17 / 33
017
しおりを挟む
高校生活は退屈でした。
だって彼がいません。
でも暇だった訳ではありません。
だって彼のためにすることがいっぱいあります。
私は勉強を頑張りました。
彼が東大に行くことになっても大丈夫なようにです。
私は運動を頑張りました。
彼が体育大学に行くことになっても大丈夫なようにです。
一学期が終わりました。
私は全ての科目で上位の成績を取ることができました。
科目によってはテストで一番になりました。
彼と同じ大学に行くための準備は順調です。
「ねぇねぇ、恋バナしよ、恋バナ」
でもひとつだけ予定外のことがありました。
それはルームメイトである先輩の存在です。
ルームメイトは学校側が決めます。
だから知らない人なのは仕方ないです。
予定外なのは別のことです。
具体的にいうと予定外なのは先輩の性格です。
やたらベタベタしてくるのです。
今も私が明日の予習をしているというのに背中に抱き着いてきています。
「ねえったらぁ」
うるさいです。
暑苦しいです。
鬱陶しいです。
勉強の邪魔です。
「先輩、離れてください」
「あ~ん、いけずぅ」
でも相手は高校の先輩です。
あまり無碍にするわけにもいきません。
学校では成績だけでなく生活態度も大切です。
寮での生活は寮母さんや他の生徒達に見られています。
私は品行方正で完璧な生徒にならなければなりません。
友人関係や先輩後輩関係も完璧でなければなりません。
鬱陶しい先輩とも良好な関係を築く必要があります。
だから私は先輩の話に少しだけ付き合うことにしました。
「それでなんの話をするんですか?」
「だから恋バナだよ、恋バナ」
引っぺがしながら改めて尋ねると先輩が答えてきました。
どうやら先輩は恋バナをご所望のようです。
高校と寮は山奥にあります。
娯楽に飢えているのでしょうか。
「私、ずっと女子校だったから、男の子との学校生活って体験したことがないの。だから、共学ってどんな感じか話を聞いてみたかったんだぁ」
なるほど。
娯楽に飢えているのではなく男に飢えているようです。
そういうことであれば私はご期待に沿えそうにありません。
だって私は生まれてからずっと彼一筋なのですから。
「共学といっても女子校と変わりませんよ。教室で受ける授業は男女一緒ですけど、授業中に男女で話したりはしませんし、体育などは男女別ですから」
「でも、部活動とかは一緒だよね?」
「そうですけど、私はそういった部には入っていませんでしたから」
「そうなんだぁ」
先輩はつまらなさそうに呟きます。
やはりご期待には沿えなかったようです。
ですがこればかりは仕方ありません。
私の全ての時間は彼のためにあるのですから。
授業で拘束されない時間は全て彼のために使いました。
授業で拘束されている時間も常に彼のことを考えました。
彼以外のために時間を使うことなんてありませんでした。
彼以外と交際することなんてありえませんでした。
「学校で仲良くなった男の子はいなかったの?」
「いません」
先輩の問いに私は即答しました。
私と彼の関係は生まれたときからです。
だから学校で仲良くなったわけではありません。
私と彼は生まれたときから結ばれるのが決まっていたのです。
「そっか。じゃあ、あなたも恋愛初心者なんだ」
仲間ができたとでも思ったのか先輩は嬉しそうでした。
私には彼という存在がいるのですがあえて否定はしませんでした。
こういうときは先輩の顔を立てた方がよいと考えたからです。
これで少しは先輩と良好な関係を築くことができたでしょうか。
良好な関係を築くコツは嘘をつかないことです。
嘘はバレる可能性があるからです。
嘘はつかずに本当のことは口に出さない。
これが良好な関係を築くコツだと思います。
「なら、私と一緒に恋愛の勉強してみない? 明日の放課後、付き合って」
でも嘘はつかず本当のことを口に出さなくても予想外のことが起きることはあります。
私のことを恋愛初心者だと思った先輩が恋愛の勉強とやらに誘ってきました。
なにやらあやしげなお誘いです。
でも山奥でそれほどおかしなことは行われないだろうと考えて私は先輩に付き合うことにしました。
だって彼がいません。
でも暇だった訳ではありません。
だって彼のためにすることがいっぱいあります。
私は勉強を頑張りました。
彼が東大に行くことになっても大丈夫なようにです。
私は運動を頑張りました。
彼が体育大学に行くことになっても大丈夫なようにです。
一学期が終わりました。
私は全ての科目で上位の成績を取ることができました。
科目によってはテストで一番になりました。
彼と同じ大学に行くための準備は順調です。
「ねぇねぇ、恋バナしよ、恋バナ」
でもひとつだけ予定外のことがありました。
それはルームメイトである先輩の存在です。
ルームメイトは学校側が決めます。
だから知らない人なのは仕方ないです。
予定外なのは別のことです。
具体的にいうと予定外なのは先輩の性格です。
やたらベタベタしてくるのです。
今も私が明日の予習をしているというのに背中に抱き着いてきています。
「ねえったらぁ」
うるさいです。
暑苦しいです。
鬱陶しいです。
勉強の邪魔です。
「先輩、離れてください」
「あ~ん、いけずぅ」
でも相手は高校の先輩です。
あまり無碍にするわけにもいきません。
学校では成績だけでなく生活態度も大切です。
寮での生活は寮母さんや他の生徒達に見られています。
私は品行方正で完璧な生徒にならなければなりません。
友人関係や先輩後輩関係も完璧でなければなりません。
鬱陶しい先輩とも良好な関係を築く必要があります。
だから私は先輩の話に少しだけ付き合うことにしました。
「それでなんの話をするんですか?」
「だから恋バナだよ、恋バナ」
引っぺがしながら改めて尋ねると先輩が答えてきました。
どうやら先輩は恋バナをご所望のようです。
高校と寮は山奥にあります。
娯楽に飢えているのでしょうか。
「私、ずっと女子校だったから、男の子との学校生活って体験したことがないの。だから、共学ってどんな感じか話を聞いてみたかったんだぁ」
なるほど。
娯楽に飢えているのではなく男に飢えているようです。
そういうことであれば私はご期待に沿えそうにありません。
だって私は生まれてからずっと彼一筋なのですから。
「共学といっても女子校と変わりませんよ。教室で受ける授業は男女一緒ですけど、授業中に男女で話したりはしませんし、体育などは男女別ですから」
「でも、部活動とかは一緒だよね?」
「そうですけど、私はそういった部には入っていませんでしたから」
「そうなんだぁ」
先輩はつまらなさそうに呟きます。
やはりご期待には沿えなかったようです。
ですがこればかりは仕方ありません。
私の全ての時間は彼のためにあるのですから。
授業で拘束されない時間は全て彼のために使いました。
授業で拘束されている時間も常に彼のことを考えました。
彼以外のために時間を使うことなんてありませんでした。
彼以外と交際することなんてありえませんでした。
「学校で仲良くなった男の子はいなかったの?」
「いません」
先輩の問いに私は即答しました。
私と彼の関係は生まれたときからです。
だから学校で仲良くなったわけではありません。
私と彼は生まれたときから結ばれるのが決まっていたのです。
「そっか。じゃあ、あなたも恋愛初心者なんだ」
仲間ができたとでも思ったのか先輩は嬉しそうでした。
私には彼という存在がいるのですがあえて否定はしませんでした。
こういうときは先輩の顔を立てた方がよいと考えたからです。
これで少しは先輩と良好な関係を築くことができたでしょうか。
良好な関係を築くコツは嘘をつかないことです。
嘘はバレる可能性があるからです。
嘘はつかずに本当のことは口に出さない。
これが良好な関係を築くコツだと思います。
「なら、私と一緒に恋愛の勉強してみない? 明日の放課後、付き合って」
でも嘘はつかず本当のことを口に出さなくても予想外のことが起きることはあります。
私のことを恋愛初心者だと思った先輩が恋愛の勉強とやらに誘ってきました。
なにやらあやしげなお誘いです。
でも山奥でそれほどおかしなことは行われないだろうと考えて私は先輩に付き合うことにしました。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
となりの席の変態さん
犬派のノラ猫
ライト文芸
のんびりとした休み時間
今日も今日とていつものように
君は俺に話し掛けてくる。
これは二人の秘密の雑談から
始まるすこし変わった彼女と俺との
青春の物語。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる