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友達をつくります

エミリア視点-初めてのお茶会

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今日は、お茶会。第一王妃のアネモネ様が主催する、上級貴族のお茶会。私はそれに、初めて参加する。

沢山の人に見られるのは苦手。例えそれが、身内であっても……

体が、震える。
もしも沢山の知らない人の前で、倒れてしまったら。みっともなく、咳き込んでしまったら。王女として、どう見られるのだろう。失格だと、思われてしまうだろうか。

準備に連れていかれそうになって、私は恐怖に負けて逃げた。
お兄様、助けて。怖くないよって言って。そうしたら私、頑張れる気がするから。
……だから私はまた、お兄様を頼って甘えてしまう。

「お兄様ぁっ!エミリア、怖い……行きたくないぃ」
泣きながら抱きつく私を撫でながら、お兄様は私の欲しい言葉をくれる。
「エミリアなら大丈夫だ。怖くない、行けるよ」
しばらくそうしていると、私は少し安心して、
「ありがとうお兄様。頑張ってくるわ」
と言って、お茶会の準備に向かった。



着替えをして、髪を整えて、お披露目に相応しい姿になった。見た目と裏腹に、私の心臓はばくばくと音を立てる。
大丈夫、行かなくちゃ。社交の練習、いっぱいしたもの。

お母様と一緒に庭園を進む。沢山の人たちが見えて、私の心臓はまたどくんと音を立てる。すくみそうになる足を必死にお母様に合わせて、笑顔をつくる。
大丈夫、と言い聞かせていたはずの頭は、いつのまにかまた、不安でいっぱいになっていた。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

何が怖いのか分からなくなるほど、私は恐怖でいっぱいだった。

挨拶も、何を話したか覚えていない。練習した言葉を、練習した通りに口から吐き出し、練習通りの礼をとって、あ、できた。と思った瞬間、気が緩んで、ふらっと後ろに倒れかけた。

……沢山の人の前で、私の醜態を晒してしまう。

それは嫌だ。

負けたくない。

……でももし、倒れてしまったら。

このままじゃ、いけない。

ここにいてはいけない。

そう思ったけど、
お母様には……言えなかった。

沢山の人たちと楽しそうに話すお母様。

迷惑をかけたくない。

じゃあ、どうしよう。

どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

私はどうなるの?

お母様に寄ってくる人たちに挨拶をしながら、そればかりが頭に浮かぶ。
もう何を考えているのか、何を考えたらいいのか、さっぱり分からなくなって。
今にも倒れそうな体を、何とか気力だけで保っていた。



その時。私に挨拶した女の子の顔が、ふいに近づいて。
「無理だと思ったら座ってくださいませ。その方が外傷が少なくて済みますし、支えてあげられますわ」

気づかれた。……気づいて、くれた……

座って……?座れば、いいの?座れば、救われる?この地獄から、抜け出せる?

女の子は手を差し出して言った。
「手、繋いでくださいませんか?どこか座って話せるところへ行きたいですわ」

彼女は、お茶会を抜け出す口実まで作ってくれた。

私は醜くも、差し伸べてくれた手に縋る。



ここまで来れば、皆からはもう見えない。
そう思った瞬間、力が抜けて地面に膝をついた。
「エミリア様!」
抱えてくれた護衛の騎士に体を預ける。

忘れていた呼吸の音が、どんどん激しくなっていくのを感じる。

……息が、苦しい。

呼吸が、できない。

息が……吸えない。

なに、これ。

しんどい。苦しい。どうして。どうして?

その時間が、長くて。永遠にも感じた。



ふいに、私の背中を誰かの手が擦る。
「大丈夫、大丈夫ですわ。エミリア様は第一王女として立派に振る舞っておられましたわ。だから今はもう、大丈夫ですから」
私、ちゃんとできてた……?もう、大丈夫なの……?

「呼吸がしんどかったら、息を吐くことを意識してみてくださいませ。ゆっくり、ゆっくり、息を吐いて」
息を吐く?そうすれば楽になれる?
ゆっくり、ゆっくり。
と繰り返す彼女の声が、救いの女神様のようだと思った。
「できなかったら、息を止めて、一瞬だけ、苦しいのを我慢して、息を吐いてください」
息を……止める。そして、体に入っていた空気を絞り出すようにして吐いた。
もう無理、限界。と思うと同時に、自然に息が吸えた。……呼吸が、できる。

「ありが、とう。……楽に、なったわ」
まだ力がうまく入らなくて、途切れ途切れに話す。
ずっと隣にいてくれた彼女のことを、今さらながら認識する。
あぁ、彼女がアメリアなのね。私を助けてくれた、救いの女神様。
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