?
っていうか、これってあたしが初めてここに来た時とまったく同じシチュエーションじゃない!?
いや、3人でくっついてるという見た目だけは、よりスキャンダラスかも……。
「何だよ、うるせーな」
「うるせーなじゃないでしょうよ!なんでいるんですか?」
不機嫌そうな顔で起き上がると、やっぱり彼は裸で、服を着るより先に煙草に火をつけた。
「昨日言っといただろ?後でお前ん家行くって。それなのに、勝手にこんな不気味な男とイチャつきやがって」
あたしを睨み、口を尖らせる。昨日は遅くまで眠れずにいた気がしたけど、いつの間に来たんだろう。
全然気がつかなかった。
「あの話、まだ生きてたんですか? ってか、よくここで寝ようと思いましたね」
「帰るの面倒臭かったんだよ」図太いっていうか無神経っていうか。何もなかったからいいものの、ホントにイチャついてたらどうするつもりだったんだよ。
「で、お前ら付き合ってんの?」
淡々とした口調で訊かれた。
「付き合ってませんけど」
「好きなの?こいつのこと」
「え?いや、あの……」
否定も肯定もできず、困る。
「ただ、ヤッただけ?」
「ヤッてませんけど」
そこは声を大にして言いたい!
「嘘つけ。そんなワケねえだろうが」
「そんなワケあるんです!あたしだってビックリしてんだから」
思わず本音を言うと、坊ちゃまは煙草を銜えたまま固まった。
「なんで? こいつイ○ポなの?」
「あ、あたしがそんなこと知るワケないでしょ!朝から卑猥なこと言わないでくださいよ」
確認する状況にもなってないのに。
なんて言い合っていると、レイ坊ちゃまがガバッと起き上がった。
「違うけど」
「え、聞いてたんですか?」
覗き見の次は盗み聞きかい。
「いや、俺に言わせりゃイ○ポだね。つーか、実際そうじゃないならもっと悪質だな」
朝から下ネタかよー。
「むっつりスケベのクセに、無理に紳士気取りして、お前はいい気分かもしれねえけど、分かってんのか?お前、この女のプライド傷つけたんだぞ」
「え……」
「え、じぇねえよ。男が欲情せずに一緒に寝れる程度の魅力しかないって思わせたんだぞ」
そうそうーって思わず頷いた。
こうして聞いてると、イッセイ坊ちゃまが意外とまともでビックリした。だてに女遊びしてるワケじゃないんだ。
「ま、俺なら女に恥かかせるようなマネは絶対しねえけど」
いきなりあたしの肩を抱き、イッセイ坊ちゃまがニヤリと笑った。また何かよからぬことを企んでんじゃないだろうか。そう勘繰らずにはいられない、含みのある笑顔だった。

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