ちくわにキュウリをねじ込んでみる～彼と彼女のヒミツの調理実習～

長いモノをこすってとろけさせてみる

　少年が少女がいる部屋にやってくる。
　今日は少女の方から少年へ語りかける。

「今日は一人でする方法を教えてあげる」
「一人で？」

　唐突に告げられた言葉に少年が首を傾げる。
　それを愛おしそうに見詰めながら、少女は言葉を続ける。

「私がいなくてもしたくなることはあるでしょう？」
「えっと、それはその……はぃ」

　少年の恥ずかしそうな様子に、少女は思わず抱きしめたくなる。
　しかし、それは今日の目的にはそわない。
　抱きしめたいという想いだけ抱きしめながら、少女は少年の手を取る。

「簡単よ。これをこするの」
「これを？」

　少女は少年の手を、棒状のモノに導く。
　そして、少年の手に棒状のモノを握らせる。

「最初はゆっくり……ちょっとずつ、はやくしていくのよ」

　少女は少年の手を包み込んで、ゆっくり動かし始める。
　少年は手のひらに棒状のモノを感じ、手の甲に少女の手のひらを感じる。

「この感触をよく覚えておいてね」
「は、はい」

　少年は全神経を手のひらと手の甲に集中する。
　境界は曖昧になっていき、少年は少女の手が棒状のモノに触れているように感じる。
　少年と少女の手は、ひとつになりながら動き続ける。

「なんだか、トロトロしてきました」
「さきっぽがヌルヌルして、すべりがよくなったきたでしょう？」

　自然と手の動きがなめらかに、そして早くなっていく。

「すごい。どんどんトロトロが増えてきました」

　粘度のある液状のモノが、とめどなくあふれてくる。
　そのことに少年は興奮し、手の動きはどんどんと早くなっていく。
　しかし、それをたしなめるように、少女の手が少年の手をやんわりと抑える。

「あせっちゃダメ。そんなに激しくしたら、折れちゃうわよ」

　その言葉に、少年は自分の手が熱くなっていることに気付く。
　このままでは、折れることはなくても、傷がついていた可能性がある。

「ご、ごめんなさい」
「もっと力を抜いて」

　再び少女が少年の手を導き始める。

「こうやって、リズムを取るように動かすの」
「あ、すごい」

　力を入れていないのに、動きがはるかによくなる。
　逆に、力が抜けたことで、意識が集中して鋭敏になる。
　そのことに少年は驚き、今までにない感覚が伝わってくる。

「気持ちいい？」
「気持ちいい……です」

　棒状の長いモノが、先端から白いモノを滲まる。
　それは止まることなく、水たまりのようにたまっていく。
　さらに手を動かすと、白いモノはニチャニチャと音を立ててかき混ぜられる。
　生々しい音と匂いが、少年と少女のもとへ届く。

「くせになりそうです」
「ふふっ。それはよかった」

　五感を刺激する行為に、少年が正直な感想を漏らす。
　それを聞いて、少女も嬉しくなる。

「でも、手が汚れてきちゃいました」

　少年の言葉通り、少年と少女の手は、白いモノにまみれていた。
　しかし、その言葉を聞いても、少女が手を止めることはない。
　むしろ、塗り込むように、なまめかしく手を動かし続ける。

「気にしなくていいのよ。あとで洗えばいいんだから」
「わ、わかりました」

　少女の言葉に、少年は免罪符を得た。
　泥遊びをする子供のように、白いモノにまみれながら、無邪気に手を動かし続ける。
　それが嬉しくて楽しくて、怒られることを怖れることなく、手を動かし続ける。

「はぁはぁはぁはぁ」
「頑張ったわね」

　手が止まったのは、少年と少女の手元に泉ができた後だった。
　その泉は白くてトロリとした液体で満たされていた。

　♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀

　終わった後、少年は急に気恥ずかしくなった。

「ごめんなさい。ボク、夢中になっちゃって」
「ふふっ。一所懸命で可愛かったわよ」

　少女が少年を責めることは無い。
　しかし、そのことが逆に少年に羞恥を覚えさせる。
　一人で行為に耽ってしまったことを申し訳なく感じてしまう。
　その想いを読んだように、少女が少年に声をかける。

「今度から一人でするときも、私としたときのことを思い出してね」
「は、はい。必ず、思い出します」

　少年の返事に少女は満足そうに微笑む。
　自然と視線は重なり合い、見つめ合う。

「あの……」

　かたわらには、二人の共同作業の成果である白いモノがある。
　その存在が、少年に先ほどまでの行為を思い出させる。

「ちょっと……」

　恥ずかしくて、それから目をそらすと、今度は少女と視線が合う。
　その結果、目をそらすことすらできずに、見つめ合いを続ける。

「聞けーーーーーッ！」

　見つめ合いを中断させたのは、第三者の叫び声だった。

「もう、なによ、副部長？」
「今日はなんの会話ですか！　どうせ、いかがわしくないんでしょ！」

　やけくそ気味の副部長の声が家庭科室に響く。

「わかっているなら、聞かないでよ」
「いかがわしくなくても、エロいから聞いているんですよ！」

　副部長が家庭科室を見回す。
　少年と少女がその視線を追うと、頬を赤く染めた女子部員と男子部員が出来上がっていた。

「ほら、前に彼が不器用だって言っていたじゃない。だから、簡単な料理を教えてあげていたの」
「長芋をすってトロロにするのって奥が深いんですね」
「そうよ。なめらかな舌触りにするのはコツがいるの」
「ボク、はやくこすればいいだけだと思っていました」
「情熱に任せて激しくするのも悪くないけど、テクニックも大切よ」

　再現するように、少年と少女が手を動かす。
　それを遠目で眺めていた女子部員と男子部員が、なぜか頬をさらに染める。

「その手つきやめてください！　なにか別のモノをこすっているみたいなんですよ！」
「何を想像しているの？　まったく、いやらしいわねぇ」
「部長が言わないでください！」

　ヒステリックに叫ぶ副部長を放っておいて、少女は白いモノで満たされた器を手に取る。
　そして、トロリとした器の中身を、口の中に流し込む。

「喉の奥でちょっとネバつくけど、濃くてとってもおいしい♪」

　口の端からこぼれそうになった白いモノを、赤い舌でぺろりと舐めとりながら、少女が満足そうに呟いた。