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龍樹と遥は龍樹の運転する車で
夕方頃に家に帰ってきて
軽く食事を取ろうとしていた。
今まで龍樹は家で食事を取る事も無く
自炊する事が出来ないことを遥に告げた。
遥は毎日欠かすことなく
龍樹の食事を作り食卓に並べていた。
寝る前にリビングを覗くと
手をつけられていない料理が
そのまま残されており
ラップをかけて冷蔵庫の中に入れて
翌日のお昼に温めて食べるというのが
毎日のルーティンだった。
龍樹はそれを知りながらも
頑なに遥の料理を食べようとはせず
いいざまだと心の中で嘲笑っていた。
しかし、今までのままではいけないと
心を入れ替えることを決めた龍樹は
驚くべき行動に出る。
遥に料理を教えてくれと頼んだのだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
side.龍樹
「俺は遥が作った料理を
今まで一度も食べなかった。
本当に申し訳なかった。
そんな最低なことをした俺が
頼める立場ではないが
料理を教えてくれないか?
出来れば遥の好きな料理を…」
今までの俺は遥の好きな料理も
得意な料理も知らなかった。
思い返せば両家の顔合わせ以外で
俺と一緒に食事をしたことが無い遥は
俺の好きな料理を知らないはずなのに
食卓の上にはいつも俺の好きな料理が
必ず一品は用意されていた。
きっと母に聞いて用意したのだろう。
そんな遥の深い愛情表現に対して
俺はなんて最低なことをしていたんだと
胸が締め付けられ、遥が今まで
俺にしてきてくれたことを
これからは俺が返していこうと決意して
遥にお願いをしたのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
side.遥
僕は龍樹さんの話を聞いて
思わず泣いてしまった。
記憶が無いはずなのに
心のどこかが覚えている気がして…
龍樹さんの話を聞くと
僕は毎日独りで
食事をしていたことが分かった。
小さい頃から僕の両親はとても忙しくて
家族で一緒に食卓を囲むことは無い。
そんな僕は昔から
家族で食卓を囲むのを夢見ている。
どうやら記憶を失っている間も
そんな小さな夢は叶っていなかったようだ。
しかし、先程の龍樹さんの言い方では
一緒に食卓を囲もうと
提案されている気がして問いかけてみた。
「退院する時に先生から
僕の両親は嫁に出た息子を
加賀美家の人間ではないと
思っていると聞きました。
今の僕は高校からの記憶もなくて
龍樹さんが僕の唯一の家族なんですよね?
僕は家族と食卓を囲むのが夢なんです。
龍樹さんの話を聞く限り
僕と龍樹さんが
家族って呼べる関係なのかは
分からないけど…
悲しい記憶を思い出すより
楽しい思い出を龍樹さんと一緒に
これから作っていきたいです。
僕の夢を叶えてくれますか…?」
龍樹さんは目を見開いたあと
静かに目を伏せて言葉を紡ぎ始めた。
「俺が遥に今までしてきたことは
夫である以前に人として
最低なことばかりで
遥と俺の関係は家族とは呼べない。
遥の記憶が無いのをいい事に
俺は遥との関係を一から
やり直そうとしている卑怯な人間だ。
けど…遥がこれから俺と
家族になろうとしてくれるなら
俺はどんなことでもする。」
龍樹さんは僕に記憶が無いのを
先生から聞いて分かっているのに
自分の過去の過ちを打ち明けてくれた。
僕がこの先、記憶を思い出しても
同じことを思えるのかは分からないが
今の僕にはそれだけで十分だった。
龍樹さんの言葉を聞いた僕が
泣きじゃくってしまって
龍樹さんが僕を慰めるために
右往左往しているのを見て
涙が少しづつ引いていった。
落ち着いたあとは
2人で初めて料理を作ることにした。
龍樹さんは "僕の好きな料理を"と
希望していたので
ハンバーグを作ることにした。
しかし、僕は足の裏が痛くて
立つことは難しかったので
リビングの椅子を
龍樹さんに運んでもらい
座ったまま指示を出す係になったが
サラダに添えるトマトを切る
龍樹さんの包丁さばきを見て
コンソメスープとパスタとサラダに
メニューを変更することにした。
パスタは麺を茹でて
ソースを和えれば完成するし
コンソメスープは見栄えが悪くても
野菜を切って煮込むだけだから
料理初心者でも簡単なはずだ。
2人で料理を作っていると
結構な時間が経過していて
食卓に並んだ頃には19時になっていた。
龍樹さんは
とても美味しそうに食べながら
僕の足が治ったら一緒に
食器を買いに行こうと言ってくれた。
龍樹さんからは
病み上がりだからという理由で
シャワーを浴びる許可が下りず
そのまま眠りにつくことになったが
僕はとても幸せな気持ちで
眠りについたのだった。
夕方頃に家に帰ってきて
軽く食事を取ろうとしていた。
今まで龍樹は家で食事を取る事も無く
自炊する事が出来ないことを遥に告げた。
遥は毎日欠かすことなく
龍樹の食事を作り食卓に並べていた。
寝る前にリビングを覗くと
手をつけられていない料理が
そのまま残されており
ラップをかけて冷蔵庫の中に入れて
翌日のお昼に温めて食べるというのが
毎日のルーティンだった。
龍樹はそれを知りながらも
頑なに遥の料理を食べようとはせず
いいざまだと心の中で嘲笑っていた。
しかし、今までのままではいけないと
心を入れ替えることを決めた龍樹は
驚くべき行動に出る。
遥に料理を教えてくれと頼んだのだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
side.龍樹
「俺は遥が作った料理を
今まで一度も食べなかった。
本当に申し訳なかった。
そんな最低なことをした俺が
頼める立場ではないが
料理を教えてくれないか?
出来れば遥の好きな料理を…」
今までの俺は遥の好きな料理も
得意な料理も知らなかった。
思い返せば両家の顔合わせ以外で
俺と一緒に食事をしたことが無い遥は
俺の好きな料理を知らないはずなのに
食卓の上にはいつも俺の好きな料理が
必ず一品は用意されていた。
きっと母に聞いて用意したのだろう。
そんな遥の深い愛情表現に対して
俺はなんて最低なことをしていたんだと
胸が締め付けられ、遥が今まで
俺にしてきてくれたことを
これからは俺が返していこうと決意して
遥にお願いをしたのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
side.遥
僕は龍樹さんの話を聞いて
思わず泣いてしまった。
記憶が無いはずなのに
心のどこかが覚えている気がして…
龍樹さんの話を聞くと
僕は毎日独りで
食事をしていたことが分かった。
小さい頃から僕の両親はとても忙しくて
家族で一緒に食卓を囲むことは無い。
そんな僕は昔から
家族で食卓を囲むのを夢見ている。
どうやら記憶を失っている間も
そんな小さな夢は叶っていなかったようだ。
しかし、先程の龍樹さんの言い方では
一緒に食卓を囲もうと
提案されている気がして問いかけてみた。
「退院する時に先生から
僕の両親は嫁に出た息子を
加賀美家の人間ではないと
思っていると聞きました。
今の僕は高校からの記憶もなくて
龍樹さんが僕の唯一の家族なんですよね?
僕は家族と食卓を囲むのが夢なんです。
龍樹さんの話を聞く限り
僕と龍樹さんが
家族って呼べる関係なのかは
分からないけど…
悲しい記憶を思い出すより
楽しい思い出を龍樹さんと一緒に
これから作っていきたいです。
僕の夢を叶えてくれますか…?」
龍樹さんは目を見開いたあと
静かに目を伏せて言葉を紡ぎ始めた。
「俺が遥に今までしてきたことは
夫である以前に人として
最低なことばかりで
遥と俺の関係は家族とは呼べない。
遥の記憶が無いのをいい事に
俺は遥との関係を一から
やり直そうとしている卑怯な人間だ。
けど…遥がこれから俺と
家族になろうとしてくれるなら
俺はどんなことでもする。」
龍樹さんは僕に記憶が無いのを
先生から聞いて分かっているのに
自分の過去の過ちを打ち明けてくれた。
僕がこの先、記憶を思い出しても
同じことを思えるのかは分からないが
今の僕にはそれだけで十分だった。
龍樹さんの言葉を聞いた僕が
泣きじゃくってしまって
龍樹さんが僕を慰めるために
右往左往しているのを見て
涙が少しづつ引いていった。
落ち着いたあとは
2人で初めて料理を作ることにした。
龍樹さんは "僕の好きな料理を"と
希望していたので
ハンバーグを作ることにした。
しかし、僕は足の裏が痛くて
立つことは難しかったので
リビングの椅子を
龍樹さんに運んでもらい
座ったまま指示を出す係になったが
サラダに添えるトマトを切る
龍樹さんの包丁さばきを見て
コンソメスープとパスタとサラダに
メニューを変更することにした。
パスタは麺を茹でて
ソースを和えれば完成するし
コンソメスープは見栄えが悪くても
野菜を切って煮込むだけだから
料理初心者でも簡単なはずだ。
2人で料理を作っていると
結構な時間が経過していて
食卓に並んだ頃には19時になっていた。
龍樹さんは
とても美味しそうに食べながら
僕の足が治ったら一緒に
食器を買いに行こうと言ってくれた。
龍樹さんからは
病み上がりだからという理由で
シャワーを浴びる許可が下りず
そのまま眠りにつくことになったが
僕はとても幸せな気持ちで
眠りについたのだった。
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