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「後で教えてね」

「何を…」

「アデライト・M=リリーシア様と、ホロ・ツェーリア様のご入場です!」

聞き返す前に侍従の声にかき消されてしまった。
アデライトに強めに引っ張られ、体が密着する体勢になった。

離れる隙も与えられる事なく、私たちはパーティ会場に揃って入場した。
褒賞を貰う場の筈なのに、拍手が何故かまばらにしか聞こえない。

多分どこかに耳を張り付けていた奴らから、私がどうやってあの女から情報を取ったのか聞いたのだろう。
口の軽い連中が多いな。

シャリンと軽く揺れたピアスの音が大きく響く。
そんな軽い音が大きく聞こえるぐらいなのだから、この拍手は相当小さい物なんだろう。

「失礼なやつが沢山いるようだな」

「アデライト、口の動きで何を言っているかバレる」

「それぐらい問題ないさ。私は王族の親類で、公爵家の三男なのだから何も言う事ができないさ」

アデライトの言葉に顔を背けるものが多い。
確かに子息ではあるが、王族の親類であるリリーシア公爵家を敵に回したくない者が大半だ。

だからアデライトはこうして堂々としていられる。

「どうやら歓迎してない者が多いようだな」

私たちがパーティ会場の真ん中あたりに到着したぐらいで、国王の不機嫌な声が会場中に響いた。
まさか国王が不満の声を上げるとは思わず、貴族達は拍手する手まで止まった。

「どこで聞いたのか知らぬが、ツェーリア伯爵令息は本来大人が行わなければならなかった事を行ってくれた。何故それを労る事ができぬのだ」

意外と国王は子供である私が拷問を行った事を良い思いで受け止めた訳ではないようだ。
他の貴族達は気まずそうに顔を逸らしているか、俯いて国王を見ないようにしている。

「情けないな。今宵は令息の褒賞の場であるからしかと祝うが良い」

国王は最後に言い切り、玉座に深く座り直した。
それ以上は国王は何も話す気はないようで、代わりに国王の後ろに控えていた宰相が前に出てきた。

「先に褒賞をお渡し致します。ホロ・ツェーリア伯爵令息前に」

王座の前の階段の所まできた。
上がる事はできないから階段前で片膝を立てた状態で傅いた。

頭もしっかりと下げ、宰相から褒賞を受けるのを待つ。

「ツェーリア伯爵令息に褒賞を言い渡す。特殊な状況下で情報を収集を行い、そして対抗策の魔道具を生み出した事に対する褒賞としてハーレライト子爵領を下賜しよう」

「褒賞しかと承りました」

顔を上げ、目の前にいる宰相から王印が押された書状を頂く。
ハーレライト領地を下賜するという事は、同時にハーレライト子爵の領地がなくなったことになる。

「お待ちください陛下!何故子が起こした問題で、私めの領地をこの子供に奪われねばならぬのでしょうか!?」

野太い声で国王に意義を唱えるのが、領地を奪われた張本人であるハーレライト子爵だ。
子が起こした問題で領地が没収されるのは普通ではあり得ない事だ。

だが、今回起こした騒動が禁忌を破ってしまったのが原因だ。
その原因であるあの女は全く反省しておらず、私の拷問を受けても謝罪の一言もなかった。

「其方の子が起こした罪がどれだけ重い物なのか理解しておらぬということか?」

「あの子はきっと誰かに唆されてしまったのかもしれません!まだ判断の付かない子供なのですからどうか温情を!」

16にもなって判断の付かない子供は言い訳にもならない。
本当に判断の付かない子供であれば、家から出さないようにするべきだ。
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