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第13話 変わる関係
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「・・・・竹・・・・」
「・・あっ、サリーちゃん」
「・・・竹・・・あのさ・・・明日舞台が終わったら・・・・」
サリーちゃんはなにかを言おうとしていたみたいだが・・・。
「・・・打ち上げですね?任せてください!俺が今度は腕を振るいます!」
「・・竹が料理を作るの?」
「・・・秘密ですよ?楽しみにしていてくださいね?」
「・・・って・・・そうじゃなくて・・・・」
「・・・えっ?」
「・・・竹の手料理大丈夫なのー?」
「・・大丈夫ですよ!レシピだってほら、もらってきたし・・・。ちょっと仕込みをしておこうかなって・・・」
「・・そう・・・。なら、楽しみにしてる。じゃあ」
と、行ってしまったサリーちゃん・・。
「・・・サリーちゃん?」
「・・・楽しみにしてるわ~💖だって・・・!あんたさぁ~なにか言いなさいよね」
「・・・ま、真理ちゃん・・・・」
「・・・鈍感なんだから!!」
「・・・えっ?鈍感?」
「・・・今、愛しのサリーちゃんが、誘っていたのも・・・急に優しくなった気がするのも・・・全然わからないの?」
「・・・えっ?待ってください・・・・俺、サリーちゃんに誘われていたんですか?」
「・・・(悔しいから)教えてあげない!」
「・・・えっ!教えない?鈍感?なんでですか!真理ちゃん!なんで怒ってるんですか・・・」
「・・・明日になればわかるんじゃない?きっと・・・・
サリーも気づいちゃったわけだし・・・・」
「・・・えっ・・・?何をいってるんですか?」
こいつも鈍感だけど、サリーもサリーよ!!!
「・・・じゃあ、明日頑張ろうね(ここは笑顔笑顔・・・・なんかバカみたい・・・・)」
ブンブン
手を繋ぎ手を振られる竹・・・
「・・・・?」
サリーちゃんは、なにか言おうとしてたし、なんかいつもと様子違うし・・・・
なんなんだろう。
竹はまさかサリーちゃんが自分のことを思ってくれてるなんて思ってもみなかったんだろう。
むしろ、諦めるつもりでいたみたいだ。
「・・・わたし、明日のテープの準備するね(泣き顔見られたくないし・・・・・)」
「・・・じゃあ、またあとで・・・・」
そんなやり取りのなか・・・・
「・・・・・はぁ・・・・」
1人佇むサリーちゃん。
「・・・サリーも、サリーだよね・・・・」
「・・・Σ(; ゚Д゚)ドキン」
突然背後から現れた真理ちゃんに驚くサリーちゃん。
「・・・真理・・・・・」
「・・・今頃気づくなんてズルいよ!ずっと気付かないで欲しかった・・・・😭」
「・・・・・・・」
「・・・そうすれば、竹は・・・・
竹の気持ちはいつか私の方に向くはずだった・・・・
なのにあんたが気づいてしまったから・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・私の方が先に竹のことを思っていたのに・・・・ズルいよ!!」
突然泣かれてしまい、なにも言えずにいたサリーちゃんだが・・・・
「・・・ごめんね、真理・・・ごめん・・・・」
「・・・あいつ・・・明日田舎帰っちゃうらしいよ?」
「・・・えっ・・・・」
「・・・田舎帰ったあと継ぐんじゃないかな・・・・」
「・・・・・・」
「・・・だから、最後に私たちに手料理を食べてほしいんじゃないかな」
えっ・・・それって・・・
「・・・う、嘘・・・そんなこと一言も言ってなかったわよ?私・・聞いてない何かの間違いよ」
「・・・サリーには言わないつもりなんだよ、きっと・・・・」
「・・・そんな・・・そんな!」
と、走り出してしまったサリーちゃん。
「・・・・嘘だけどね・・・・」
と呟く真理ちゃん。
えっ?
嘘?
「・・・いいよね・・・これくらいの嘘・・・・」
「・・・俺、田舎には報告に行くつもりです!」
「(田舎に帰るのは本当だもの)」
だけど、真理ちゃんの精一杯の嘘を、素直に受け止めてしまったらサリーちゃんは・・・・
「・・・竹のバカっ!」
それは、竹と離れたくないという竹へのサリーちゃんの思いが強くなっていたから・・・・・。
なぁ?弘子・・・・こんな他愛もないうそは、次の恋を作るんだよな・・・・。
「・・・真理ちゃんってさ、わかりやすい嘘つくんだな」
真理ちゃんに近づいたのは、彼女の幼なじみの准。
「・・・竹が田舎に帰って実家を継ぐ・・・なんてわかりやすいうそ・・・」
「・・・悔しかったの。お互い思ってるときに限って鈍感なサリーと竹の関係が・・・壊れてしまえばいいのにって・・・・・」
「・・・・真理ちゃん・・・・・」
「・・・私っていつまでも嫌な女だよね・・・」
「・・・・・・」
「・・・・おかしいでしょ?おかしければ笑っていいのよ?」
「・・・・・・」
「・・・笑いなさいよ!」
「・・・笑わないよ・・・・。俺は、真理ちゃんの幼なじみだぜ?いったい何年・・・何度・・・・そんな真理ちゃんをずっと見てきてると思ってるんだよ!」
「・・・・准・・・・」
「・・・・俺は、そんな真理ちゃんでも好きだ!ずっと好きだ!・・・・だから、好きなだけ泣けよ・・・・」
「・・・・・・」
「・・・こんな俺でよければ・・・そばにいてやるから・・・・・。真理ちゃんが流した涙は、俺が全部受け止めてやるよ!」
「・・・・・ありがとう、准・・・・」
なぁ?弘子。
お前は今、何を想ってる?
俺がいなくてもちゃんとやっていけるか?
俺には迷いがあった。
お前がなぜ泣いていたのか・・・・。
素直に気持ちを伝えれなかったのか・・・・。
お前のお陰で夢が叶いそうなんだ。
10年前の人間が、10年後の世界で夢を叶えるなんて誰も思わないだろう?
俺は、信じてる・・・・
10年後・・・お前の゛弟゛になったやつがいい役者であることを・・・・。
「・・・・えっ?何をいってるの?」
弘子は、手紙を読みながら和也の方を向き・・・
・・・ちなみに~俺が今いる劇団のリーダーは、゛和也゛って言うんだ。
「・・・えっ?和也?」
さらに驚く弘子。
「・・えっなに?俺がどうしたの?」
「・・・まさかね・・・・」
弘子は、そんな独り言を言いつつ・・・・
「・・・そうだ、和也。新作ができそうよ。
舞台名は・・・・《神様がくれた奇跡》。主役は、和也・・・・あなたよ?・・・涼がくれた手紙で思い付いたの・・・・。」
弘子は、涙をこらえていた。
和也はそんな弘子を抱きしめ・・・・
「・・・姉さん、泣いていいから。悲しみをもう、閉じ込めないで?」
そんなやり取りが、あったとは・・・・
「・・・涼?なんでお前が泣いてるんだよ・・・どうしたんだよ・・・どこか痛いのか?苦しいのか?」
「・・違うよ、嬉しいんだよ・・・」
「・・(笑)おまえさ、結構泣き虫なんだな」
「・・うるさいよ」
和也の優しさが、今は辛かった。
刻々と迫る死期が・・・
命の時間が迫っていたから・・・・。
「・・・・でも、もう遅いんだよなぁ~・・・・」
ぽつりと呟いてしまった独り言。
「・・・えっ?なにが?」
「・・いや、こっちのこと。それよりさ、美奈子さん、おめでたなんだろ?なんでそれを早く言わないんだよ」
「・・・あ・・あぁ。舞台終わったらにしようかと・・・」
「・・・よかったじゃん。このこのぉ~!結婚するのか?」
「・・・先のことはわからないよ。父親は、たぶん、涼太だから」
「・・・えっ?そうなの?」
「・・・でも・・・おれはそれでもいいと思った。だからそのうちプロポーズ改めてするつもりだ。」
「・・・そっか。安心した」
「・・・お前も頑張れよ?」
「・・・・あぁ・・・・」
おれはもう、直接弘子に伝えられないんだ。
どう頑張っても・・・・明日が最後なんだから。
《死》へのカウントダウンは、始まってしまっているのだから・・・・・・・。
俺は、1人部屋で、考えていた。
カレンダーで残された日は、たった1日だけ・・・・・。
俺の、誕生日・・・・・。
弘子と、そう言えば、約束したっけ?
「ねぇ?涼・・・・」
「・・・ん?」
「・・・舞台が終わったら、デートしようよ」
「・・・そうだな。ずっと行けなかったもんな」
「・・・涼、もうすぐ誕生日だもんね。なんでもおごってあげるよ?涼のほしいものあげるよ!」
俺は今でもお前の・・・・
あの日・・・・弘子に謝りに行こうとした日・・・
弘子のことばかり考えていた。
神様・・・・どうして・・・・
どうして俺は死ななければならないのですか?
どうして俺なんですか?
「・・・離れてても、ずっと忘れるなよ?」
「・・・涼さんは、希望の花です!」
あいつらに・・・《嘘》つきたくなかった。
こんな嘘つきの俺は、みんなの希望の花になんかなれません!!1日しか遺されていない今日という日がどんなに大切か・・・・・
今頃気がついたから・・・・・。
「・・・お前は逃げてるだけだよ!」
「・・・涼、お前がやめればいいだろ?」
今までの人生がどんなに苦しいものでも、悔しいものであっても・・・・
俺にはもう時間がないんだ。
「・・・・お前のせいで全部やり直しだ!」
俺がいた劇団の仲間とは・・・うまくやれなかった。
でも、ここへ来てからは、感謝されっぱなしだった。
「・・・全部弘子さんのお陰なんだよ!」
なんで素直になれなかったんだろう・・・。
「俺たち、離れてもずっと繋がっているよな?」
ふと和也の言葉を思い出した。
・・・・繋がっている?
そんなのうそだ。
繋がっていけるわけがないよ!
俺がいなくなったら
どうせ忘れられるんだ。
和也も、竹もサリーちゃんも・・・
美奈子さんも・・・・
そして、他の劇団の仲間も・・・・・
そして・・・・・
10年前思いを告げずに残してきた弘子でさえも・・・
俺のことを忘れるに違いないんだ。
《なぜ、そう思う》
神様の声が聞こえてきた。
《・・・お前は、後悔しているのか?》
「・・・・・」
《命を与えられ・・・・別の世界・・・いや、別の時代で出会った仲間と過ごした日々を・・・・後悔しているのか?》
「・・・・・してないといったら嘘になるよ。
だって、あいつらにあったお陰で俺の夢、叶えられるし・・・・」
あのまま死を選んでいたら・・・・・
《うむ・・・。そうだな。
彼女に手紙を送ることもなかったな》
「・・・あぁ、10年前にできなかったことを叶えさせてくれたのはあいつらだ。
俺が希望の花・・・・じゃなくて、俺にとっての希望の花があいつらだったんだ・・・・・
《お前はひとつ忘れている・・・。いや・・・もうすでに気づいているのだろう?゛和也゛という青年、役者を今もなぜ目指しているのか・・・》
「・・・いや・・・それは・・・・」
《その答えは、きっと明日わかる。はっきりとな》
「・・・えっ・・・」
《舞台が終わり、お前がもとの世界に戻ったときに、お前の愛しい女・・・“ヒロコ“との関係もわかる。》
(やっぱり、なにかあるんだ・・・あの二人・・・・)
《だから今は、しっかり現実を見るんだ。そして、感謝しなさい。今日まで過ごしてきた仲間たちに・・・・》
《涼さん!》
《おにぎりです!みんな、食べて!》
《・・・・お前のお陰だ。ありがとう》
感謝か・・・・・。
「涼、お疲れ様」
俺が弘子の笑顔に支えられたのと同じように
この14日間、今の仲間の笑顔や元気な声に支えられたんだ。
「・・・涼さん。それ、ウケる!」
「・・・この音はねこう作るの」
だから、忘れられたんだ。
みんなと過ごした2週間が楽しすぎて・・・・
このまま時が止まればいいとさえ思った。
和也と美奈子さんはいま、幸せに向かってるし・・・・
竹のことを劇団の仲間としか思っていなかったサリーちゃんの気持ちに変化がみえたし・・
そんな竹は、正直者で一途でまっすぐなやつで、本当は案外モテるやつで・・・・
その竹にラブレターを、送った真理ちゃんは、幼なじみの准とどうなるか注目だし。
みんな、みんな・・・劇団の大事な存在だ。
「・・みんな素人ばかりでさ・・・・」
和也が最初にそう言っていたな・・・。
・・・素人でもいい・・・・。
みんなの気持ちが伝われば、きっと心に届くから。
《いい顔になったな》
「・・神様、ありがとう」
俺、大切なことに気がついた。
また、手紙書くよ。
さよならは言いたくないから。
でも、これだけは伝えたいんだ。
忘れないでくれ・・・・
俺は、10年前の人間だ。
10年後、生きて戻ってきて2週間という日々を過ごしたということ、笑ったり、泣いたり怒ったり・・・・みんなと同じように生きていたってこと・・・・。
信じるか信じないかはみんなの心次第だけれど・・・・。
「・・・涼さんって時々変なこといいますよね」
「・・そうか?俺、へんなやつか?」
まさか竹に指摘されるなんてな。
俺は、一人一人にメッセージを残すようにその日の夜は、手紙を書き続けた。
「・・・明日もいい天気になるな」
時々、部屋から見える月を見ながら・・・・・。
「お兄ちゃん!見てみて!」
「ん?どうした?」
「・・・スノードロップがこんなにきれいに咲いてるよ?」
「・・・ほんとだ。きれいだな。サリーが手入れをしてくれてるからだな」
「・・・そうかな・・・。いよいよ明日は、本番だね」
春を呼ぶというスノードロップ・・・
「・・サリー、もう遅いからねろよ?寝不足の顔じゃ、竹もショックを受けるだろうから・・・」
「・・・ドキン・・・や、やだ・・・お兄ちゃんにバレてたの?」
「・・・やっぱりお前も女の子だな」
和也はサリーちゃんの頭を撫でた。
「・・お兄ちゃん!」
「ん?」
「・・・これ・・・・一日早いけどバレンタインデーのプレゼント・・・・竹と選んだ色なの・・・」
サリーちゃんは、手袋を編んだみたいだ。
「・・・ありがとな。やっぱりお前は器用だな。」
そしてまた頭にてをおき・・・
「・・・父さんが、お前を養子にしたのはきっと・・・
母さんに似て、編み物が得意な女の子だったからなんだろうな・・・・きっと」
「・・・・・・・」
そう言ってにこりと笑う和也だった。
かわいそう・・・じゃなくて私を一人の家族として迎え入れてくれたお兄ちゃんと、お父さん。
「・・おやすみ、サリー。」
「・・・おやすみ、お兄ちゃん」
「・・サリーちゃんを必要としてくれる人はたくさんいるんだから」
・・・そうだね、竹・・・・
わたし、この家族にいれてもらえて幸せだよ?
いつのまにか日付は変わってしまっていた。
「・・・最終日か・・・・」
カレンダーの13に×印をかいた。
「・・・・涼!しっかりしろ!」
自分の頬を叩いて気合いをいれる。
「・・涼太さん・・・ありがとうございます」
涼太さん、和也、美奈子さんが写る写真に向かっていうと・・・
そうつぶやいたら・・・
「・・・あなたの答え、でましたか?」
どこからか声がして・・・
「・・・えっ?涼太さん?」
《・・・結論・・・でましたか?》
「・・・・俺はもう、逃げません。」
その声に答えるようにつぶやいた。
《頑張ってください》
そう、聞こえた気がした。
みんなと過ごしたこの日々のために・・・・
与えられた命の時間に・・・・。
「ありがとうございます!涼太さん!」
俺は部屋に向かって一礼をすると・・・
最後の仕事へと向かった・・・・・。
「・・あっ、サリーちゃん」
「・・・竹・・・あのさ・・・明日舞台が終わったら・・・・」
サリーちゃんはなにかを言おうとしていたみたいだが・・・。
「・・・打ち上げですね?任せてください!俺が今度は腕を振るいます!」
「・・竹が料理を作るの?」
「・・・秘密ですよ?楽しみにしていてくださいね?」
「・・・って・・・そうじゃなくて・・・・」
「・・・えっ?」
「・・・竹の手料理大丈夫なのー?」
「・・大丈夫ですよ!レシピだってほら、もらってきたし・・・。ちょっと仕込みをしておこうかなって・・・」
「・・そう・・・。なら、楽しみにしてる。じゃあ」
と、行ってしまったサリーちゃん・・。
「・・・サリーちゃん?」
「・・・楽しみにしてるわ~💖だって・・・!あんたさぁ~なにか言いなさいよね」
「・・・ま、真理ちゃん・・・・」
「・・・鈍感なんだから!!」
「・・・えっ?鈍感?」
「・・・今、愛しのサリーちゃんが、誘っていたのも・・・急に優しくなった気がするのも・・・全然わからないの?」
「・・・えっ?待ってください・・・・俺、サリーちゃんに誘われていたんですか?」
「・・・(悔しいから)教えてあげない!」
「・・・えっ!教えない?鈍感?なんでですか!真理ちゃん!なんで怒ってるんですか・・・」
「・・・明日になればわかるんじゃない?きっと・・・・
サリーも気づいちゃったわけだし・・・・」
「・・・えっ・・・?何をいってるんですか?」
こいつも鈍感だけど、サリーもサリーよ!!!
「・・・じゃあ、明日頑張ろうね(ここは笑顔笑顔・・・・なんかバカみたい・・・・)」
ブンブン
手を繋ぎ手を振られる竹・・・
「・・・・?」
サリーちゃんは、なにか言おうとしてたし、なんかいつもと様子違うし・・・・
なんなんだろう。
竹はまさかサリーちゃんが自分のことを思ってくれてるなんて思ってもみなかったんだろう。
むしろ、諦めるつもりでいたみたいだ。
「・・・わたし、明日のテープの準備するね(泣き顔見られたくないし・・・・・)」
「・・・じゃあ、またあとで・・・・」
そんなやり取りのなか・・・・
「・・・・・はぁ・・・・」
1人佇むサリーちゃん。
「・・・サリーも、サリーだよね・・・・」
「・・・Σ(; ゚Д゚)ドキン」
突然背後から現れた真理ちゃんに驚くサリーちゃん。
「・・・真理・・・・・」
「・・・今頃気づくなんてズルいよ!ずっと気付かないで欲しかった・・・・😭」
「・・・・・・・」
「・・・そうすれば、竹は・・・・
竹の気持ちはいつか私の方に向くはずだった・・・・
なのにあんたが気づいてしまったから・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・私の方が先に竹のことを思っていたのに・・・・ズルいよ!!」
突然泣かれてしまい、なにも言えずにいたサリーちゃんだが・・・・
「・・・ごめんね、真理・・・ごめん・・・・」
「・・・あいつ・・・明日田舎帰っちゃうらしいよ?」
「・・・えっ・・・・」
「・・・田舎帰ったあと継ぐんじゃないかな・・・・」
「・・・・・・」
「・・・だから、最後に私たちに手料理を食べてほしいんじゃないかな」
えっ・・・それって・・・
「・・・う、嘘・・・そんなこと一言も言ってなかったわよ?私・・聞いてない何かの間違いよ」
「・・・サリーには言わないつもりなんだよ、きっと・・・・」
「・・・そんな・・・そんな!」
と、走り出してしまったサリーちゃん。
「・・・・嘘だけどね・・・・」
と呟く真理ちゃん。
えっ?
嘘?
「・・・いいよね・・・これくらいの嘘・・・・」
「・・・俺、田舎には報告に行くつもりです!」
「(田舎に帰るのは本当だもの)」
だけど、真理ちゃんの精一杯の嘘を、素直に受け止めてしまったらサリーちゃんは・・・・
「・・・竹のバカっ!」
それは、竹と離れたくないという竹へのサリーちゃんの思いが強くなっていたから・・・・・。
なぁ?弘子・・・・こんな他愛もないうそは、次の恋を作るんだよな・・・・。
「・・・真理ちゃんってさ、わかりやすい嘘つくんだな」
真理ちゃんに近づいたのは、彼女の幼なじみの准。
「・・・竹が田舎に帰って実家を継ぐ・・・なんてわかりやすいうそ・・・」
「・・・悔しかったの。お互い思ってるときに限って鈍感なサリーと竹の関係が・・・壊れてしまえばいいのにって・・・・・」
「・・・・真理ちゃん・・・・・」
「・・・私っていつまでも嫌な女だよね・・・」
「・・・・・・」
「・・・・おかしいでしょ?おかしければ笑っていいのよ?」
「・・・・・・」
「・・・笑いなさいよ!」
「・・・笑わないよ・・・・。俺は、真理ちゃんの幼なじみだぜ?いったい何年・・・何度・・・・そんな真理ちゃんをずっと見てきてると思ってるんだよ!」
「・・・・准・・・・」
「・・・・俺は、そんな真理ちゃんでも好きだ!ずっと好きだ!・・・・だから、好きなだけ泣けよ・・・・」
「・・・・・・」
「・・・こんな俺でよければ・・・そばにいてやるから・・・・・。真理ちゃんが流した涙は、俺が全部受け止めてやるよ!」
「・・・・・ありがとう、准・・・・」
なぁ?弘子。
お前は今、何を想ってる?
俺がいなくてもちゃんとやっていけるか?
俺には迷いがあった。
お前がなぜ泣いていたのか・・・・。
素直に気持ちを伝えれなかったのか・・・・。
お前のお陰で夢が叶いそうなんだ。
10年前の人間が、10年後の世界で夢を叶えるなんて誰も思わないだろう?
俺は、信じてる・・・・
10年後・・・お前の゛弟゛になったやつがいい役者であることを・・・・。
「・・・・えっ?何をいってるの?」
弘子は、手紙を読みながら和也の方を向き・・・
・・・ちなみに~俺が今いる劇団のリーダーは、゛和也゛って言うんだ。
「・・・えっ?和也?」
さらに驚く弘子。
「・・えっなに?俺がどうしたの?」
「・・・まさかね・・・・」
弘子は、そんな独り言を言いつつ・・・・
「・・・そうだ、和也。新作ができそうよ。
舞台名は・・・・《神様がくれた奇跡》。主役は、和也・・・・あなたよ?・・・涼がくれた手紙で思い付いたの・・・・。」
弘子は、涙をこらえていた。
和也はそんな弘子を抱きしめ・・・・
「・・・姉さん、泣いていいから。悲しみをもう、閉じ込めないで?」
そんなやり取りが、あったとは・・・・
「・・・涼?なんでお前が泣いてるんだよ・・・どうしたんだよ・・・どこか痛いのか?苦しいのか?」
「・・違うよ、嬉しいんだよ・・・」
「・・(笑)おまえさ、結構泣き虫なんだな」
「・・うるさいよ」
和也の優しさが、今は辛かった。
刻々と迫る死期が・・・
命の時間が迫っていたから・・・・。
「・・・・でも、もう遅いんだよなぁ~・・・・」
ぽつりと呟いてしまった独り言。
「・・・えっ?なにが?」
「・・いや、こっちのこと。それよりさ、美奈子さん、おめでたなんだろ?なんでそれを早く言わないんだよ」
「・・・あ・・あぁ。舞台終わったらにしようかと・・・」
「・・・よかったじゃん。このこのぉ~!結婚するのか?」
「・・・先のことはわからないよ。父親は、たぶん、涼太だから」
「・・・えっ?そうなの?」
「・・・でも・・・おれはそれでもいいと思った。だからそのうちプロポーズ改めてするつもりだ。」
「・・・そっか。安心した」
「・・・お前も頑張れよ?」
「・・・・あぁ・・・・」
おれはもう、直接弘子に伝えられないんだ。
どう頑張っても・・・・明日が最後なんだから。
《死》へのカウントダウンは、始まってしまっているのだから・・・・・・・。
俺は、1人部屋で、考えていた。
カレンダーで残された日は、たった1日だけ・・・・・。
俺の、誕生日・・・・・。
弘子と、そう言えば、約束したっけ?
「ねぇ?涼・・・・」
「・・・ん?」
「・・・舞台が終わったら、デートしようよ」
「・・・そうだな。ずっと行けなかったもんな」
「・・・涼、もうすぐ誕生日だもんね。なんでもおごってあげるよ?涼のほしいものあげるよ!」
俺は今でもお前の・・・・
あの日・・・・弘子に謝りに行こうとした日・・・
弘子のことばかり考えていた。
神様・・・・どうして・・・・
どうして俺は死ななければならないのですか?
どうして俺なんですか?
「・・・離れてても、ずっと忘れるなよ?」
「・・・涼さんは、希望の花です!」
あいつらに・・・《嘘》つきたくなかった。
こんな嘘つきの俺は、みんなの希望の花になんかなれません!!1日しか遺されていない今日という日がどんなに大切か・・・・・
今頃気がついたから・・・・・。
「・・・お前は逃げてるだけだよ!」
「・・・涼、お前がやめればいいだろ?」
今までの人生がどんなに苦しいものでも、悔しいものであっても・・・・
俺にはもう時間がないんだ。
「・・・・お前のせいで全部やり直しだ!」
俺がいた劇団の仲間とは・・・うまくやれなかった。
でも、ここへ来てからは、感謝されっぱなしだった。
「・・・全部弘子さんのお陰なんだよ!」
なんで素直になれなかったんだろう・・・。
「俺たち、離れてもずっと繋がっているよな?」
ふと和也の言葉を思い出した。
・・・・繋がっている?
そんなのうそだ。
繋がっていけるわけがないよ!
俺がいなくなったら
どうせ忘れられるんだ。
和也も、竹もサリーちゃんも・・・
美奈子さんも・・・・
そして、他の劇団の仲間も・・・・・
そして・・・・・
10年前思いを告げずに残してきた弘子でさえも・・・
俺のことを忘れるに違いないんだ。
《なぜ、そう思う》
神様の声が聞こえてきた。
《・・・お前は、後悔しているのか?》
「・・・・・」
《命を与えられ・・・・別の世界・・・いや、別の時代で出会った仲間と過ごした日々を・・・・後悔しているのか?》
「・・・・・してないといったら嘘になるよ。
だって、あいつらにあったお陰で俺の夢、叶えられるし・・・・」
あのまま死を選んでいたら・・・・・
《うむ・・・。そうだな。
彼女に手紙を送ることもなかったな》
「・・・あぁ、10年前にできなかったことを叶えさせてくれたのはあいつらだ。
俺が希望の花・・・・じゃなくて、俺にとっての希望の花があいつらだったんだ・・・・・
《お前はひとつ忘れている・・・。いや・・・もうすでに気づいているのだろう?゛和也゛という青年、役者を今もなぜ目指しているのか・・・》
「・・・いや・・・それは・・・・」
《その答えは、きっと明日わかる。はっきりとな》
「・・・えっ・・・」
《舞台が終わり、お前がもとの世界に戻ったときに、お前の愛しい女・・・“ヒロコ“との関係もわかる。》
(やっぱり、なにかあるんだ・・・あの二人・・・・)
《だから今は、しっかり現実を見るんだ。そして、感謝しなさい。今日まで過ごしてきた仲間たちに・・・・》
《涼さん!》
《おにぎりです!みんな、食べて!》
《・・・・お前のお陰だ。ありがとう》
感謝か・・・・・。
「涼、お疲れ様」
俺が弘子の笑顔に支えられたのと同じように
この14日間、今の仲間の笑顔や元気な声に支えられたんだ。
「・・・涼さん。それ、ウケる!」
「・・・この音はねこう作るの」
だから、忘れられたんだ。
みんなと過ごした2週間が楽しすぎて・・・・
このまま時が止まればいいとさえ思った。
和也と美奈子さんはいま、幸せに向かってるし・・・・
竹のことを劇団の仲間としか思っていなかったサリーちゃんの気持ちに変化がみえたし・・
そんな竹は、正直者で一途でまっすぐなやつで、本当は案外モテるやつで・・・・
その竹にラブレターを、送った真理ちゃんは、幼なじみの准とどうなるか注目だし。
みんな、みんな・・・劇団の大事な存在だ。
「・・みんな素人ばかりでさ・・・・」
和也が最初にそう言っていたな・・・。
・・・素人でもいい・・・・。
みんなの気持ちが伝われば、きっと心に届くから。
《いい顔になったな》
「・・神様、ありがとう」
俺、大切なことに気がついた。
また、手紙書くよ。
さよならは言いたくないから。
でも、これだけは伝えたいんだ。
忘れないでくれ・・・・
俺は、10年前の人間だ。
10年後、生きて戻ってきて2週間という日々を過ごしたということ、笑ったり、泣いたり怒ったり・・・・みんなと同じように生きていたってこと・・・・。
信じるか信じないかはみんなの心次第だけれど・・・・。
「・・・涼さんって時々変なこといいますよね」
「・・そうか?俺、へんなやつか?」
まさか竹に指摘されるなんてな。
俺は、一人一人にメッセージを残すようにその日の夜は、手紙を書き続けた。
「・・・明日もいい天気になるな」
時々、部屋から見える月を見ながら・・・・・。
「お兄ちゃん!見てみて!」
「ん?どうした?」
「・・・スノードロップがこんなにきれいに咲いてるよ?」
「・・・ほんとだ。きれいだな。サリーが手入れをしてくれてるからだな」
「・・・そうかな・・・。いよいよ明日は、本番だね」
春を呼ぶというスノードロップ・・・
「・・サリー、もう遅いからねろよ?寝不足の顔じゃ、竹もショックを受けるだろうから・・・」
「・・・ドキン・・・や、やだ・・・お兄ちゃんにバレてたの?」
「・・・やっぱりお前も女の子だな」
和也はサリーちゃんの頭を撫でた。
「・・お兄ちゃん!」
「ん?」
「・・・これ・・・・一日早いけどバレンタインデーのプレゼント・・・・竹と選んだ色なの・・・」
サリーちゃんは、手袋を編んだみたいだ。
「・・・ありがとな。やっぱりお前は器用だな。」
そしてまた頭にてをおき・・・
「・・・父さんが、お前を養子にしたのはきっと・・・
母さんに似て、編み物が得意な女の子だったからなんだろうな・・・・きっと」
「・・・・・・・」
そう言ってにこりと笑う和也だった。
かわいそう・・・じゃなくて私を一人の家族として迎え入れてくれたお兄ちゃんと、お父さん。
「・・おやすみ、サリー。」
「・・・おやすみ、お兄ちゃん」
「・・サリーちゃんを必要としてくれる人はたくさんいるんだから」
・・・そうだね、竹・・・・
わたし、この家族にいれてもらえて幸せだよ?
いつのまにか日付は変わってしまっていた。
「・・・最終日か・・・・」
カレンダーの13に×印をかいた。
「・・・・涼!しっかりしろ!」
自分の頬を叩いて気合いをいれる。
「・・涼太さん・・・ありがとうございます」
涼太さん、和也、美奈子さんが写る写真に向かっていうと・・・
そうつぶやいたら・・・
「・・・あなたの答え、でましたか?」
どこからか声がして・・・
「・・・えっ?涼太さん?」
《・・・結論・・・でましたか?》
「・・・・俺はもう、逃げません。」
その声に答えるようにつぶやいた。
《頑張ってください》
そう、聞こえた気がした。
みんなと過ごしたこの日々のために・・・・
与えられた命の時間に・・・・。
「ありがとうございます!涼太さん!」
俺は部屋に向かって一礼をすると・・・
最後の仕事へと向かった・・・・・。
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少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
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