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第二話 ストッキングが盗まれた。破廉恥!百足怪人ムカデラス
遭遇
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ローズソックス工場敷地内の左隅の倉庫付近を、以前に森屋靴下の工場でストッキングを盗み出した主謀者である百足と取り巻きのピンクタイツ達が、こそ泥みたいに周囲に目を配りながらうろつき回っていた。
「ここだ」
百足が取り巻きに言うように、辿り着いた倉庫を幾十本も手のうちの一本で指さす。
倉庫の入り口は当然施錠がしてあり、普通なら易々と侵入することはできない。しかし彼等は悪の組織シキヨクマー、並大抵のセキリュティなら破ることなどお手の物だ。
「お前やれ」
百足が取り巻きのピンクタイツ一人に命じる。
命じられた一人は入り口傍のロック装置に、手を伸ばした。その時だ。
「そこまでよ!」
近くから威勢のいい女性の声が響いた。
シキヨクマーの怪人とピンクタイツ達は、左右に警戒を視線を走らせる。
「こっちよ!」
女性の声は彼等の上方から聞こえてきている。彼等は声のした方を振り仰ぐ。
倉庫の天井の真夜中の月明かりに照らされた、赤いワンピース水着の女性の堂々たる立ち姿が目に入った。
「お前は誰だ」
百足は天井の女性に傲然と誰何した。
女性は不敵に笑みを零す。
「グラドルレンジャーのレッドよ」
レッドが名乗ると、それを合図にして彼女の後ろから四人が横一列に散開した。
「グラビア~、ブルー」
「グラビア~、イエロー」
「グラビア~、グリーン」
「グラビア~、パープル」
四人はそれぞれポージングして参上した。
百足は誰何した相手の正体がわかった途端、バハハハハと彼女らを見下すように声をあげて笑った。
「何がおかしい?」
「婦女子どもに倒される俺ではないわ、バハハハハ」
鼻にもかけない怪人の態度に、レッドは向かっ腹を立てた。
「なんですって。今に見てなさい、その女性偏見の認識を改めさせてやるわ!」
レッドは百足に叫んで、左右の仲間に準備はいいと目配せする。四人は頷く。
「それじゃ皆、いくわよ」
レンジャー五人は足を踏み出し、倉庫の屋根から跳躍した。
レッド、ブルー、イエロー、グリーン、パープルの順で片膝をついて柔らかく着地する。すっくと立ちあがって、敵と対峙する。ちなみに、彼女らが立ち上がった直後に豊かな乳房が揺れるのが見られるのだが、この場に胸の揺れに興味ある者はいない。
「お前達、やってしまえ」
百足が取り巻きのタイツの男達に命令する。タイツの男達は命令に従い、レンジャー五人に襲い掛かる。
レンジャー五人は不慣れながらも応戦した。身体の使い方や間合いなど考えなしの格闘だった。
倉庫の入り口で入り乱れて戦っている取り巻き達を傍観している百足は、徐々に劣勢になっていく戦闘状況に見切りをつけた。
――――逃げよう、レンジャーとの戦闘は目的外だしな。
逃亡する自身を正当化して、背を向けてその場を離れる。後ろを顧みずに工場の外まで走り去った。
ピンクタイツ達さえ気づかぬ間に怪人が逃げ出したことなど知らず、レンジャー五人はタイツの男の最後一人を昏倒させた。
「あんたの仲間は全員倒したわよ!」
息切れしながらもレッドは意気盛んに告げたが、百足の姿はどこにも見えない。
ふつふつとレッドは腸を煮えくり返す。
「変態怪人め、どこにいった!」
彼女の声は工場内にむなしく響く。
隣でブルーが舌打ちする。
「敵前逃亡たあ、とんだ腰抜けの怪人だぜ」
「どうするんです、追いかけるんですか?」
イエローが尋ねると、レッドは顔の前で手を振った。
「やめときましょ、工場の外だったら探し出せないもの」
「そうね。レッドの言う通りだと思うわ」
グリーンが疲弊した声で同意した。
「次は仕留めたいわねえ」
パープルは悔しさを籠めて言った。
シキヨクマーの本部基地に逃げ帰った百足は、小柄で丸眼鏡の頭皮がギトギトしたシキヨクマー幹部のギャルゲ大佐に戒めの鞭撻をもらった。
「レンジャーどもに無様を晒しよって、それでも貴様はシキヨクマーの一員か」
百足は幹部の足下に片膝をついて跪いている。
「はっ、申し訳ございません。戦闘員どもの劣勢を見て、逃げるのが得策かと判断いたしました」
「腑抜けが。終いには目的物の窃取をできておらんじゃないか」
「お許しを。次は必ずや目的物を盗み出してまいります」
猛省して誓う百足に、幹部の怒りも鎮まっていく。
「もういい、頭を上げろ」
「はっ」
百足は指示どおり、伏せていた頭を上げて幹部に視線を置く。
「ムカデラス、貴様に新たな指令を受けてもらう」
「はっ、如何なことでしょう」
「レンジャー五人を誘い出し、抹殺しろ」
厳然たる表情で幹部は告げた。ムカデラスと呼ばれた怪人もつられたようになお気を引き締める。
ムカデラスの真意を探るように幹部が訊く。
「できるな?」
「もちろんでございます。必ずやレンジャー五人を抹殺します」
「よろしい。早急に準備にかかれ」
「はっ」
命令を聞き入れるとムカデラスは腰を上げて反転し、出入り口から幹部室を辞去した。
「ここだ」
百足が取り巻きに言うように、辿り着いた倉庫を幾十本も手のうちの一本で指さす。
倉庫の入り口は当然施錠がしてあり、普通なら易々と侵入することはできない。しかし彼等は悪の組織シキヨクマー、並大抵のセキリュティなら破ることなどお手の物だ。
「お前やれ」
百足が取り巻きのピンクタイツ一人に命じる。
命じられた一人は入り口傍のロック装置に、手を伸ばした。その時だ。
「そこまでよ!」
近くから威勢のいい女性の声が響いた。
シキヨクマーの怪人とピンクタイツ達は、左右に警戒を視線を走らせる。
「こっちよ!」
女性の声は彼等の上方から聞こえてきている。彼等は声のした方を振り仰ぐ。
倉庫の天井の真夜中の月明かりに照らされた、赤いワンピース水着の女性の堂々たる立ち姿が目に入った。
「お前は誰だ」
百足は天井の女性に傲然と誰何した。
女性は不敵に笑みを零す。
「グラドルレンジャーのレッドよ」
レッドが名乗ると、それを合図にして彼女の後ろから四人が横一列に散開した。
「グラビア~、ブルー」
「グラビア~、イエロー」
「グラビア~、グリーン」
「グラビア~、パープル」
四人はそれぞれポージングして参上した。
百足は誰何した相手の正体がわかった途端、バハハハハと彼女らを見下すように声をあげて笑った。
「何がおかしい?」
「婦女子どもに倒される俺ではないわ、バハハハハ」
鼻にもかけない怪人の態度に、レッドは向かっ腹を立てた。
「なんですって。今に見てなさい、その女性偏見の認識を改めさせてやるわ!」
レッドは百足に叫んで、左右の仲間に準備はいいと目配せする。四人は頷く。
「それじゃ皆、いくわよ」
レンジャー五人は足を踏み出し、倉庫の屋根から跳躍した。
レッド、ブルー、イエロー、グリーン、パープルの順で片膝をついて柔らかく着地する。すっくと立ちあがって、敵と対峙する。ちなみに、彼女らが立ち上がった直後に豊かな乳房が揺れるのが見られるのだが、この場に胸の揺れに興味ある者はいない。
「お前達、やってしまえ」
百足が取り巻きのタイツの男達に命令する。タイツの男達は命令に従い、レンジャー五人に襲い掛かる。
レンジャー五人は不慣れながらも応戦した。身体の使い方や間合いなど考えなしの格闘だった。
倉庫の入り口で入り乱れて戦っている取り巻き達を傍観している百足は、徐々に劣勢になっていく戦闘状況に見切りをつけた。
――――逃げよう、レンジャーとの戦闘は目的外だしな。
逃亡する自身を正当化して、背を向けてその場を離れる。後ろを顧みずに工場の外まで走り去った。
ピンクタイツ達さえ気づかぬ間に怪人が逃げ出したことなど知らず、レンジャー五人はタイツの男の最後一人を昏倒させた。
「あんたの仲間は全員倒したわよ!」
息切れしながらもレッドは意気盛んに告げたが、百足の姿はどこにも見えない。
ふつふつとレッドは腸を煮えくり返す。
「変態怪人め、どこにいった!」
彼女の声は工場内にむなしく響く。
隣でブルーが舌打ちする。
「敵前逃亡たあ、とんだ腰抜けの怪人だぜ」
「どうするんです、追いかけるんですか?」
イエローが尋ねると、レッドは顔の前で手を振った。
「やめときましょ、工場の外だったら探し出せないもの」
「そうね。レッドの言う通りだと思うわ」
グリーンが疲弊した声で同意した。
「次は仕留めたいわねえ」
パープルは悔しさを籠めて言った。
シキヨクマーの本部基地に逃げ帰った百足は、小柄で丸眼鏡の頭皮がギトギトしたシキヨクマー幹部のギャルゲ大佐に戒めの鞭撻をもらった。
「レンジャーどもに無様を晒しよって、それでも貴様はシキヨクマーの一員か」
百足は幹部の足下に片膝をついて跪いている。
「はっ、申し訳ございません。戦闘員どもの劣勢を見て、逃げるのが得策かと判断いたしました」
「腑抜けが。終いには目的物の窃取をできておらんじゃないか」
「お許しを。次は必ずや目的物を盗み出してまいります」
猛省して誓う百足に、幹部の怒りも鎮まっていく。
「もういい、頭を上げろ」
「はっ」
百足は指示どおり、伏せていた頭を上げて幹部に視線を置く。
「ムカデラス、貴様に新たな指令を受けてもらう」
「はっ、如何なことでしょう」
「レンジャー五人を誘い出し、抹殺しろ」
厳然たる表情で幹部は告げた。ムカデラスと呼ばれた怪人もつられたようになお気を引き締める。
ムカデラスの真意を探るように幹部が訊く。
「できるな?」
「もちろんでございます。必ずやレンジャー五人を抹殺します」
「よろしい。早急に準備にかかれ」
「はっ」
命令を聞き入れるとムカデラスは腰を上げて反転し、出入り口から幹部室を辞去した。
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