絆物語

藤原葉月

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第18話

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「ほんとに不思議な女王様だよね」
ゴウは、少しからかうように近づいた。
さっきは2人きりの世界で、ちょっと近寄りがたかったから。

「お前、聞いていたのか?」
ヨシは、ゴウから後ずさりをする。

「ったく、いい加減治せよなぁ?人嫌いを」
「・・・・すまない。まだ、慣れない」

「なぁ、俺らと旅しないか?きっと・・・・」
ゴウが何かを言い終わる前に
「僕は、君たちとは・・・・」

被せてきたので、

「最後まで聞けよ!あー!もう!焦れったいなぁ!!そうやってあんたは、いつまでも仲間を信じないで生きていくのかよっ!!」

我慢できずにゴウは叫ぶ。

「それは・・・・」
「ゴウ、強引に話を進めるなよ。」
「そうですよ、兄さんは、強引過ぎます」

「ねぇ、ヨシさん」
ケンは落ち着いて話し始めた。

「ヨシさん、僕言ったよね?母親を目の前で殺されたって。その後、本当の父親ではない人に育てられたんだ。たぶん、僕の父と母と親しかった人だって聞いた。僕は強くなりたくてこの旅に出た。もちろん、母の仇を討ちたいのもある。最初は怖かった。ものすごく怖くてにげたかった。でもね?この《剣》が教えてくれたんだ。【逃げるな!】って」


「逃げるな・・・・」


「今は逃げなくてよかったって思ってるよ!ヨシさん、あなたもきっとそう思えるようになるよ!」
「・・・・・・」
「ヨシさん、一緒に旅をしましょうよ!この国を・・・
いや、それぞれの国を守るために!」
みんなが色々ヨシに言っていたがヨシの心を動かす言葉がうまく見つからないようだ。

「とりあえず、出発しましょうか。ヨシさん、ちゃんとお父様にお別れを言いましたか?」

ヒロさんが聞くと、
「どうしても一緒じゃなきなダメなのか?」
「まぁ?別行動してても構わねぇけど」
「ゴウくん・・・」
「兄さんってば!」
「仕方ないですね。でも、これだけは約束します。僕達は、あなたを裏切ったりしません」
「えっ?」
戸惑うヨシさん。
「なんでそんな簡単に約束できたりするんだよ」
「信頼できるからだ」

「でも、数回しか会ったことも話したことも無い相手だったりするんだぞ?」
「それは、旅をするものなら経験することです」
「でも、人は・・・人の心は!!」
「そうやっていつも悲観的な考えばかりするからあんたは《人》と、上手く付き合えないんだよ。あんたの大事なミュウは、あの女王さんがあんたを変えてくれるってわかったから、懐いたんだ。そうだよな?ミュウ」
「ミュウミュウ!」
ミュウは、迷うことなくゴウの元へと行った。
「ミュウは、人間の言葉が理解出来る不思議な動物なんですね。大切にしなくてはダメですよ?」
「わかってるよ」

なみだがあふれはじめた。
「わかってるよ。全部分かっているんだ!?」
-(僕がひとりぼっちになってしまったことも・・・・)

「あ、あんた今、《1人になってしまった》とか思っただろ」
「えっ?」
「当たりだ」

図星だ。なぜだ?こいつは人の心を読むのか?
「たったいま、ものすごくそういう顔をしたから」
「あんたに何が分かるんだよ!家族を失った心なんて・・・」

「あんたは、人の話をぜんぜんきいてねぇ。」
「その話は、奴らを倒してからですね」
と、ヒロは身構えている。
するとみんなも身構えている?

もの凄い妖気が近づいてきている! 
「この妖気は・・・、今までで戦ってきた相手とは格段に妖力の強さが違うからみなさん気をつけて!」
「・・・・・」
僕にはわからない。まだみんなを信用出来ないんだ。
なぜ、戦わなきゃいけないんだ!_」
「ヨシさん、なにを突っ立っているんですか!早く!!」
「走りますよ?」
ヒロはヨシの手を掴んだ。
「走るって・・・・」
「この敵から逃げるにはそうするしかないんですよ。自分が怪我をしないために。あと、仲間が怪我しないために」
「だけど逃げるなんて・・・・」
「俺らしくないってか」
「でも逃げやきゃダメな時もありますよ?相手が強すぎます」
「・・・・・」
ほかの4人もその意見に頷いている。
「強すぎる相手・・・か」

ヨシは、5人とともに、その妖気から逃げながら思っていた。

そもそもこれが【闘う】ってことなのか?
仲間を分かり合えってことのか?

まだ、わからないんだ。
父さん、僕はどうすればいいんですか?

「この妖気が狙うのは恐らく俺たちじゃなさそうだな」
「まさか、俺たちを狙っているのではなく・・・力のない村人を?」
「あぁ、そうだ。この近くと言えばあそこだ」
「どうやって」
「とにかく急ごう」
「えっ?」
「人々を助けなきゃ」

5人は迷わずその村へと入っていった。

(1人くらいいなくてもなんとかなるだろう)

だがヨシのその考えが、後で大変な事件になるなんて誰も思わずにいた。



    
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